「いわて建設業振興中期プラン2023」について岩手県県土整備部建設技術振興課の方にインタビューしました!

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建設業の担い手減少や就業者の高齢化は建設業の大きな課題になっています。特に地方の建設企業は、地域インフラ維持管理の担い手でもあり、地域経済を支える役割も担っています。

様々な地方自治体が、地域の建設業振興に向けて建設業の振興に関するプランを策定しています。

今回は「いわて建設業振興中期プラン2023」を策定している岩手県の県土整備部建設技術振興課の菊地様と栃丸様に、建設業界のためにどのような取り組みをしているのかや、県で定めた施策などについて詳しくインタビューしました!

よろしくお願いします。

岩手県県土整備部建設技術振興課の概要

岩手県県土整備部建設技術振興課ではどのようなことをされているのですか。

建設技術振興課は建設業の振興のほかに、建設業法の諸手続きや入札参加資格審査を行っています。また、技術部門では、土木建築工事の品質を確保するための各種基準策定や単価設定などを行っています。人数は16人程で、建設業振興担当と技術企画指導担当の2つに分かれている課になります。

いわて建設業振興中期プラン2023について

画像引用元:いわて建設業振興中期プラン 2023

いわて建設業振興中期プラン2023とはどのようなものですか。

一番最初に、平成15年に建設業振興緊急アクションプログラムを作ってから、定期的に見直しを行っております。現在のプランは令和5年3月に策定したもので、同年4月から令和9年3月までの計画期間になっています。

社会インフラの整備・維持など様々な役割を期待されている県内の建設企業が、将来にわたってもそうした役割を果たしていけるように定めたものです

県だけではなく地域の建設企業や建設業団体が目指す方向性の意識を共有したうえで、中期的に取り組む内容を示すものとして作っています。

このプランは国からの指示で策定したものですか?それとも岩手県独自で策定したものですか。

これについては県が独自に策定しているものです。

岩手県だけでなく他県でも策定していると思いますが、それぞれ独自の判断なり考え方でつくっていると思います。

岩手県における建設業界での課題感にはどのようなものがありますか。

プランで挙げられている課題
課題1:若者や女性等の担い手の確保・育成
課題2:働き方改革の推進
課題3:生産性の向上
課題4:社会経済情勢の変化に応じた経営力の強化
課題5:頻発する自然災害等への体制の確保
課題6:建設投資額の確保

これは岩手県だけではないと思うのですが、全体的に就業者数が減ってきていることですね。そして、反比例するかのように高齢化が進んできているということです。人手不足への対応が喫緊の課題ということで、対応していかなくてはならないと思っています。

特に働き方改革と生産性の向上を重要課題として捉えておりまして、施策も同じように捉えています。

現在どういった方針で特に課題解決に動いているのですか。

画像引用元:いわて建設業振興中期プラン 2023

これまでの課題を踏まえて、地域の建設企業は何を目指すべきか、どのような企業になるべきかという目指すべき姿を県と業界団体と建設企業とが共有しています。そして、それを実現していくために、6つの施策を立てています。

そして、その施策の中の1、2、3を特に重点的に取り組まなければならない施策と捉えています。

施策1:担い手の確保・育成
施策2:働き方改革の推進
施策3:生産性の向上

その中で、具体的に何をしていくのかをさらに細分化して、13の取り組み項目に起こしています。それに基づいて県が何をする、業界の方にはこんなことを期待する、というように取り組みを進めようとしているところです。

このプランの効果計測方法はどのような方法になりますか。

前回までのプランの中では取り組みを評価するような目標値は定めていませんでした。しかし、施策や取り組みの効果を客観的に分析しながら、PDCAを行っていくため今回のプランからそれぞれの施策について、この4年間の計画目標値を定めました。

まだ実際に今回のプランになってから1年目が終わっていないので評価は行っていません。しかし、そういった数値的な評価と合わせて、建設業地域懇談会の中で意見を聞いたり、有識者の方々で会議を立ち上げてフォローアップしていければと思っています。

いわて建設業振興中期プラン2023での具体的な施策について

方針に伴って、どんな取り組みをしているのですか。

例えば施策1「担い手の確保育成」であれば、項目として入職促進とイメージアップを掲げています。

入職を促進するための施策として、毎年度、県内の高校生や短大生を対象に「いわて建設業みらいフォーラム」というものを開催しています。

そこで先輩技術者の経験を発表してもらったり、高校生から質問をうけたり、あるいは会場内に地元企業のブースを作って、実際にそこの会社でこんな技術を持っているということを紹介をしています。

他には、高校生との協働による道路インフラメンテナンスの取り組みも行っています。県の職員とそれぞれの地域の高校生さんたちに実際に橋梁点検をやってみてもらうという体験です。この取り組みは、令和4年度に国土交通大臣賞を受賞しました。

