「栃木県建設エキスパート活用支援事業」についてとちぎ建設技術センター・栃木県技術管理課の方にインタビューしました!

「栃木県建設エキスパート活用支援事業」についてとちぎ建設技術センター・栃木県技術管理課の方にインタビューしました!

建設業の担い手減少や就業者の高齢化は建設業界の大きな課題となっています。特に地方の建設企業は、地域インフラ維持管理の担い手でもあり、地域経済を支える役割も担っています。

様々な地方自治体が、地域の建設業振興に向けて建設業の振興に関するプランを策定しています。

今回は「栃木県建設エキスパート活用支援事業」を策定している栃木県の公益財団法人とちぎ建設技術センターと、栃木県技術管理課のご担当者に、建設業界のためにどのような取り組みをしているのか、県で定めた施策などについて詳しくインタビューしました!

とちぎ建設技術センター・栃木県技術管理課の概要

とちぎ建設技術センターではどのようなことをされているのですか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:
我々は公益財団法人ということで、県や市、地方自治体の建設行政を支援するための機関です。具体的には、県や市や町が発注する土木工事等の積算や、現場の監督業務の支援などが主な業務になります。また、市や町には技術者・技術系の公務員が少ないので、橋梁等の道路施設点検なども受託して一括で発注するといった業務も行っています。

そのような業務の他に、地方自治体・市や町の技術系公務員の人材育成のための研修事業も実施しております。

栃木県技術管理課ではどのようなことをされているのですか。

栃木県技術管理課:
当課は、公共土木工事の技術基準等の制改定や公共工事の品質確保、コストの縮減、建設副産物の対策、建設リサイクル法関係、また公共事業の評価に関連する業務などを行っている部署です。

詳しくは「栃木県技術管理課」で検索して頂きますとホームページが出てきますので、そちらをご覧いただければと思います。

栃木県建設エキスパート活用支援事業について

栃木県建設エキスパート活用支援事業とはどのようなものですか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:この事業は、「建設エキスパート」が工事現場の悩みごとに対して解決のサポートをするという事業です。

技術者として長く活躍した方は高度な知識や技術力を持っている方が多いです。そのような技術力を持った民間建設企業等を退職した方を「建設エキスパート」として登録します。そして、県や市や町の要請に応じて、登録した「建設エキスパート」が現場での悩みごとに対して解決の支援をしています。

この事業はどのような経緯で始まったのですか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:始まった当時について全てのことはわからないのですが、いろいろな記録等によると、まず栃木県側に民間企業を退職される技術を持った方の実力を生かす・活用する場を作りたいという考えがあったと。発案当初から県と技術センターが協議して進め、派遣などの運営については技術センターが担ってきました。

これまでどの程度エキスパートの派遣を行ってきたのですか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:この支援事業が策定されるまでの期間がどれ程であったのかはっきりとは分からないのですが、実際に今の活用支援事業としてきちんとした要領を策定したのが平成19年で、そこから順次運用してきたというところです。

効果測定としましては、多いときは年間で20件以上の派遣をしたり、登録しているエキスパートの人数も16人ほどいた年度もありました。ですが、やはりなかなかその後の後継者となってくれる方が見つからないという点と、市や町からの要望が変わってきたという面もございます。エキスパート人数は、その頃と比較すると現在は半数以下となっています。

栃木県における建設業界の課題感はどのようなものですか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:市や町、そしてその職員にはそれぞれの事情もありますが、技術系の公務員は募集してもなかなか集まらない、採用ができないという自治体も実際にあります。

また、自治体によってはそもそもそういった技術系の公務員の採用・雇用をしないというところもありますので、我々のような公益財団というものが何かしらそういった支援をする必要があるというのは感じているところです。

そういった意味では、昨今市や町で道路施設等の老朽化などがある中で、なかなか技術系の公務員を採用できないというのは非常に課題なのではないかと我々は感じております。

栃木県技術管理課:当課で行っている事業を通じてという回答にはなりますが、
栃木県だからとか、栃木県に限ったことではなくて、全国の他の自治体と同様にやはり担い手の不足ですね。就業していただく方・若い方が少なくて高齢化が進んでいるという事がまずひとつです。

