一人親方が仕事中にケガした場合の労災の申請手順は?対処法やメリットも紹介

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一人親方の中には、

「一人親方が仕事中にケガや事故にあったら元請けの労災は使えるの?」
「元請けの労災に入りたいけどどうすればいい?」
「実際に現場で事故にあってしまった。労災を使うときの注意点は?」

このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。

一人親方が労災をもらうには、どうすればいいのでしょうか。今回は、一人親方と元請けの労災保険の関係や、一人親方が仕事中に事故やケガにあって労災を使用する際の注意点などを徹底的に解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

そもそも一人親方とは?

そもそも一人親方とはどんな人のことを指すのでしょうか。一人親方とは、建設業等で従業員を雇うことなく自分一人もしくは自分の家族で仕事を請け負う事業主のことをいいます。個人事業主でもありますが、「一人親方」というと主に建設業などの業種に限定されて使われる言葉になります。

一人親方の労災保険とは?

建設業に従事する一人親方は、その業種の特徴から高所など危険が伴う現場で仕事をすることもあります。そのため、仕事中に大きな怪我をすることや事故に巻き込まれる可能性もあります。そんなとき、仕事を請けた元請けの労災を使いたいと思う方もいるかもしれません。

しかし、元請けの労災保険は、雇用関係にある従業員にのみしか適用できません。一人親方は元請けとは仕事上での契約だけであり雇用関係にはないので、労災保険の対象外となります。さらに元請けは、労災に加入していない一人親方に仕事を依頼するのは不安があり、そのような一人親方に仕事を依頼するのを避けることもあります。

そのため、一人親方が現場に入る際の制約として労災保険に加入していることが義務化されていることも多くあります。

万が一のことや、より案件を増やすためにも、一人親方の方は自分で労災に入っておくべきでしょう。

一人親方が労災にあったら?元請けの責任はどうなる?

もし一人親方が労災にあった場合、元請けの責任はどうなるでしょうか?元請けは現場で働く下請け、作業員の安全に配慮する義務があるため、一人親方に労災保険への加入を求めることがあります。

一人親方が労災保険に加入しないことのデメリットは、元請けの現場へと入ることができない、労働者と同様の補償を受けられない点です。一方で一人親方の労災保険への特別加入は義務ではなく任意です。

元請けの労災保険は適用されるのか?

元請けの会社が加入している労災保険は、雇用関係にある従業員のみ使用できます。一人親方は元請けの仕事をしていますが、仕事上での契約関係にあるだけで、雇用関係にないのです。

そのため、一人親方が怪我をした際や事故にあった際は、自身に加入している労災保険でしか補えません。自身で労災保険に加入してないと、ケガなどの際は収入が途絶え生活の面での保障がでてしまいます。収入が入らないのに、治療費がかかり続けることにもなりかねないので、自身で必ず保険に入るようにしましょう。

元請けに怪我の報告は必要?

一人親方が労働中にケガなどにあった際は、元請けに報告するようにしましょう。なぜなら、ケガなどにより仕事の重大な支障をきたす可能性があるからです。ただし、労災を申請する際の承認は元請けから貰う必要はありません。

通常、従業員が労災を受ける際には、次の通りになります。

  1. 事故にあう
  2. 会社に伝える
  3. 労災保険を使用する

しかし一人親方が労災にあった際は、以下の通りになります。

  1. 怪我をする
  2. 元請けに報告
  3. 加入している労災保険に通達
  4. 労災申請をする

なので、一人親方がケガや事故にあった場合元請けに報告はすべきですが、労災の認証を貰う必要はありません。

一人親方保険への加入は義務?

