日本国内におけるSNSの利用者数は年々増加しており、2022年度末には利用者は8,270万人にも上りました。普及率にすると82%を超えるSNSは、建設業においても欠かせないマーケティング手法となっています。しかし、ひと言にSNSと言っても様々なコンテンツがあり、それぞれユーザー層や特色が異なります。また、SNSも活用方法次第では企業イメージを損なうリスクもあるのです。今回は、建設業を営む方に向けてSNSの活用方法やリスク、SNS以外のおすすめの集客方法などについて紹介していきます。
建設業に合ったおすすめのSNS活用術
2020年の新型コロナウイルスの流行を機に、Webを用いた集客は建設業においてより普遍的なものになりました。中でもSNSは建設業の購買層である20代30代に普及しているため、マーケティングに取り組めば非常に高い集客効果が期待できるツールとして認知されています。しかし、有効活用するためには各SNSの特性と、運用方法を理解する必要があります。以下で、Twitter、Instagram、Facebook、Pinterest、YouTubeという代表的な5つのSNSの活用方法やユーザー層について解説していきます。
Twitterで情報拡散
Twitterは、140字以内の文章と写真、動画が使用できるSNSツールです。10代〜50代と幅広いユーザーが利用しているツールで、推定ユーザー数は 5,000万人程度と考えられています。Twitterの特徴は、拡散力が非常に高いことです。投稿に対して「リツイート機能」を使えば簡単に自分のタイムラインに投稿がシェアされます。そのため、話題性の高い投稿はかなり速いスピードで拡散され、いわゆる「バズる」状態になります。リアルタイム性と情報拡散力を生かして、鮮度の高い情報を掲載しましょう。
画像・動画を使ったInstagramの使用
Instagramは画像や動画投稿を主としたSNSツールです。アクティブユーザーは3,300万人と考えられており、10代〜30代の若年層を中心に普及しています。Instagramを建設業に利用するのであれば、視覚に訴求する魅力的な写真や動画を、ハッシュタグ機能を利用して拡散すると効果的です。例えば、工務店ならば施工例を投稿し「#注文住宅」「#完全自由設計」などのハッシュタグをつけて説明文を記載すれば、ハッシュタグを通して情報収集しているユーザーの目に留まる可能性が高くなります。拡散力はそれほど高くありませんが、自社のブランディングに適したツールと言えます。
Facebookを活用した海外向け発信
Facebookは実名性の高い、ビジネスで利用される機会も多い老舗のSNSです。Facebookのアクティブユーザーは2,200万人といわれており、20代〜30代以降の登録者が目立ちます。Facebookの特徴は実名登録ならではの信頼度の高さと、コンテンツの自由度の高さです。字数制限もなく、写真や動画もHPのリンクも添付できます。また、海外での利用者が多くシェア機能を用いれば情報の拡散も期待できるため、グローバルな展開を予定している企業にもおすすめです。
デザイン職向けのピンタレスト投稿
Pinterestは他者とのコミュニケーションではなく、視覚的に興味を抱いたコンテンツを集められるツールです。Pinterestのユーザー数は300万人前後で、他のSNSツールと比較すると決して多くはありません。しかし、専門性が高くクリエイティブ職や購買意欲が高いユーザーが多いのが特徴です。スタイリッシュな内装や外観など、興味を引く質の高い画像投稿をすることで、特定のユーザーに訴求できます。また、拡散やいいねを目的としていないツールなので、炎上やネガティブなリスクがないのも魅力の1つと言えるでしょう。
YouTubeでの建設中の動画配信
YouTubeは動画を共有するためのプラットフォームです。6,500 万人以上の利用者数を誇り、10代〜60代まで幅広いユーザーに支持されているYouTubeは、もはやテレビと同等の社会的なインフラにまで成長していると言えます。YouTubeは、他のSNSよりも長時間の動画投稿が可能なので、文面や写真では伝わりづらい自社の情報を伝えられます。例えば、ルームツアーや建設途中の様子などは、施工会社を検討しているユーザーにとっては非常に有益な情報となります。
建設業でSNSを使いすぎると起こる危険性
SNSはテレビや新聞に公告を出すよりも安価かつ手軽に、自社の魅力を自由に拡散できるツールです。現在20代〜30代は情報収集をSNSで行う傾向があるため、SNS運用はマーケティングを行う上で最優先事項といっても過言ではないのです。しかし、自由度と拡散性の高いSNSだからこそ、運用する際は大きなリスクを伴います。建設業でSNSを運用するうえで考えられるリスクを以下で2つにまとめました。SNSだけに集客を依存せず、バランスの取れたマーケティングを心がけましょう。
悪い情報だけが拡散される危険性
SNSには炎上のリスクがあります。炎上はいつどのようなきっかけで起こるのか予想できず、対応次第では企業のイメージや利益を損なう恐れがあります。炎上の原因は多岐にわたりますが、多くは不適切な文面や写真によるものです。例えば、災害のタイミングで投稿した際に投稿し「不謹慎」と拡散される、またデマやフェイクニュースに巻き込まれ炎上するケースも考えられます。もし炎上した際は、企業として謝罪や釈明のコメントをあげ、しばらく更新頻度を控えて静観する姿勢が大切です。
