土木工事業におけるDXのメリットとは?土木工事業で使える技術も解説

 

土木工事業は私たちの生活には欠かせないインフラ整備を担っている業界です。しかし土木工事業には「人手不足」や「安全性の不安」などの問題を抱えており、頭を悩ませている企業も多いという現状があります。
そんな問題を解決へ導いてくれる存在として注目されているのが「DX」です。「土木工事業とDX」一体どんなメリットがあるのか不思議に思う方もいるでしょう。
本記事では、土木工事業におけるDXのメリットを6つ解説します。
また、実際に土木工事業で使える技術も併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

土木工事業で注目される「DX」とは

DXとは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略で、デジタル技術を社会に浸透させて私達の生活をより良いものへと変えていくことを指します。
近年、ゼネコンや行政機関では多くのDX活用事例が見られており「自社にも導入するべきか」と考えている方もいるでしょう。
また日本のビジネス業界ではDXの定義として「経済産業省」がガイドラインとして公開している「DX推進ガイドライン」を活用する場合が多いです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

土木工事業におけるDX活用のメリット

土木工事業で活用されるケースも多くなったDX。しかし、実際にはどんなメリットをもたらし、どこでその効果を存分に発揮するのか、いまいち理解せずにDXの導入を検討する企業もあるでしょう。DXは土木工事業において以下の6つのメリットがあります。

  • 現場作業効率化
  • ノウハウ継承
  • 内業の効率化
  • 人手不足の解消
  • 安全性の向上
  • 競争力強化

ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

メリット1:現場作業効率化

メリット1つ目は「現場作業効率化」です。例えば、ICT施工「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の利用で測量から検査まで、それぞれの工程を職人の技術継承と併せて生産性の向上が実現できる可能性が高まります。
また工数管理ツールを利用することで、タスクやプロジェクトなど作業の全体像や進捗状況を目視化させて効率良く施工を進められるでしょう。その他にも、モノとモノのつながりを実現させるIoT技術を利用することもあげられます。IoT技術によって、作業に使用する機械を遠隔操作や、動きの検知、状態の把握ができるようになります。また、機械から離れていても随時管理できるので安全性の確保にも繋がります。

メリット2:ノウハウの継承

メリット2つ目は「ノウハウの継承」です。土木工事業を含む建設業界では常に深刻な人手不足の状態を抱えています。
中でも問題視されているのは「職人の高齢化」で、厚生労働省が公開している「建設業就業者の年齢構成」によると建設業界全体の3割が55歳以上と高齢化が進んでいるのです。
※出典:厚生労働省「建設業就業者の年齢構成」

現在働いている55歳以上の職人が10年後、20年後に引退する一方で、一体どのように若手の人材へノウハウを継承していくのかという課題に頭を悩ませる企業も少なくありません。
そこで登場するのが、今回紹介しているDXによる「CIM」です。CIMは、2012年に国土交通省によって提言された建設業務の効率化を目的とする新たな取り組みで、3次元モデルを導入して管理システムの効率化・高度化を図るものです。
ちなみに、CIMは元々建築分野で進められていたBIM※1にならってスタートしたもので、現在では土木の分野と建築分野を統合して「BIM/CIM」と記述するケースが多いです。
このCIMを活用することで、職人が培った知識や技術(ノウハウ)を見える形で次の世代へ情報共有することができるようになります。

※1 BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデルを再現させて、建物づくりに活用させる仕組みです。よりよい建物づくりを目指すものとして建設業界で活用されています。

メリット3:営業・事務作業の効率化

メリット3つ目は「営業・事務作業の効率化」です。DXは実際の現場で活用できると認識している方は多いものの、営業や事務作業など現場以外でも活用できることを知らない方は多いです。例えば営業支援システム「SFA」や専門性の高いコンストラクション・マネージャー(CMR)を導入することで、営業の効率化をアップできます。
また土木業界で発生しやすい工事書類のやりとりも、RPAと呼ばれるAIや機械学習による認知技術や情報共有ツールの活用で作業効率化をアップさせる効果が期待できるでしょう。

メリット4:人手不足解消

4つ目のメリットは「人手不足解消」です。DXによって作業の効率化、安全性の確保ができるようになることで、長時間労働が是正されたり、現場自体の負担を軽減させたりする効果が期待できます。
DXによる技術は、高度な職人が以てしても時間がかかる作業を短縮できたり、人員がかかる作業を少人数化できたりなど、従来以上の成果を生み出すことに繋がるでしょう。
必要なリソースを削減できるという観点でもDXが注目される理由となっています。

メリット5:安全性向上

メリット5つ目は「安全性向上」です。建設業界を含む土木工事業は、現場での危険な作業も多いのが特徴です。
厚生労働省が公開している「労働災害発生状況の資料」によると、令和4年の死亡災害は242人、墜落や転落による事故が196人、そして休業4日以上の死傷者が14,315人で、製造業や林業、第三次産業などと比較しても高いことがわかっています。
※厚生労働省「労働災害発生状況の資料 令和4年」

