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土木や建設業は、契約の際に必ず見積書を提示します。見積書には、工事金額の内訳や工事範囲を明確にする条件などが表示されています。土木業の見積書は記載項目が多いために、作成時には細心の注意を払わなければなりません。取引先とスムーズな取引をして、不必要なトラブルを回避するために、見積書の基本から効率的に書く応用方法まで把握する必要があります。土木業の見積書作成のコツについて、以下で詳しく説明していきましょう。
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見積書を書く理由
土木工事業では、受注前におおよその費用を見積書で算出し提示します。見積書の作成は、受注者、発注者双方にとってメリットの大きい作業です。土木工事業は、「完成品を見てから購入できない」という特徴があります。そのため、契約の際に条件を見積書で提示する必要があるのです。そして、土木工事の際に見積書は条件提示以外にも様々な役割を果たしていることで知られています。見積書が重要とされる理由を、以下で3つに分けて解説していきましょう。
契約額に関するトラブルを未然に防ぐため
1つめに、工事の条件や金額を明示することで、施工後のトラブルを防止するという役割があります。土木業界では馴染みの業者だと、口約束や簡易的な契約のまま着工するケースも珍しくありません。そして、請求書を発行する段階で「単価が違う」「どこにこれだけ費用が掛かったのか」などのトラブルになるのです。事前に見積書で工事範囲はどこまでか、請求金額の内訳などを明らかにし、取引を記録することで、受注者と発注者双方の認識の相違を防ぎます。
説明書としての役割
見積書は、工事前・工事施工中・施工完了後とあらゆるフェーズにおいて説明書の役割も果たします。土木業者はあらゆる場面で、顧客や下請けの職人に対して内容を説明する必要があり、その際に見積書を使用するケースが目立ちます。なぜなら、見積書には工事の内容や単価などが記載されており、それに沿って説明することで作業の流れを作り、職人も作業イメージを掴みやすくなるからです。分かりやすい見積書であれば、元請け、下請け間の意思疎通も容易になるのです。
クライアントからの信頼を得るために
見積書は、顧客との信頼関係の構築に繋がるという一面もあります。「材料や単価、施工費がいくらか」を明確にすることで、取引先からの信頼を向上し、結果として安心した取引に繋がるのです。正式に契約する前に工事の詳細の全てを書面で明確化することで自社の透明性のアピールにもなります。必要な情報が明瞭に記載されており、なおかつ外部の人に対しても分かりやすい見積書を作り、施主や取引先との信頼関係の構築の礎にしましょう。
見積書を構成するパーツ
見積書は、取引のための資料というだけではなく、施工の際の指示書でもあり、トラブルを防止するエビデンスとしても重宝されています。さらに、分かりやすい見積書の提示は他社との差別化にも繋がり、顧客に安心感を伝えるという一面もあるのです。そして、土木業の見積書は、他の業種とは異なる計算方法を用いるため、正確な見積書を作成するためには専門的な知識を身につける必要があるのです。まずは見積書の構成を「表紙」「内訳書」「条件書」に分けて、以下で説明していきましょう。
表紙
表紙は見積書の一番上のページを指します。表紙には一番上に「御見積書」とタイトルを大きく記載します。一般的に表紙には、それ以外に宛名、日付、合計金額や工事の名称や場所、支払い条件や有効期限などを記載します。表紙の日付は、見積書を作成した日付を記入します。最後に社内の担当者名を記入しておけば、先方から問い合わせがある際にスムーズでしょう。その他に補足する情報があれば、「その他」の欄を作成して追記します。
内訳書
内訳書は「見積明細」とも呼び、表紙に記載した金額の詳細を施工項目ごとに細かく記載していきます。一般的に内訳書は、見積書の項目、数量、単位、単価と共に、各項目の合計金額が表示されています。薄い建材は〇枚、細長い建材やシートを丸めた縦剤は〇本、厚みのある平べったい建材は〇台など、単位の使い分けに注意しましょう。その他に記載することがあれば備考欄を作り記載します。項目ごとに単価は大きく異なるため、詳細に記載することで施主や取引先からの信頼度の向上に繋がります。
条件書
見積条件書では、工事範囲について記載します。条件書で工事範囲を明確にすることは非常に重要で、先述したように土木業者と施主や元請けや下請けの認識を確認する意味合いもあります。今後請求書を発行する際にトラブルとならないためにも、抜け漏れなくなるべく詳細に記載するよう心がけましょう。一般的には、工事内容、工事着手時期、完成時期、請負代金の支払時期と方法、引き渡し時期、工事完成後の支払い時期などを記載します。その他、保険や損害金についても明記しておきましょう。
見積書への記載が推奨される項目