ふたつ目としては、業界として魅力を向上させていく必要があると思っております。いずれも他関係機関の方でも大きな課題として捉えておりまして、同じような課題が当県においてもあるのではないかと思っています。

課題に対して、今回のエキスパート活用支援事業がどのような活き方をしてくるのかお伺いさせてください。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:もちろん制度自体の人数が現在少なくなっているというのは大きな課題ではあるのですが、エキスパート活用支援事業のそもそもの目的が、「技術者の少ない市や町へのアドバイスをするため」です。要は経験豊富な方を派遣して支援するという目的なので、そういった意味では有効であると我々は思っています。

栃木県建設エキスパート活用支援事業での具体的な施策について

この事業のなかで、効果が大きかったものや成功事例はありますか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:具体的な中身となりますと、やはり現場での判断が多いです。
特に橋梁やトンネルのような規模の大きい現場での掘削をした後の判断、例えば出てきたモノ・岩盤などの判断とか、そういったものはやはり非常に経験豊富な方に依るところが大きいので、その点では一番活用されたかと思います。

判断すること自体が難しい、難易度の高い現場などにそういった技術者の方々が入ることによって、より安全にかつ効率的な工事が進むことに貢献した、といった形でしょうか。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:はい。

エキスパート活用支援事業の中で、特に力を入れていきたいポイントがあれば、教えてください。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:調査設計や積算、監督などがありますが、やはりエキスパートが一番活用されたのは本当に現場での判断です。現場監督をしている市や町の職員を助ける、アドバイスするといった点が多かったと思います。それはこれからもエキスパートとしての役割は変わらないかなというふうには思っています。

支援事業における課題感と今後どのようにしていきたいか等をお伺いさせてください。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:エキスパートを拡大するというのはちょっと難しい時期に来ているというのが我々の本音です。

ですが、市や町で困っていること・相談事があれば、それを支援するというのは我々の役目ですので、もちろんこれからも我々技術センターの職員ができる部分はお手伝いしていきます。専門的なものが必要であれば、またその点は検討するところではあります。

今後については、やはり近年、1月の能登半島地震にありますように、急に発生する災害等も今後十分想定されることなので、そういった災害復旧に関する支援ですとか。そういったものは今までもやってはいるんですが、そういったのももっと打ち出しながらやっていきたいと思っています。

最後に

栃木県で建設業に携わる魅力を教えてください。

栃木県技術管理課:新しく入職される若い方、学生さんであったりとかとコミュニケーションを取る中では、やはりご自身がお育ちになった環境で良質なインフラを維持、あるいは新たに整備していくということを、自分が育ったところでできるというのは魅力の一つなのではないかと思っております。

全体を通して伝えたいことがあれば教えてください。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:エキスパート自体の制度は、県と技術センターが一緒になって考えた制度なので、よくできた仕組みだと我々も考えておりますが、今の社会の状況に少しマッチしなくなってきたという現状があると思っています。

我々も、市や町の現状に合わせて、今後いろいろな支援のメニューなどを考えていきたいと思っております。我々としてはもちろん、積極的に市や町を支援していくというのが一番の目的ですので、これからもその点を市や町にPRをしながら、財団の運営を図っていきたいと考えております。

栃木県技術管理課:エキスパート事業については技術センターさんの方で自主運営されている事業かと思いますが、技術センターさんはエキスパート事業のみでなく、幅広く市や町、あるいは県を支援していただいていると思います。

この事業に限ったことではなくて、幅広く支援いただいているということで、かなり自治体の方も助かっていると。

公益財団法人とちぎ建設技術センター:私も、先ほどから皆さんが申し上げていることと重なるのですが、現状の課題としては、市・町において担い手不足や技術者不足という課題があります。今はエキスパート自体に需要が減っているという状況でありますが、必ずお手伝いすべきことはあるかなと考えておりますので、何か工夫をして今後そういった声に応えていきたいなと思っているところです。

まとめ

担い手不足や経験豊富な人材が限られていく昨今の現状の中で、今回の栃木県技術管理課、とちぎ建設技術センターのように、様々な機関が協力しあって成り立っているところがたくさんあるかと思います。
お話を伺う中で、建設技術センターの存在自体が、県や自治体としても、そして建設業界としても大きな助けになっているという点を強く感じました。

お忙しい中お時間をいただきましてありがとうございました!