建設業と一般企業の帳票の違いや保存する期間・管理方法などを解説

建設業 帳票

建設業と一般企業では、帳票の種類や売上計上、使用する勘定科目など、様々な違いがあります。建設業で帳票を記録する担当者にとって、最初は混乱する内容です。

本記事では、建設業と一般企業における帳票の違いをわかりやすく解説します。保存期間や管理方法まで網羅して紹介するので、本記事だけで建設業の帳票の基本が理解できます。正確な会計処理と健全な経営ができるので、ぜひ読んでみてください。

帳票とは

帳票とは、会社における取引や会計に関する記録書類のことです。請求書・納品書・領収書などの伝票と、総勘定元帳・補助簿などの帳簿に分類されます。帳票は、会社の財政状況を把握して、経営判断を行うための重要な書類です。

建設業と一般企業では、帳票の種類が異なるので、それぞれの違いを理解することが大切です。帳票の役割や種類を解説します。

帳票の役割

帳票の役割は、一般企業と建設業で大きな違いはありません。具体的な役割は以下の通りです。

  • 取引が行われたことを証明する証拠書類
  • 取引内容の分析による財政状況の把握
  • 利益率の分析による経営判断の材料
  • 所得税法や法人税法、建設業法の法令順守

建設業の場合、請負契約や見積書、請求書などの様々な帳票を正確に作成することで、取引が行われた証明ができます。税務調査においても必要なので法令順守にも役立ちます。

帳票の種類

帳票の種類は、大きく分けて「帳簿」「伝票」「証憑」の3つに分類されます。建設業特有の帳票としては、工事請負契約書や工程表などがあり、これらは証憑です。3つの特徴を解説します。

帳簿

帳簿は、取引内容を記録して会社の財政状況を把握するために必要な書類です。具体的な帳簿の種類は以下の通りです。

  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳
  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 買掛帳
  • 売掛帳
  • 経費帳
  • 固定資産台帳

資産と負債、収入と支出が理解できるので、企業の健全性や将来性を判断できます。

伝票

伝票は、企業活動における金銭や物品の出納・取引の事実を記録します。具体的には以下の書類です。

  • 入出金伝票
  • 振替伝票
  • 売上伝票
  • 仕入伝票
  • 経費精算伝票

会計処理の効率化や、証拠書類としての役割があるので伝票は重要な書類です。建設業では、取引金額が大きかったり、複数の取引先が存在したりするので、より伝票の重要性が高くなります。

証憑

証憑は、取引が行われる際、その都度作成される書類です。帳簿や伝票は取引後に記録されますが、証憑は取引ごとに毎回作成され、その後差し替えたり取り消しになったりすることもあります。具体的な証憑は以下の通りです。

  • 見積書
  • 請求書
  • 納品書
  • 領収書
  • 支払明細書
  • 工事請負契約書
  • 工程表

建設業では、契約金額の決定において見積書の再提出が多いです。その都度、見積番号を変えて発行しないといけません。請求書は、出来高払いであれば毎月発行することもあります。建設業特有の違いが大きいのは証憑の特徴です。

建設業と一般企業の帳票の違い

建設業と一般企業の帳票は、取引内容を記録して会社の財政状況を把握するという目的は同じですが、売上計上の期間や特殊な勘定科目などの違いがあります。建設業で用いられる帳票の特徴と一般企業との違いを解説します。

用いる帳票

建設業では、工事に関する工程表や完了報告書など、特殊な帳票を使用します。これらの帳票は、工事の進捗状況や原価を管理するために必要です。建設業で用いる帳票を詳しく解説します。

工事台帳

工事台帳は、建設業者が請け負う工事現場ごとの収支状況を把握する書類です。以下の情報を台帳に記録します。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

これらの原価を集計し、売上を比較して利益率を算出します。赤字工事や低利益工事の分析を行って経営改善に役立てることができます。

工程表

工程表は、工事のスケジュールを詳細に計画・管理するための書類です。各工程の開始日と終了日を定めて、必要な人員や資材を手配できます。工事台帳の金額入力や、無駄を減らすコスト削減にも貢献します。

見積書

見積書は、建設業者が発注者に対して工事の請負代金を提示する書類です。工事内容と費用を事前に確認でき、契約締結の根拠となります。一般企業と異なるのは、法定福利費や工事内容の項目の記入が必要な点です。

工事完了報告書

工事完了報告書は、建設業者が発注者に対して工事の完了を報告する書類です。工事内容や完成写真などを記載して、正しく工事が完了したことを伝えます。

建設業は売上計上が遅い

建設業は、一般の企業と比べて売上計上が遅いのが特徴です。工事完了まで数カ月から数年かかる場合が多いためです。材料費や人件費がかかっているのに売上計上が遅れるので、勘定科目では「未成工事支出金」として扱います。

契約によっては出来高払いもあり、毎月分割で売上計上できる場合もあるので、契約内容を確認しておきましょう。

建築業独自の勘定科目

建設業独自の勘定科目は多いので、会計処理の際は注意してください。具体的には以下の勘定科目です。

  • 未成工事支出金:未完成の工事でかかった工事費用
  • 完成工事高:工事完了時の計上する売上高
  • 完成工事原価:工事完了までに発生した原価
  • 完成工事総利益:完成工事高から完成工事原価を差し引いた粗利益
  • 未完成工事受入金:未完成の工事で進捗状況に応じて受取る前受け金
  • 工事未払金:工事完了後にまだ支払われていない代金