一人親方が労災保険に加入しないのは、法律違反になりません。そのような法的規則はないからです。そのため一人親方が特別労災保険に加入する、しないは任意になるので自身が決めることになります。

しかし、労災の補償がないと万が一何かあった時に収入が無くなり、治療費を負担しながらの日々を暮らすことになります。そのため、万が一に備え保険に加入していることが大切になるのです。

一人親方が労災保険に入るメリット

続いて一人親方が労災保険に加入するメリットを解説します。下記の項目をそれぞれチェックしましょう。

補償が手厚い

一人親方が労災保険に入るメリットの1つは手厚い補償を受けられる点です。労災保険に加入していない場合、怪我や病気に治療費は自己負担ですが、労災保険に加入することで労働者と同様の補償を自己負担なしで受けることができます。

一人親方の特別加入であっても通常と同等の補償を受けることができるほか、怪我による休業で仕事ができなくなった場合に一定額の給付をもらうことができます。

安心して仕事を受けられる

一人親方が労災保険に加入することで得られるメリットの2つ目は、安心した仕事の受注です。一人親方に仕事を斡旋する元請けは作業現場の安全管理の観点から、作業員に労災保険への加入を求めることがあります。

労災保険への加入はあくまでも義務ではありますが、労災保険に加入している作業員であれば、元請けも安心して現場に入れることができます。

労災保険に入る条件

続いて労災保険に加入する条件をご紹介します。労災保険の加入は労働者を一人でも雇っていれば可能です。また労働者の雇用形態はパート、アルバイトを問わずすべての人が労災保険の加入対象です。

また労災保険には特別加入制度があります。特別加入制度とは特定の要件に該当すれば任意で労災保険に加入できる制度です。この特別加入制度の対象は以下の通りです。

  • 中小事業主
  • 一人親方や自営業者
  • 特定作業従事者
  • 海外派遣者

このうちで1年間の雇用日数が100日未満の労働者は一人親方とみなされて、特別加入制度の対象です。

一人親方が怪我をした際に受けられる補償

安心して仕事を続けるためにも、労災保険の加入が推奨されていることが分かりました。ここからは、一人親方が怪我をした際に受けられる保証について紹介していきます。

労災保険に加入することで、どのような保証が受けられるのか予め確認しておきましょう。

療養給付

療養給付は仕事中に受けた怪我や病気の治療費を補償してくれます。

何らかの原因で仕事中に怪我・病気を患い、病院で治療する際には健康保険ではなく労災保険を使用しましょう。健康保険を使用すると自己負担で3割支払うことになりますが、労災の場合は自己負担0で治療を受けられます。

労災保険指定医療機関でない病院の場合、1度窓口で全額支払う必要がありますが、のちの申請で支払った治療費が返ってきます。

休業給付

休業給付は仕事による怪我や病気が原因で働けない間、休業による損害を補償してもらえます。休業期間が3日目までは待機期間とみなされ、4日以上から補償の対象になります。

給付額は給付基礎日額の60%となっていますが、20%の特別支給金が上乗せされますのでトータル80%の補償を受けられます。

傷病年金

休業補償の原因となる怪我や病気が完治せず、傷病年金は療養を開始してから1年6か月が経過しても治療が続いている場合に受けられます。

傷病年金に切り替わる条件は以下の2つです。

  • 原因となる病気や怪我が障害等級第1級〜第3級に該当する
  • 療養開始から1年6ヶ月が経過している

上記の条件を満たしている場合、治療が終了するまで年金は支給されるでしょう。また、支給される金額は傷病等級によって異なります。

  • 第1級:給付基礎日額の313日分(114万円)
  • 第2級:給付基礎日額の277日分(107万円)
  • 第3級:給付基礎日額の245日分(100万円)

障害年金

仕事による怪我や病気が完治したあとも、何らかの障害が残った場合に受けられます。障害等級第1〜7級に該当する障害が残った場合、該当する等級によって支給される年金の金額は異なります。

第1級:給付基礎日額の313日分(342万円)
第2級:給付基礎日額の277日分(320万円)
 ︙
第7級:給付基礎日額の131日分(159万円)
また、第8級から第14級に該当する場合には障害一時金が支払われます。
第8級:給付基礎日額の503日分(65万円)
第9級:給付基礎日額の391日分(50万円)
 ︙
第14級:給付基礎日額の56日分(8万円)

