諸経費の相場は?見積書への記載方法や施主に説明する際の注意点を解説

工事見積書を作成する際、「諸経費」の計上は欠かせません。しかし、計上方法が施工業者によって異なることから、相場が分かりにくい場合があります。
そのため、施主から「なぜこんなに高いのか?」「具体的に何に使われるのか?」といった疑問を持たれた際に、不十分な説明では不信感につながります。施工業者側としても、諸経費の重要性を理解してもらえなければ、適切な管理費を確保できず、工事の品質や安全性に影響を及ぼす恐れがあります。
そこで、今回は諸経費の相場や見積書への記載方法、施主への説明時のポイントについて詳しく解説します。

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諸経費とは

そもそも諸経費とは何でしょうか?諸経費の基本的な内容と具体的な費用項目について説明します。

諸経費の概要

諸経費とは、材料費や人件費、水道光熱費や機械費などの直接工事費とは別に、見積書に計上される費用のことです。
諸経費を適切に計上しなければ、工事の品質や安全性の低下、現場の混乱、会社の経営悪化など、様々な問題が発生する可能性があります。そのため、工事に直結しない間接的な費用とはいえ、工事には欠かせない重要な費用の1つです。

諸経費の内訳

諸経費は、一般的に現場管理費と一般管理費に分類されます。
それぞれについて詳しく説明します。

現場管理費

現場管理費とは工事現場に関連する費用を言います。工事全体の収益性に関わってくる費用として、工事原価の一部として計上されます。
■現場管理費

項目名 内容
労務管理費 作業服代、食事代、通勤費、研修訓練費など
租税公課 固定資産税、自動車税、印紙代など
保険料 工事保険、火災保険、自動車保険など
従業員給料手当 現場従業員の給与や諸手当
施工図等作成費 施工図の作成に係る費用
退職金 現場従業員の退職金
法定福利費 健康保険や雇用保険、労災保険など
福利厚生費 従業員の慰安、健康診断、慶弔見舞などに係る費用
事務用品費 現場で使用する事務用品など
通信交通費 携帯電話料金や車両のガソリン代など
補償費 騒音、振動、工事用車両の通行など現場周辺への補償費用
その他 工事に伴うその他の費用

出典:国土交通省「公共建築工事共通費積算基準

一般管理費

一般管理費とは、建設業界において工事現場に直接関与しないものの、企業の運営や経営を維持するために必要な費用を言います。
工事原価には含まれませんが、企業全体の運営を支えるために必要な費用で、企業の収益を大きく左右します。
■一般管理費

項目名 内容
人件費 役員報酬、従業員給料手当、退職金
法定福利費 労災・雇用・健康保険料、厚生年金保険料など
福利厚生費 慰安・娯楽、貸与被服、医療、慶弔見舞など
維持修繕費 建物・機械・装置の修繕維持費、倉庫管理費など
事務用品費 事務用消耗品、備品、新聞・図書の購入費など
通信交通費 通信費、旅費、交通費など
水道光熱費 電力、水道、ガスなど
調査研究費 技術研究・開発費
広告宣伝費 広告・公告・宣伝費用
交際費 得意先接待、来客対応、慶弔見舞など
寄付金 社会福祉団体等への寄付
地代家賃 事務所・寮・社宅の借地借家料
減価償却費 建物・車両・機械・事務用備品の減価償却額
試験研究償却費 新製品・新技術研究費の償却額
開発償却費 新技術・新経営組織・市場開拓費の償却額
租税公課 不動産取得税、固定資産税、道路占有料など
保険料 火災保険、損害保険料
契約保証費 契約の保証に必要な費用
雑費 社内打合せ費用、諸団体会費などその他の費用

出典:国土交通省「公共建築工事共通費積算基準

諸費用との違い

見積書の費用項目には、「諸経費」とは別に「諸費用」があります。これらの区別が分かりにくいという方もいるでしょう。
「諸費用」とは、工事に関連するものの工事現場や企業の運営とは直接関係のない費用です。不動産取引や住宅購入にかかる物件取得費用以外の、不動産取得税や登録免許税などの各種登記費用、火災保険料や住宅ローン関連費用などが含まれます。