土木工事では高所で作業するケースも多いので、何らかのアクシデントが発生した場合「高所からの墜落」「滑落」などのリスクも考えられるでしょう。このようなリスクを削減する策として、DXはとても効果を発揮します。例えば、高所での点検作業にはドローンを活用するなど作業員の安全性が確保できます。それ以外にも、建設機械にAIを搭載させて無人の重機が現場で作業を行い、作業員は遠く離れた場所から安全に作業を進めるという策も安全性向上に繋がるでしょう。

メリット6:競争力強化

メリット6つ目は「競争力強化」です。DXはこれまでに紹介した5つのメリットのように、うまく活用できればさまざまな利点を持っています。しかし、まだすべての企業が導入を検討しているわけではありません。
建設業を含む土木工事企業は全国に多数あるものの、中でも中小零細企業が多く、加えて働く作業員も高齢層である方が多いので「ハードルが高い」と見なす企業も多いです。
しかし、DXの導入が活発ではない状況だからこそ、どの企業よりも早くDXを導入することができれば相対的に競争力を強化させることに繋がる可能性が期待できます。

人材を増やそうと大きな求人広告を多数出したり、大規模なシステムを導入したりと企業にとって負担になりかねない投資を続けるよりも、手の届く範囲にあるDXへ真剣に取り組む方が、企業にとってプラスの影響を与えてくれる可能性は高いでしょう。

土木工事業におけるDX技術

次は、土木工事業におけるDX技術には様々なものがあります。今回は大きく6つの技術をそれぞれ詳しく紹介します。

1:3次元モデルデータ

3次元モデルデータとは、先ほど紹介した「BIM/CIM」や、国土交通省が掲げる20個の生産性革命プロジェクトの一つi-Constructionを中心とした3Dモデルデータの活用です。

3Dデータは計画や設計、その他にもAIでデータを処理してさまざまなデータを双子のようにコンピューター上で再現するデジタルツイン技術を実現させたり、3Dプリンタでモノを作ったりなど、土木工事業においてさまざまな使い道に利用できます。

2:LiDAR

上で紹介した3次元モデルデータの作成方法として、近年ではスマートフォンやタブレットなど特定の機種に搭載されているLiDAR機能を利用したものが注目を集めています。
LiDAR機能とは、離れた場所にある物体の形や距離をレーザーの光によって測定するセンサー技術のことです。
LiDAR機能を活用すれば、高額なレーザースキャナーなどを必要とせず、手軽に3次元モデルデータを導入し、測量業務の効率化や生産性向上が期待できます。

3:ドローン

ドローンはダムやビル、トンネルを含む施工管理や測量、点検やメンテナンスなど高所作業高所作業に関する問題を解決へ導いてくれる存在です。
例えば、高所作業における危険リスクを回避できること、そして高所作業を行うにあたって必要な足場の組み立てにかかる予算不足や人手不足に対して一役買ってくれます。
また最近では、ドローンの操作が不慣れな方を想定して、ワンタップで自動操縦できるタブレット専用アプリなど、誰でも気軽に活用できるようなものも増えています。

4:RTK

RTKは「Real Time Kinematic」の略称で相対測位と呼ばれる測定法の一つです。
地上に設置した「基準局」から届く位置情報データを利用し高い精度の測位を実現します。
通常GPSだけを活用する場合、位置情報データには2メートル前後の誤差が発生します。
しかし、RTKの活用によって誤差を数センチ以内まで抑えられる効果が期待できるのです。
RTKは正確な位置情報が必要となる場面で利用されることが増えており、例えばドローンを建設現場で運用する際にRTKを活用すれば正確かつ安定した飛行が可能となります。

5:AI

AI(人工知能)もDXにとって外せない存在でしょう。
AIによって技術のノウハウを映像で継承させたり、3Dモデルデータの処理を行ったりとDXの中でも今後さらなる活用が推奨される技術です。
例えばAIを使うことで建物の老朽した箇所や劣化した部分を見つけることもできるようになります。今後さらなるDX化が進み、多くのデータが蓄積されるようになればさらにAIの重要性が高まっていくことでしょう。

6:クラウド

建設業界を含む土木工事業は、紙とペンで情報をやり取りする風潮が現在でも根強い業界と考えられています。しかし今後効率化を推進するならばデータの一元管理が必要です。

そこで活用を推進されているのが「クラウド管理」で、クラウド管理は業務で使用するソフトウェアやアプリはもちろん、全国の拠点に分散しているデータや、職人それぞれのノウハウをデータ化したものをインターネット上で運用・管理できるようにします。

【まとめ】土木工事業でもDX活用が重要視されている!活用できる技術についても要チェック

本記事では、土木工事業にDXを導入することによるメリットや、土木工事業におけるDX技術を紹介しました。 DXは土木工事業において多くのメリットを持っています。今後多くの企業がDXの魅力に気づいて導入を検討する日も近いでしょう。ただし、せっかくDXを導入しても現場の実情や活用する社員・作業員のITリテラシーにそぐわない技術の場合、意味をなさない場合もあります。
まずはDXの意味や活用シーン、そして技術を事前に学び理解した上でDXの導入を開始することが大切です。本記事を参考に効率的にDXを導入してみましょう。