一人親方が怪我をした場合の労災申請の3ステップ

一人親方が実際に現場で労災にあった場合、労災申請の際は以下のことを心がけておきましょう。

  • 病院に労災保険を利用することを伝える
  • 労災の団体・組合・協会に報告
  • 申請書類を出す

ここでは、この3つについて詳しく述べていきます。

病院で労災保険を適用することを伝える

一人親方が仕事中の事故で医療機関を訪れる際には、健康保険を使用するのではなく、労災保険を使用すること伝えましょう。

もしその場で労災を適用せず、健康保険を使用すると後に労災保険への切り替え手続きが必要になります。このような余計な手間を増やさないためにも、病院で労災保険を使用することを伝えるようにしましょう。

労災保険の加入している団体に報告

一人親方が労災を利用する際は、自身のケガや事故の詳細を連絡し、労災を使用する旨を団体に伝えることが必要になります。その上で書類を申請して、労災を団体に承認してもらいます。

加入している団体にもよりますが、報告書として提出する書類の内容は以下の通りです。

  • 氏名・住所・業種
  • 怪我をした日時・場所
  • 工事の内容(工事名や元請けの連絡先など)
  • 怪我をした原因や発生した時の状況
  • 受診した医療機関名

労災の申請書類の内容を正確に記入するためにも、自身がその時の状況を正確に把握しておくようにしましょう。また後述する現認者を特定することも重要になります

必要書類を提出する

労災認定を受ける際には、加入している団体に書類を提出します。その後認証してもらい、さらに自身で労災の請求先を労働基準監督署に申請することになります。ただし、団体によっては労働基準監督署にもまとめて申請してくれる場合もあるので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。

一人親方が仕事中に怪我をした場合に気をつけるポイント

一人親方が仕事で負傷した際に注意することは、以下の通りです。

  • 現認者の特定
  • 労災指定の病院を受診する
  • 健康保険を使用しない

次は、この3つについて詳しく述べていきます。

現認者を把握する

労災申請の際には現認者を把握しておくことが重要になります。

現認者とは、事故が発生した状況を確認・目撃した人物のことをいいます。事故やケガの際には労災に加入している団体に報告し申請書類を作成します。

その労災の申請書類には、事故の原因、その時の状況を記載する必要がありますが、当の本人は突然のことで何が起きているのかがわからないこともあります。

書類には正確に当時の状況を記入しなければなりません。本人が把握できないことを知るためにも、現認者が誰なのかを特定し当時の状況を第三者からも聞けるようにしておきましょう。

病院が労災指定にされているか確認する

受診する医療機関が、労災指定の病院であるかどうかを確認する必要があります。

労災が適応されれば、治療費を支払う必要がありませんし、スムーズに清算の処理が進みます。しかし、指定ではない病院だと治療費を全額負担した上で、返金処理をするという面倒な手続きを行うことになります。事前に労災指定の病院であるかどうかを確認するようにしましょう。

健康保険証を使用しない

一人親方が労災を受ける際には、健康保険を使用しないことも重要になります。

労災を受けられれば、治療費はその労災で賄えるのでその場で治療費を支払う必要がありません。しかし、健康保険を使用すると、労災の使用に気づかれず自身で治療費用を負担することになります。加えて、労災への切り替え、治療費の返金の手続きも必要になり面倒です。なので、労災で支払うことを前提とし、健康保険を使用しないように心がけておきましょう。

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【まとめ】一人親方が怪我をしても元請けの労災保険は適応されない!

いかがだったでしょうか。今回は一人親方に元請の労災保険は適応されるのかについて解説しました。一人親方には元請けの労災保険は適用されません。元請けの労災が使えるのは、あくまでも雇用関係である従業員にのみになるからです。

そのため一人親方は自身で特別労災保険に加入しておくことが重要になります。一人親方の労災保険の加入は任意ではありますが、仕事を受注する際規約上で義務化されている現場がほとんどです。

労災を使う際には現認者の特定や労災指定の病院であること、健康保険証を使用しない等の注意点があることも認識しておきましょう。

一人親方の方は、今回紹介した内容を参考にし、万が一の場合に備え特別労災保険に加入するようにするといいでしょう。

一人親方が仕事中に怪我をした場合の労災申請の手順や、申請時の3つのポイントについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

一人親方が仕事中に怪我をした場合の労災申請の手順とは?申請時の3つのポイントも徹底解説!