諸経費の相場

諸経費の相場は一律ではないため、見積書に記載された諸経費の金額が適正なのか判断が難しく、施主と施工業者の間でトラブルが生じることがあります。
ここからは、一般的な相場の割合と相場に幅がある要因について説明します。

一般的な相場は5~10%

諸経費の相場は、一般的に工事全体の費用に対して5%~10%程度とされています。
工事費2,500万円の場合の諸経費は、以下のとおりです。
例:
・5%の場合:2,500万円 × 5% = 125万円
・10%の場合:2,500万円 × 10% = 250万円
ただし、これはあくまで目安です。諸経費の具体的な内訳はプロジェクトごとに変動します。

諸経費の割合が異なる原因

諸経費の割合に幅がある主な4つの原因を詳しく説明します。

企業の規模

企業の規模が大きくなると本社のスタッフや管理部門の数が増え、それに伴い一般管理費も増加します。そのため、諸経費の割合が高くなる傾向があります。特に大規模な工事を請け負う場合、現場監督や施工管理技士、作業員の確保が必要となり、人件費がかさみます。
また、大企業では複数の工事を同時に進めることが多く、全体の運営を支えるためのコストも発生します。
一方、小規模な企業はスタッフ数が少なく組織運営にかかる費用が抑えられるため、諸経費の割合が比較的低くなる傾向にあります。

工事現場の範囲

工事現場の規模や種類、工期によって必要な資材や労働力が異なるため、諸経費の割合も変動します。
大規模な工事では多くの現場監督や施工管理技士、作業員が必要となり、人件費や交通費が増加します。一方、小規模な工事では、必要な作業員や資材が少なく管理費を抑えやすいことから、諸経費の割合は低くなります。また、工期が短い工事も人件費や材料費の負担が軽減され、諸経費が安くなることがあります。
工事の種類によっても諸経費は変動します。例えば、高層ビル建設では特殊な機械や高度な技術が必要となるため、機械レンタル費や専門技術者の人件費が増加します。住宅リフォームのように小規模な工事では、必要なスタッフが少なく諸経費が抑えられるものの、特定の材料や技術が必要になる場合は増加することもあります。
公共工事では法令に基づいて諸経費が定められることが多く、工事の規模や種類に関わらず一定の諸経費率が適用されるケースもあります。

見積書への書き方

見積形式には諸経費の内訳に一定の基準が設けられている一方で、企業ごとに計上方法が異なります。
例えば、材料費、労務費、機械レンタル費といった現場作業費は、本来工事原価として計上されるべき費用ですが、企業によってはこれらを本体工事費に含める、あるいは諸経費の一部とするなど、取り扱いが異なります。さらに、水道光熱費などの直接経費も、同様に計上方法が分かれることがあります。
このように、見積形式の相違は工事全体の金額に影響を与えるわけではありませんが、本体工事費と諸経費の割合を変動させる要因になり得ます。

地域の特色

都市部では土地代や人件費が高いため、工事に関わるコストも比例して高くなります。車両の駐車場代や事務所の家賃が割高になるほか、作業員や資材の移動にかかる交通費や通行料も増加します。さらに、騒音や振動に関する規制が厳しく、防音対策や特別な工法などの対応費用が上乗せされることがあります。
地方では土地や物価が比較的安いため、都市部に比べて諸経費を抑えられる傾向にありますが、地域によっては資材の調達に時間やコストがかかることもあります。例えば、山間部では工事車両の搬入が困難な場合があり、特殊な運搬手段や設備が必要になることがあります。
また、積雪地帯では冬季の暖房費や除雪費用が追加で発生するなど、地域特有の環境によって諸経費に影響します。

諸経費はバランスが大切

諸経費は、計上が不適切だと工事全体の予算や工期、施工の品質や安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。
諸経費が低すぎると、人員や資材の削減により工事が遅延したり追加の修繕費が発生したりするリスクが高まります。一方で、諸経費が高すぎると施主の負担が増え、予算オーバーや信頼低下につながる可能性があります。
そのため、諸経費は工事の規模や内容に応じた適正な範囲で設定し、無駄を省きながらも必要な費用を確実に確保することが必要です。