施策2と3について、これは全国的な取り組みでもありますが週休2日の拡大や施工時期の平準化、ICT工事の推進です。

さらに本年度から建設DXの推進事業の中のひとつとして、バックオフィスDX推進事業を立ち上げました。バックオフィスとフロントオフィスをうまく繋げて、全体として働き方改革や生産性向上を行おうとするものです。

フォーラムの開催では、実際何名ぐらいの方が参加したのですか。

令和5年度は11月21日に開催しまして、平日ではありましたが全体で関係者も含めて約350名の参加がありました。普通高校も2校参加がありましたが、主には工業系の高校です。

ふたつ目の工事現場の週休2日の拡大はどのようにされるのですか。

週休2日工事は、基本的には全ての工事を対象にして行っています。実際に週休2日が達成されれば成績評定で加点評価しています。

令和6年2月からは、原則全ての工事を「発注者指定型」としています。

ただ、例えば設備工事とかに関しては、どうしてもお客様の都合で土日に工事というような話はよく聞きます。そういったところはあるので、完全の週休2日というよりは4週8休という形で休日を確保していきましょうと推進しているところです。

バックオフィスDXの推進については具体的にはどういった活動をされてらっしゃるのですか。

バックオフィス側の生産性を上げることでフロントオフィスを助けて、全体的に効率化していきましょうという取り組みを始めたところで、これは県の補助制度を設けました。

上限はあるのですがそういったことを推進する企業さんに対してシステムの導入費用等の一部を補助するものです。

このプランの施策で効果が大きかったものや成功事例はありますか。

この計画は初年度なので実際の評価まではできていません。ただ、先ほどのフォーラムや、協働点検、バックオフィスDXなど、岩手県としての特色ある取り組みに努めているというのが今の段階です。

岩手県ならではの取り組みは他にありますか。

本県には建設業協会の各支部が県内に13支部あるのですが、年1回上半期に県庁の職員、役職者から担当者までが全支部をまわって、建設業地域懇談会というものを行っており、次年度の事業につなげています。このように細やかな意見交換を行っている点は特色かなと思っております。

今回のこのプランを作るときにも建設業団体との意見交換を経て、全体で抱えている課題感も踏まえたうえで作りました。

特に力を入れている取り組みはどのような取り組みですか。

全てが重要であることは言うまでもありませんが、業界団体等の意見も踏まえ、課題1~3を「重点項目」に位置付けているとおり、相互に関連性のあるこの3つの課題が重要と考えています。

施策を行う中での課題感はありますか。

やはり私の中では担い手の確保育成が非常に重要だと感じています。重要なのですが、一朝一夕ですぐに何かなんとかなることでもないのです。

特に岩手県の場合は、高校までは県内にいるのですが、大学に進学すると県外に出ていくことも多いので、そのなかで担い手を確保し、育成していくっていうところはなかなか難しいところかなと思ってます。

あとは、建設業のイメージアップといっても、実際それを測ることも難しいと感じています。我々や建設業界の方はイメージアップのために、色々な取り組みをしていますが、それが外から見てどう見えているのかっていうようなところは、なかなか測りにくいと思っています。

ちなみに担い手の確保にうまくいっている会社さんはありますか。

そういった話を聞くことはあります。かなり若手の方を中心に担い手を確保して、働き方改革も進んでるような企業さんはあると聞いております。

そのような会社さんはどういう取り組みをされていらっしゃるのですか。

共通して言えることは、やはり賃金が高いことであったり、働く環境が良好であることのようです。若い方が多い会社だったりするので、働く環境を整えたりとか、休暇の充実とかそういったことが好評なのだと思います。

建設業のイメージアップのためには、どのような媒体で情報発信を行っていますか。

県の県土整備部の出先機関の方で動画を作って、YouTubeで配信し、それを県のホームページ上に載せて発信したりしています。あとは県政番組などの県の広報媒体でPRしたりもしています。

最後に、全体を通して伝えたいことがあれば教えてください。

菊地様:プランを着実に進めていくことによって、ここで掲げている目指すべき姿が実現できればいいと思っており、県だけではなくて事業者さん、建設業団体さんの協力もいただきながら盛り上げていきたいと思っています。

栃丸様:私も昨年からこの部署に来て、これまで現場だけだったのが建設業界のこと色々見ているなかで、生産性とかDXは、やっぱり意識の高い会社さんはより進んで、その他の会社さんは負担がどんどん増えているということを感じました。
やはり県からもこういった業者さんに対してDXなどの必要性を伝えていき、県内の業者さんが今後両極端にならないよう、取り組みをどんどん進めていけるような体制づくりをしていく必要があるのかなと思ってます。