土木業の見積書には、合計金額、法定福利費、工事に関する項目、作成者に関する項目、の4つを記載することが国土交通省の「公共建築工事見積標準書式」で推奨されています。しかし、当然のことながら、この4つを記載するだけでは分かりやすい見積書にはなりません。そこで、土木業の見積書で、表記すべき項目について以下で14個ピックアップしました。これらを明記し誰が見ても分かりやすい、精度の高い見積書の作成を目指してください。
表題
表紙、内訳書、条件書それぞれに表題をつけましょう。例えば、先述したように見積書には「御見積書」、内訳書には「〇〇内訳明細書」、条件書には「御見積条件」などの表題を一番上に大きく表記することで、顧客が一目でこの書類が何を指しているのかが分かるようにする役割があります。土木の見積書に馴染みのない業者や施主に提示する場合も、このように表題をつけることで説明もしやすくなります。また、見積書に見慣れている企業にとっても表題の有無は見やすさに大きく影響するので必ず記載しておきましょう。
見積番号
見積書には必ず、見積番号が記載されています。土木業では、9割の確率で見積書が再提出されると言われています。なぜなら、仕様の変更や価格の交渉など様々な理由で、プランを再検討するケースが多く見受けられるからです。最初から見積書にナンバリングしておけば、再提出の際わざわざ記入し直す手間も省け、見積書の管理もしやすくなります。また、顧客や職人と打ち合わせやメールをする際も、見積番号があれば「番号〇〇のところを見てください」と伝えれば、スムーズに会話が進むというメリットもあります。
宛先
見積書の右上に、見積先の会社名や屋号、担当者の部署や氏名、施主名を記載しましょう。一般的に、企業名の後には「御中」、担当者の氏名が分かっている場合は「〇〇部〇〇様」と記載します。「御中」と「様」は併用できないので注意しましょう。企業名を記入する際、(株)や(有)などの略称は使用してはいけません。当然のことですが、誤字・脱字があると信頼関係を損なうので、企業名や個人名はコピーペーストをすることをお勧めします。
見積の合計金額
合計金額は、最も重要な部分と言っても過言ではありません。表紙の上部に大きな文字ではっきりと記載しましょう。「御見積金額」と題して、合計金額を記入します。改ざん防止のために金額の後ろに「-」を記載するようにしてください。金額を記入する際には、「製品金額」と「消費税額」をそれぞれ記載して、内税と外税の違いを明確にするのが一般的です。内訳書の下にも、合計金額は記載するので間違いのないように何度も見直しをしてください。
従業員の社会保険料
法定福利費は必ず明記しましょう。法定福利費とは、従業員が5人以上の個人事業主が支払わなければならない社会保険料を指します。土木業の労働環境を改善するために、平成25年より下請業者は法定福利費を含めた見積書を提出することが義務付けられました。法定福利費の内訳は、
・健康保険
・介護保険
・厚生年金保険
・子ども・子育て拠出金
・雇用保険
・労災保険
の6つです。算出する際は各保険の「法定保険料率」を用いてください。
見積書の発行日
見積書を発行した日、もしくは取引先に提出した日を見積書の右上に記載します。発行日は、いつ作成したかを明確にするというだけではなく、見積書の有効期限の起算日としての役割もあります。今後、納品書や請求書を発行する際にも、見積書の日付が実際の日付と合致していることが非常に重要になります。事実を無視して日付が不適切で取引先の会計台帳と相違があると、不正処理と疑われる可能性が高くなるので発行日の記載に社内ルールを設けて統一すると良いでしょう。
見積書の有効期限
見積書内容の有効期限を記載します。有効期限は、「本見積提出後〇週間」のように記載します。期限として設けられる日数は法律で定められておらず、一般的には2週間〜6ヶ月です。有効期限が必要な理由の1つに、原価変動に対応することが挙げられます。原価は社会情勢や需要と供給のバランスで大きく変動するため、期限を設けず原価が高騰したタイミングで発注されたら大きな損害に繋がることが考えられます。発注者を守るためにも有効期限は必要なのです。
工事名称
表紙や条件書で、工事の名称についても記載します。一般家庭の場合は「〇〇 〇〇様邸 新築工事」、リフォームなどで一部の工事の場合は「〇〇 〇〇様邸 システムキッチン改修工事」などなるべく詳細に記入します。誰が見ても分かりやすいように表記することで、取引先に対して分かりやすくなるだけでなく、施工後の書類の管理保存に役立つという効果もあります。官公庁の工事の場合は、官公庁に指定された形で工事名称を記入しましょう。
工事実施場所
工事名称と併せて、工事を行う場所についても記載しましょう。工事実施場所は、住所で記載する場合と固有名詞で記載する場合があります。学校などの公共施設は固有名詞で記載します。工事範囲が広い場合は「〇番地から〇番地まで、右岸〇km〇m〜〇km〇m」などと表記します。一般住宅やマンションは住所で記載しますが、新築の現場などでは住所が確定していないことも珍しくありません。その場合は「地番」として記載するのが一般的です。
工期+引き渡し方法