工事が長期化することが多いので、特殊な勘定科目もたくさんあります。工事が完成しているのか、途中なのか、という部分が判断基準です。

建設業で帳票を保存する期間

建設業において、帳簿や図面などの帳票を適切に保管することは、法令で義務付けられています。経営にとっても重要なので、会社としても長期保存が必要です。その保存期間は、法人税法と会社法上で異なるのでそれぞれ解説します。

法人税法で定められている期間

法人税法において、法人課税に関する様々な期間が定められています。建設業の帳票を保管する期間は、以下の通りです。

  • 個人:5年間
  • 法人:7年間
  • 欠損金が発生した事業年とについては9年間または10年間

法人税法では、事業年度や課税期間の関わりもあるので、決算処理に合わせて適切に期間を把握しましょう。

会社法上で定められている期間

会社法上では、一律10年間と定められています。会計帳簿や事業に関する重要な資料は、10年間保管しないといけません。見積書や納品書などの、会計帳簿だけでは把握できない重要な記録書類も同じです。

建設業で帳票を管理する方法

建設業において、帳票を適切に管理することは、法令順守や経営効率化の観点から重要です。紛失や漏洩のリスクもあるので、適切に保管しないといけません。結論としては、電子管理が必須となります。帳票を管理する方法を詳しく解説します。

電子での管理が必須

2022年に施行された「電子帳簿保存法」により、建設業における帳票管理は電子管理が必須となっています。従来、紙ベースの帳票を保存する企業が多かったのですが、災害対策やセキュリティ、コスト削減などの観点から、電子管理が法で定められました。

電子で管理する方法

帳票を電子管理する方法は以下の3つです。

  • 会計システムなどで帳簿を電子保存
  • スキャナで読み取って電子保存
  • 電子取引したデータを電子保存

2024年からは電子取引を行った場合は必ずデータとして保管しないといけません。

建設業でのおすすめの会計システム紹介の記事はこちら

建設業におすすめの会計ソフトとは?会計ソフトの選び方やメリットなどをご紹介!建設業におすすめの会計ソフト5選!会計ソフトの選び方やメリットなども紹介!

建設業の帳票を電子で管理するメリット

建設業における電子帳票管理は様々なメリットがあります。業務効率化やコスト削減、安全性の向上などです。紙の保管ではできなかった2つのメリットを解説します。

簡単に検索・閲覧できる

帳票を電子管理すると、必要な帳票をすぐに検索・閲覧できます。山積みの紙の帳票から探す必要はありません。紙を持ち運ぶことなく、パソコンで閲覧できるので探す時間や無駄を省きます。

コスト削減につながる

帳票を電子管理すると、紙代や印刷代、郵送代も削減できるので、コスト削減につながります。紙の帳票を保管する場所が必要ないので、保管スペースの削減も可能となり、レンタルスペースを借りていた場合はさらに節約できます。

建設業の帳票を電子で管理できるツールの選び方

建設業の電子帳票管理ツールは様々な種類が販売されています。どのツールが最適なのか理解するために、選ぶ基準を紹介します。以下のポイントをチェックしましょう。

  • 法令対応:電子帳簿保存法の法廷に対応したフォーマットが利用されているか
  • 機能:建設業向けに、帳票作成機能や検索機能、承認・共有機能などがあるか
  • サポート:導入後に継続的なサポートがあるか
  • 価格:企業のニーズに適した価格か
  • セキュリティ:データ暗号化やアクセス制御などがあるか
  • 連携:他の会計ソフトや業務システムと連携できるか

建設業に特化した電子帳票管理ツールを選ぶために、ポイントを押さえて商品を検討しましょう。

建設業の帳票を電子で管理するツールを導入するときの注意点

建設業の帳票を電子管理するツールを導入するとき、いくつか注意点があります。導入後にトラブルが起きないように、以下の注意項目を理解しておきましょう。

  • ランニングコスト:利用量やサポート量が発生する
  • 従業員教育:ツールの使い方研修が必要
  • 運用ルール:権限や承認フローなどのルール設定が必要

紙の保管によるコストは減りますが、電子管理ツールのランニングコストは発生します。従業員への教育やルール設定も必要なので、導入直後は混乱するかもしれません。しかし、導入後は利便性が増すためメリットが上回ります。

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【まとめ】建設業の帳票は取引を証明する重要な書類!法改正に合わせ環境整備するなどしっかり管理しよう

建設業において、帳票は取引を証明でき、法制遵守や経営判断ができる重要な書類です。2022年には電子帳簿保存法改正により、電子での管理が必須となっています。紙ベースの保存ではなく、完全に電子で取引するので担当者の負担軽減や、企業全体での情報共有の高速化にもつながりました。

現場担当者と内部担当者が簡単に帳票を管理できるようになり、企業の健全な成長にも貢献できるので、電子ツールを使って正しく帳票を管理しましょう。

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