土木工事保険とは?保険の対象範囲や補償期間を徹底解説!

何かあってから後悔しないためにも、万が一の時には備えておきたいものです。
危険を伴う仕事現場では特に、そのように事前に備える意識は高くもっておくべきと言えるでしょう。
何もないことが一番ではありますが、万が一のために備えるものとして保険があります。
土木工事に関する保険として「土木工事保険」がありますが、実際にその保険内容を理解していらっしゃる方は、意外と少ないものです。
今回はこの「土木工事保険」について、ご紹介していきます。

そもそも土木工事保険とは?

まずは「土木工事保険」の概要について、ご案内します。
土木工事保険とは、一言でいうと”土木工事に関するモノに何かあった時に保証する保険”です。
対象の土木工事を行っている最中に、自然災害や施工ミスまたは不測の事故といった原因から、使用していた資材や対象物の【モノ】に対して問題が生じた際に保証される保険です。つまり【人】に対しては保証の対象外となります。
工事で使用されるモノに対しては、大変幅広く保証される土木工事保険ではありますが、工事に関する全てにおいて保証が適用されるわけではありません。
必要に応じて新たな保証内容をプラスするなど、検討が必要な場合があります。

土木工事保険の適用条件は?

先にご紹介したように、土木工事保険は工事内の「モノ」に対して保証が適用されます。では、具体的な適用条件とはどのような内容になるのでしょうか。以下詳しく説明していきます。

土木工事がメインとなる工事

まず土木工事保険の対象となる工事は、主に下記のようなものになります。
●道路・橋・鉄道などの交通機関の敷設など。
●駐車場や地下街などの土地に密着した建物以外の工事
●水道管埋設などのライフライン設置工事
●河川やダムといつた整備工事
●土地の造成工事
土木工事保険はあくまで土木に関する工事がメインとなるものが対象です。建物建設は土木工事保険の対象とはなりません。

対象となるモノ・施設

このような土木工事保険の対象の中で、保険適用となるモノは下記のようなものになります。
●現場事務所や宿舎などのプレハブ建物および内部の備品
●工事用の資材や仮設材
●工事の対象となっている施設やモノ
土木工事保険の保証対象となるものは、あくまで土木工事の目的となるモノと工事用に建てたモノ及び持ち込まれた備品が対象となります。

土木工事保険の対象から外れる損害

ちなみに「工事用の機械」「自動車などの車両」は他の保険でカバーされることもあり、土木工事保険では保証の対象外です。また土木工事の現場にまとまった現金があることは想定外とみなされ、「事務所内にあった現金など」も土木工事保険の保証対象にはなりません。
土木工事保険では施工ミスによる損害は保証の対象範囲ではありますが、重大な過失には適用されない場合もあります。
さらに納期遅延や能力不足による損害賠償なども保証対象からは外されてしまいますので、注意が必要です。

土木工事保険対象の損害は「不測かつ突発的な」事故

そもそも保険は予測できない突発的な事故に対応するためのものです。
土木工事保険に関しても然り、不測的かつ突発的な事故に対して保証が適用となります。
・風水害・雪害・落雷などの自然災害(地震は除く)
・盗難・放火・いたずらなどの外部的なアクシデント
・火災・爆発・地滑り・地盤沈下などの工事に伴うアクシデント
・施工ミス
上記のようなケースによって、土木工事保険は適用となります。

損害額と実際の保険金額のギャップ

実は土木工事保険では、対象となる損害額と実際の保険金の支払われる額が微妙に異なります。なぜこのような微妙な差が生じるのでしょうか?

損害額の計算方法

まず、土木工事保険の損害に関する保証対象の費用の考え方について、ご案内します。土木工事保険の損害は、発生した状態から元に戻すまでに掛かった費用を基本とし、それ以外は含まれません。
つまり、新しく作り直した時に損害が発生したことを考慮してプラスした損害防止および軽減対策に掛かった費用や価値増加分などは含まれないのです。
あくまで損害が生じた状況から元に戻した場合の費用を損害額とし、実際に再工事した場合に掛かる費用とイコールであるとは言えないのです。

支払われる保険金額の計算方法

多くの保険では限度額が定められていますが、土木工事保険も同様に限度額が設けられています。そして、土木工事保険の限度額には「保険金額」と「支払限度額」の2つが設けられています。