諸経費を工事見積書に記載する方法

諸経費を工事見積書に記載する際には、内訳を細かく記載する方法と、まとめて記載する方法があります。
これらの方法について説明します。

諸経費の内訳を細かく記載する場合

諸経費の内訳を記載する場合、具体的な項目は企業やプロジェクトによって異なります。
参考として、以下に一例を紹介します。

項目名 摘要 金額
諸経費 労務管理費 〇〇円
保険料 〇〇円
事務用品費 〇〇円
通信交通費 〇〇円
補償費 〇〇円
光熱費 〇〇円
その他 〇〇円
小計 諸経費合計 〇〇円

このように詳細に記載する方法は見積書の作成時間と手間がかかりますが、施主がイメージしやすく、施主から質問があった場合も、諸経費の根拠を的確に説明できるメリットがあります。

諸経費をまとめて記載する場合

諸経費をまとめて記載する場合、以下のように総額のみを記載する方法が取られます。

項目名 金額
××費 〇〇万円
××費 〇〇万円
××費 〇〇万円
諸経費 〇〇万円(一式)
総計 〇〇万円

このように、諸経費を「一式」として記載することで見積書が簡潔になり、見積書の作成を迅速に行えるメリットがあります。しかし、施主が費用の内容を疑問に思う可能性があるので、施主からの質問に備えて具体的な説明の準備が必要です。

諸経費を施主に理解してもらう際の注意点

施主に諸経費の必要性を理解してもらうには、納得感を得られる伝え方が重要です。
ここでは、スムーズに合意を得るために心掛けるべき2つの注意点を紹介します。

内訳と割合を詳細に伝える

諸経費の内容を施主に理解してもらうためには、具体的な内訳とその割合を明確に示すことが大切です。労務管理費、保険料、事務用品費、通信費などの具体的な項目を明示し、「何にどのくらいの費用がかかるのか」を施主が把握できるようにします。
また、「諸経費は工事全体の○%程度」などと割合を示し、なぜその金額になるのかを説明することで納得感を得られます。例えば、大規模工事では人件費が増加するため諸経費が高くなる、といった背景を伝えると理解が深まるでしょう。さらに、過去の類似工事の事例を提示し相場感を示すことでも、施主の不安感の軽減につながります。

重要性を丁寧に伝える

諸経費が単なる補足的な費用ではなく工事を進めるために必須であること、品質維持に欠かせないものであることを施主に理解してもらうことが重要です。
例えば、安全管理費や保険料は労働災害の防止や万が一の事故への備えに不可欠であり、これらのコストが工事の安全性を支えていることを説明します。また、労災保険や建設業法で義務付けられた費用が含まれていることを伝え、法的な要件を満たすためにも必要であると理解してもらいます。
さらに、「諸経費を削れば工事費が安くなる」という誤解を防ぐため、管理費を極端に削減すると工期の遅れや品質低下のリスクが生じることを強調し、適切な費用配分の重要性を伝えるとよいでしょう。

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【まとめ】諸経費の相場は5〜10%が目安!施主には丁寧に伝え理解を得よう

諸経費の相場は工事全体の5~10%程度が一般的ですが、企業の規模や工事の種類、地域によって変動します。
また、見積書への記載方法にも違いがあり、詳細に内訳を記載する場合と一括でまとめる場合があります。施主に理解を得るためには、諸経費の内訳や割合を明確に伝え、その重要性を丁寧に説明することが大切です。
諸経費は、安すぎると適切な管理ができず、逆に高すぎると施主の負担が大きくなるため、バランスを取ることも重要です。諸経費の適正な設定と分かりやすい説明内容により透明性を示し、施主の信頼感を高めることに努めましょう。

土木工事における諸経費の内訳工事見積書の諸経費の内訳についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

土木工事 諸経費 土木工事における諸経費とは?内訳や相場などの書き方も解説! 工事見積書の諸経費とは?内訳や説明するときのポイントなどを解説