条件書に、工事の期間と引き渡しの時期と方法についても記載しましょう。工期は着手(令和〇年〇月〇日)、完成(令和〇年〇月〇日)と表記するのが一般的です。土木業者は、建設工事完成の通知を受けた日から、20日以内でできる限り短い期間内に工事完成検査を完了するように法律で定められています。その後の内覧会とも言える検査を経て引き渡しがされるのが一般的です。その引き渡し方法についても見積書で定めておくと、今後のトラブルの防止にもなるでしょう。
作成者
請求書を作成した企業の正式名称・代表者氏名・住所・電話番号を記載し、その上から社印や担当者印を押印しましょう。現在法改正が行われ、電子請求書を使用するケースが増えてきました。その場合であっても、一旦印刷したものの上から社印を押印するのが一般的です。それだけではなく、請求書を作成した担当者の氏名や個人の携帯電話などの連絡先も併せて記載しておくと、不明点があった時にコンタクトが取りやすくなるので好ましいでしょう。
取引の内容
内訳書内で、工事の項目の名称や使用する資材の商品名や数量、単価などを詳細に記載します。1つの見積書に全ての項目を一覧で記載するのではなく、住宅の場合「外壁工事」「ユニットバス工事」など、工事の種類ごとにぺージを分け、見積書を作成する方法が一般的です。内訳の書き方は、「〇〇工事 一式」と、一括りにしてしまうと、肝心の「どこに幾らかかったのか」が不明瞭になります。そのため、材料ごとに記載することが望ましいとされています。
見積書はどうやって送付する?
見積書の送付方法は、郵送とメールの2種類です。郵送の場合、見積書だけを送るのではなく、必ず送付状も添付しましょう。送付状は丁寧な印象を与えるだけではなく、送付ミスがあった際も情報漏洩前に回収できる確率が上がります。メールの場合は、本分にあいさつ文と見積書を添付する旨を記載すれば、送付状を添付する必要はありません。しかし、同じ社内でも送付する担当者を間違えると予期せぬトラブルに繋がる可能性もあります。送付先の確認は十分すぎる程に行いましょう。
見積書を作成する時に注意したいポイント
見積書は記載すべき項目が多いために、無料でインターネット上に転載されているテンプレートに沿って入力するだけで満足してしまう企業も少なくありません。もちろん法的に問題はありませんが、見積書を作成する際に注意してほしい点が2つあります。1つめは、条件をなるべく具体的に記載すること、もう1つは修正時に備えて古い見積書を残しておくことです。なぜ留意しなければならないのか、それぞれについて掘り下げて説明していきましょう。
条件面は網羅的に記載
見積書に記載する条件面は具体的に記載しましょう。「言った言わない」のコミュニケーション不足によるトラブルは建設業で非常に多く見受けられます。工事を円滑に進めるためにも、工事内容に対する費用や負担範囲を見積書の段階でしっかりと明示しておく必要があるのです。例えば、工事の際の電気代や水道代の負担が元請けと下請けどちらになるか、費用が追加で発生するのはどのような場合かなどはトラブルになるケースが多いため明記しておくことを勧めます。このような条件面を各工事ごとに、詳細に記載しておきましょう。
見積書のコピーを必ず残しておく
見積書を修正する際には、修正前の見積書を必ず残しておきましょう。見積書を再提出した後、「やはり修正前のものでお願いしたい」と言われることは決して珍しくありません。その際に、ExcelやWordで新しい内容に上書き保存してしまうと、修正前の案が分からなくなり顧客に迷惑をかけるリスクがあります。そのようなトラブルを回避するためにも、修正前の見積書の案は、最低でも引き渡しが終わるまで保存しておくことをお勧めします。
クラウドシステムで効率的に見積書を作成
見積書作成は従来Excelのテンプレートを使用することが一般的でした。Excelは初期投資がなく手軽に始められますが、手入力が多いためにどうしてもミスが起きやすく、時間もかかるというデメリットがあります。もし見積書作成に労力を感じているのであれば、工務店向けの帳票作成ソフトなどの専用システムの導入もおすすめです。見積りに関する情報を一元化できる他、簡単な作業で見やすい見積書作成が可能になるので業務効率化に繋がります。また、アプリ連携しているシステムであればスマートフォンやタブレットからも入力可能であるため、作業所の外でも作業できるのも魅力と言えるでしょう。
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【まとめ】土木工事の見積書の記載項目は多い!漏れなく見積書を作成してトラブルを未然に防ごう
土木業界において見積書は、受注者と発注者双方にとって非常に重要な存在です。しかし、他の産業と比較すると記載すべき項目が格段に多く、さらに積算などの独自の計算方式があるために苦手と感じる下請け業者も多いのが現状です。さらに2023年のインボイス制度導入を目前に見積書作成は更に大きな変革を迎えようとしています。手書きやExcelの方法で業務効率が悪いと感じている方は、専用ソフトの導入を検討してみるのも良いでしょう。
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