工事請負契約書がないと法律違反になる!役割や記載項目などを解説

建設工事を行う際には、必ず工事請負契約書を交わします。交わさないと建設業法違反となるためです。しかし、口頭での約束のみであっても、民法第522条第1項により契約自体は成立します。

では、工事請負契約書がない場合にはどういったリスクが発生するのか、どのような内容を記載すればよいのかなどを紹介します。

工事請負契約書とは

工事を行う際に、発注者や元請け先などとトラブルにならないように交わすのが工事請負契約書です。

対等な立場で公正な契約をすること、署名や押印をしてお互いに交付することが大切です。他にも様々な役割や重要な記載項目があるので、詳しく解説していきます。

工事請負契約書の役割

工事請負契約書の役割は、建造物を注文した通りに建てることを約束するためのものです。しかし、建設工事は高額のお金が動くので、トラブルが発生する可能性もゼロではありません。

そこで可能な限りトラブルを防止し、万が一トラブルが発生したときにはどうするのかを工事請負契約書に記載するのです。裁判になったときの証拠にもなるので、工事請負契約書なしで作業をするのは避けましょう。

工事請負契約書に記載する項目

工事請負契約書には何を記載すればよいのかというと、実は建設業法で定められています。建設業法第19条では、工事内容や請負代金の額など、全部で16項目を書面に記載しなければいけないと決められています。

記載が必要な項目は以下の通りです。

    1. 工事内容
    2. 請負代金の額
    3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
    4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
    5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
    6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
    7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
    8. 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
    9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
    10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
    11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
    12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
    13. 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
    14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
    15. 契約に関する紛争の解決方法
    16. その他国土交通省令で定める事項

他にも取り決めるべき内容がある場合には、その旨についても記載が必要です。

参照元:建設業法 | e-Gov法令検索

注文書・注文請書で対応する場合

工事請負契約書を交わすことは法律で決められているため、絶対に守らなければいけません。しかし、例外も存在しています。それは基本的な契約書を交わし、個々の工事ごとに注文書や請書で契約する方法です。

他にも最初から最後まで注文書や請書のみで契約することもできます。ただし、条件を満たしていないと法律違反になるので、詳しく確認してみましょう。

基本契約書を取り交わす場合

最初に基本契約書を交わす場合には、建設業法第19条1項に書かれている内容を記載する必要があります。さらに当事者同士の署名や記名、押印も必要です。

その上で双方に契約書を配布し、保管しなければいけません。必要事項が書かれていない場合、法律違反となるので注意しましょう。基本契約書を最初に交わしたら、工事ごとに注文書や請書でやり取りを行います。

注文書・注文請書のみの場合

最初に基本契約書を交わさず、最初から注文書や請書で対応することも可能です。条件は注文書と注文請書にそれぞれ『基本契約定款』を印刷または添付することです。添付する際には割印を押す必要があります。

さらに注文書や請書にも建設業法第19条1項に書かれている内容を記載しないといけません。基本契約定款の記載も忘れずに行いましょう。

工事請負契約書がないと建設業法違反になる

工事請負契約書が必要な理由は、法律で定められているからです。大きなお金が動く建設業では、トラブルを防止するために建設業法で工事請負契約書の作成が義務付けられています。

よって契約書がない状態で工事を行うと、法律違反となるわけです。なぜこのような法律があるのか、工事請負契約書がないとどうなるのかについて、さらに深堀していきます。

工事請負契約書の作成は建設業法で義務化

建設業法条第十九条第一項にて、契約書を作成し、相互に交付しなければならないとされています。

(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

参照元:建設業法 | e-Gov法令検索

このように、建設業法のなかで義務化されているため、作成しないことが法律違反となるのです。

工事請負契約書がなくても契約自体は可能

建設業法第19条1項では、法律で定められている14項目を記載し、工事請負契約書を交わすように記されています。その反面、民法では口約束でも契約は成立すると書かれているのです。

もし工事請負契約書がない状態で契約を行った場合でも、契約自体は成立します。しかし、建設業法に違反しているので、色々なリスクが生じるでしょう。

書面作成が義務となっている理由

建設業法で工事請負契約書を交わすことが義務付けられている理由は、トラブルを事前に防止するためです。例えば

  • 予定通りに工事を行っていない
  • 品質が悪い
  • 下請けが不利益を被っている
  • きちんと代金が支払われない

などがあります。口約束でも契約自体は成立してしまうので、弱い立場の人が不利益を被ることがないように法律で決められているのです。

工事請負契約書を作成しなかった場合のリスク

もし工事請負契約書を作成しないで作業を行った場合、色々なリスクが発生します。では、どのようなリスクが発生する可能性があるのかを紹介します。

行政処分を受ける

工事請負契約書の作成は法律で決められています。工事請負契約書がないということは、法律に違反しているので行政処分を受けます。

工事請負契約書を交わしていない場合、監督処分となるのが一般的です。具体的には国土交通大臣や都道府県知事による指導、もしくは1年間の営業停止処分です。重い場合には建設業許可の取り消し処分を受けることもあります。

受発注者間のトラブル

工事請負契約書には、様々な取り決めを記さなければいけません。そんな工事請負契約書がないということは、紛争が発生する可能性があります。

例えば受注者と発注者によるトラブルです。建設工事では大金のやり取りも発生しますし、完成までに時間もかかります。最初にきちんと取り決めをしておかないと、最悪裁判に発展することもあるでしょう。

顧客トラブル

建設工事には必ず顧客が存在しています。そのため、顧客と業者によるトラブルが発生する可能性もあるでしょう。顧客は業者にお金を支払う側なので、信頼を失うと依頼する業者を変えられてしまう場合もあります。

そうすると仕事そのものを失います。万が一訴えられたときにも、工事請負契約書を作成していない業者側が不利になることは間違いありません。

工事請負契約を作成する際のポイント

工事請負契約書を作成するときには、注意しなければいけないこともいくつかあります。しかも1から作成するとなると、かなりの手間が発生します。そこで簡単に作成する方法や、注意するべき点などを確認していきましょう。

工事請負契約書は雛形もある

1から工事請負契約書を作成するのは難しいです。そこでおすすめしたいのが、工事請負契約書の標準様式を用いる方法です。工事請負契約書の標準様式は、

  • 国土交通省
  • 日本弁護士会連合会
  • 住宅リフォーム推進協議会
  • 全国建設労働組合総連合

などからダウンロードできます。ただし、ダウンロードしたひな型をそのまま使うのはおすすめできません。工事の内容に合わせ、約款を修正して使いましょう。

工事請負契約書の作成に必要なもの

工事請負契約書を作成するのには、公共工事と民間工事で必要なものが変わってきます。公共工事の場合は、公共工事標準請負契約約款を使用します。

水道や電気など、公共インフラ工事を行っている民間企業も含まれます。民間工事の場合は、民間建設工事標準請負契約約款を使用します。金額によっては、収入印紙も必要になります。

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工事請負契約書にかかる収入印紙の金額については、こちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
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【まとめ】工事請負契約書は必須!きちんと作成し安心して工事を進めよう

今回は工事請負契約書がいかに重要であるのかについて説明してきました。工事請負契約書の作成は、建設業法第19条で決められています。ない場合は法律違反となり、最悪建設業許可を取り消されてしまいます。

工事請負契約書がなくても、民法上契約は成立します。しかし、トラブルを回避するためにも必ず作成しておきましょう。

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