自社の情報が漏洩する
SNSの企業アカウントを運用する企業が増える一方、情報漏洩のリスクも高まっています。アカウントの乗っ取りや、なりすましアカウントなどによる不正アクセスによる被害だけではなく、自社の社員が社外秘の情報を写真や動画に載せてしまうなどの事例も見受けられます。一度漏洩した情報は、SNSでは瞬く間に拡散されます。その結果ブランドイメージの低下や社会的信用の失墜、最悪の場合賠償金の支払いまでものリスクが考えられるのです。セキュリティの強化と社員へのメディアリテラシーの教育は徹底しましょう。
建設業におすすめのSNS集客以外の集客方法
SNSは非常に効果が高い集客方法ですが、情報漏洩や炎上のリスクを抱えているためそれぞれの対策を講じてから運用しなくてはなりません。特に、従業員への情報リテラシーやセキュリティの教育は、なるべく早くスタートすることでリスクの軽減に繋がります。そして、リスクを回避するためにはSNSに集客を依存しないことも大切です。建設業では、
・ホームページ
・リスティング広告
・ブログ
・建設会社の紹介サイトに登録する
・自治体に登録して業者紹介制度を受ける
・セミナーや相談会を開催する
など、オンライン、オフライン双方で様々な集客方法があります。
建設業でSNS集客を成功させるためのポイント5選
個々のSNSツールの特徴を生かして運用することは決して簡単ではありません。また、バージョンアップとともに仕様が変更になることも多いため、慣れるまでは時間を要するかもしれませんし、実務に割く時間が多くSNS運用をする人員や時間の確保が難しいという声も多く伺います。そのような方のために、SNSを効果的に運用するために欠かせないポイントを5つに分けて紹介します。最初から完璧に全てのSNSを運用しようとはせず、まずはできる範囲から少しずつ始めてみましょう。
SNS活用の目的を確立させる
SNSを利用する目的を明確にしましょう。「無料だから」「競合他社もやっているから」と「とりあえず」の気持ちで始めてしまうケースは見受けられますが、殆どはうまくいきません。SNSは成果が出るまでに時間がかかるツールなので、目的意識が希薄だと継続できず結果としてアカウントを放置してしまうケースが目立ちます。自社ブランドのブランディングもしくは認知度の向上が目的なのか、もしくは集客を狙っているのかによって戦略は異なります。アカウントを作る前にターゲットと目的を定めておきましょう。
ペルソナの設定を行う
ペルソナとはサービス・商品を利用する典型的かつ具体的な顧客モデルのことを指します。ペルソナを設定することでマーケティング戦略を練る際にターゲット層の認識にばらつきが出ることを防げるだけでなく、ユーザー層を絞り込むことでコストカットにもつながり、収益化も期待できるのです。SNSを運用する際は設定したペルソナに訴求するツールを選択し、適切な運用をする必要があります。自身で判断が難しい場合、複数のSNSに同じ内容の投稿を続け、ユーザーのリアクションを見て適しているものを選別するのもよいでしょう。
片手間で行わない
SNSは片手間にスマートフォンでやるものという認識があるかもしれません。しかし、建設業のSNSの集客は隙間時間に行っていては十分な成果は得られないでしょう。なぜなら、自社ホームページよりもSNSアカウントのほうが拡散性が高いため、片手間の投稿で自社ブランドのイメージを下げる可能性があるからです。さらに、質の高い投稿をするだけではなく、定期的に継続しなければ表示される頻度が少なくなりユーザーの目に触れる機会も損失します。なるべく専任の担当者を配置して本格的に取り組むことをお勧めします。
動画作成も取り入れる
写真だけではなく動画も取り入れたコンテンツを作成しましょう。従来は写真と文章がSNSの集客の基本でしたが、近年では動画を用いた集客モデルも増えています。特にInstagramは動画機能が豊富にそろっており、フィード投稿は最大60分投稿が可能で、リール機能を用いれば約90秒のショートムービーも作成できます。さらにインスタライブでは、ユーザーとリアルタイムで動画を通して密なコミュニケーションをとることが可能になりました。動画を用いることでユーザーにより強いインパクトを与え、充実した内容の投稿が可能になります。
自社ページへの誘導も行う
SNS運用に力を入れるあまり、自社ホームページの運用を疎かにしていませんか。SNSだけでは十分に企業の魅力を伝えられません。SNSは拡散力が強いツールではありますが、伝えられるのはあくまで企業の情報の一部分です。企業理念や企業の強み、実績など企業の核となる情報は、ホームページを通して初めて十分に伝えられます。SNSのプロフィールや投稿に自社ホームページのリンクを貼り、ユーザーを誘導する仕組みを作りましょう。
SNSを効果的に活用し、様々な出会いを増やしていこう!
SNSは建設業においても、非常に効果の高い集客ツールです。有効に活用できれば企業の認知度だけではなく好感度アップにも繋がります。まず、炎上や情報漏洩など考えられるリスクに関する社内の教育を十分に行い、運用する上での目的やペルソナを明確に定めましょう。そして、各媒体のユーザー層や特徴を活かし、動画や写真を使い分け充実した質の高い投稿を定期的に行っていくことではじめて効果が期待できます。まずはアカウントを作成し、SNSの集客に一歩踏み出してみましょう。