「保険金額」は全体の請負金額全額なのに対し、「支払限度額」はその範囲内で支払額を定めています。
なぜこのような2つの限度額が設けられているかというと、実際に請負金額全体にわたるような損害は起こりにくく、工事全体の請負分をカバーしなくても良いからかける保険金額を抑えたい…というようなことから「支払限度額」が設けられています。
「支払限度額」を設けることによって、保険を掛ける業者側の経費節減となるのです。

免責に注意

自動車保険などでも耳にしたことがあると思いますが「免責」というものがあります。比較的軽い損害で、自分が負担できる範囲の事故…という場合もあります。「免責」とは、そのように定めた金額以下の損害の場合には、保険金の支払い対象外となります。いざとなって慌てないように、免責についてもチェックしておきましょう。

保険金額の一例をご紹介

土木工事保険の保険料は「工事期間」「対象工事」「工事の場所」などによって計算されます。
ここで一例をご紹介します。
「工事期間」…6ヶ月
「対象工事」…道路舗装工事
「工事場所」…東京都○○区
「請負金額」…2,000万円
「支給材料」…なし
「支払限度額」…2,000万円(期間中・1事故)
「控除額」…火災・破裂・爆発ーなし/盗難ー10万円/その他ー100万円
「設計の欠陥の波及損害不担保特約」…付帯あり
「保険料」…約4万円

上記例では請負金額2,000万円を設定していますが、もし請負工事では無く請負金額がない場合には、完成で必要となる見積金額を保険会社に提出します。
また、当初予定よりも請負金額が高額になると予想された場合や納期遅延など、提示した内容に変更が生じた場合には速やかに代理店もしくは保険会社に連絡してください。
事前に連絡することで、保険料の再計算によって保険の継続が可能となる場合があります。

土木工事保険の補償期間

土木工事保険の補償期間は、基本的には1つの工事に対して着工から引き渡しまでになります。
工事内容によっては、1年以上の長期間におよぶものもあるかと思いますが、その場合には「年間包括契約」という契約方法もあります。
「年間包括契約」とは、1年間に請け負う工事を包括して保証してくれます。保険会社によって異なりますので、事前に相談してみると良いでしょう。

万が一、当初契約よりも工事期間が延長となる場合には、保険会社に連絡の上、請負契約書などを提出し補償期間の延長を申し出ましょう。
工事が延長したことを保険会社に伝えなかった場合、延長期間中に事故が発生しても保証されない…なんて最悪なケースが想定されます。
延長の見通しがついた際には、速やかに保険会社に連絡することを忘れずに行いましょう。

社員の怪我や他人への損害はどうなる?

冒頭でご案内したように、土木工事保険はモノに対して保証するものであり、人の怪我や事故には保証されません。
実際に工事に携わった作業員が怪我や事故に見舞われた場合、どうすればよいでしょうか。

作業員の怪我は労災保険等の対象

作業員が怪我や事故に見舞われた場合、まずは国の制度である「労災保険」でカバーします。
ただし、この労災保険はあくまで最低限の保証となります。
最低限であるため、事故後に安心した生活が送れるか…というわけではありませんので、会社としてはより手厚い補償で対応することを考慮する必要があるかと思います。
そのために「労働災害総合保険」など、また別の保険の活用も考えることをおすすめします。

通行人等への損害のリスクをケアしよう

実際の作業現場では、作業員以外にも通行人や近隣の住民にも配慮する必要があります。
作業中の他の人に対するトラブル(物を壊したり怪我を負わせてしまったなど)に対しては「請負業者賠償責任保険」などの活用を検討していただくと良いでしょう。

【まとめ】土木工事保険は土木工事に必要不可欠!作業内容に合った保険を選んでリスクを回避しよう

土木工事保険に関して、ご紹介しました。
土木工事保険は、土木工事を行う企業であれば必ず必要となる保険です。
多くのリスクが想定される作業現場ですから、このような保証はしっかりと把握した上で作業員ならびその家族や周囲の人へ安心を与えた上で、作業を進めていきたいものです。
保険と補償のバランスを考えるのは難しいと思われがちですが、その安心が信頼へとつながると考え、しっかりとした保険を選んでいただくことをおすすめいたします。