建設業の事業譲渡の流れは?具体的な方法や建設業許可の扱いと注意点を徹底解説

建設業 事業譲渡

建設業を営む人の中には、高齢化や後継者不在といった理由で誰かに事業譲渡をしたいと考える人もいます。しかし、会社の事業を誰かに譲渡するのはものとは違い容易ではありません。いくつものハードルを乗り越えなければいけません。

今回は、そうした建設業の事業譲渡について解説します。事業譲渡の具体的な流れや注意点、建設業許可の扱いなどについて紹介します。建設業を営み、事業譲渡を検討している人は、参考になりますので最後まで読んでください。

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建設業の事業譲渡

建設業の事業譲渡とは、自社の事業の全部もしくは一部を他人に譲り渡すことです。事業譲渡の対象となるのは、会社の資産や負債の他に、独自の技術や人材です。競合他社が事業を譲り受けることで、譲渡された会社の強みを吸収することもあります。また、建設業に新たに参画する会社に譲渡することも皆無ではありません。適切な手順をとることで、誰にでも建設業の事業譲渡は可能です。

建設業界の状況

建設業界では、2012年をピークに事業者数が減少傾向にあります。経営難により会社が倒産する事例もありますが、近年増えているのは経営者の高齢化と後継者不在による廃業です。

建設会社では高度な技術を持つ企業も多いため、廃業により失われることは社会にとって大きな損失です。こうしたことを危惧する経営者は、事業譲渡やM&Aにより技術などを丸ごと他社に引き継ぐ方法を模索し、廃業の回避に努めています。

建設業で事業譲渡を行う流れ

ここからは、建設業で事業譲渡を行う際の実際の流れを解説します。建設業の事業を第三者に譲渡する場合、以下の流れをとることが一般的です。それぞれの流れを解説するので、自社の場合はどのようにすればよいか、検討してみてください。

  1. 事業譲渡の専門会社へ相談
  2. 譲渡・売却先の選定
  3. 譲渡・売却先の決定と内容合意
  4. 買い手によるデューデリジェンス
  5. 取締役会の決議
  6. 株主総会の決議
  7. 譲渡契約の締結
  8. 移転手続き
  9. 手続き完了

1.事業譲渡の専門会社へ相談

建設業を第三者に事業譲渡する際は、まず専門の会社へ相談します。M&A仲介会社や銀行などに相談しましょう。企業の買収やM&Aのコンサルティングを行う会社に相談することで、譲渡先の選定や手続きなど幅広いサポートを受けられます。自社単独で事業譲渡を行うより効率的に手続きを進められるためまずは相談してみましょう。

2.譲渡・売却先の選定

M&A仲介会社や銀行などに相談すると、条件に合った譲渡先の候補を提示してくれます。専門会社が譲渡先候補を選ぶ作業を、スクリーニングと呼びます。

スクリーニングによって提示された中から、おおよその希望条件に合う譲渡先候補を複数社選びましょう。その後、候補に選んだ会社の経営者と面談を行い、最終的な譲渡先を選びます。

3.譲渡・売却先の決定と内容合意

譲渡先との面談を行い事業譲渡の合意が得られたら、基本合意書を作成、締結します。基本合意書は、事業譲渡の最終契約締結までの協議で取り決めを行う、基本的な内容について定めた契約書です。基本合意書に記載する内容は、一般的には以下の通りです。

  • 事業譲渡の方法
  • 譲渡対象
  • 譲渡の対価
  • 役員の処遇などの条件
  • 対価の支払い時期
  • 事業譲渡にかかる費用負担
  • 独占交渉権
  • 秘密保持義務
  • デューデリジェンスのスケジュール
  • デューデリジェンスの協力義務
  • 管轄裁判所

4.買い手によるデューデリジェンス

基本合意を締結したら、買い手によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、譲渡する事業の経営状況の調査です。売上金額や納税額はもちろん、法律的に瑕疵はないか、弁護士や公認会計士などの専門家がチェックします。デューデリジェンスの結果、経営状況が良くないと判断されると、条件の変更や事業譲渡の取りやめとなる可能性もあります。

5.取締役会の決議

デューデリジェンスと前後して、事業を譲渡する会社では取締役会を開きます。会社の根幹である事業を譲渡する際は、必ず取締役会で承認を得なければいけません。取締役会で事業譲渡の決議をとる際は、取締役の半数以上が出席し、その中の過半数の承認が必要です。取締役会を設置していない会社の場合は、必要はありません。

6.株主総会の決議

取締役会での承認を得たら、次に行うのは株主総会です。株式会社では、事業を譲渡する場合は、株主総会の特別決議を行わなければいけません。事業の譲渡を決議する場合、基本的には株主の過半数が出席する必要があります。さらに、出席した株主の3分の2以上の賛成を得なければ、事業譲渡は認められません。ただし、譲渡先と特別な支配関係にあるか譲渡資産が総資産額の20%を超えない場合は、特別決議は必要ありません。

7.譲渡契約の締結

デューデリジェンスをクリアし株主総会での特別決議まで完了したら、最終的な事業譲渡契約を締結します。最終的な譲渡契約には以下の内容が含まれます。

  • 譲渡対象
  • 譲渡価格
  • 商号の引き継ぎ
  • 補償条項
  • 事業譲渡日
  • 契約の効力発生日
  • 従業員との再雇用契約
  • 競業避止義務
  • 表明保証
  • 個人保証の解除

最終的な事業譲渡契約には法的拘束力が発生します。そのため、一方的に契約を破棄すると損害賠償などの責任を負うことを把握しておきましょう。

8.移転手続き

事業譲渡の契約を締結したら、対象の移転手続きを進めましょう。資産や負債はもちろん、従業員との雇用契約の締結も必要です。事業に伴い第三者と契約を交わしている場合、名義変更などの手続きを行わなければいけません。事業に伴う何らかの契約を締結していた場合、全て再契約や名義変更が必要だと認識しておきましょう。

9.手続き完了

移転手続きが全て完了したら、対価を支払って事業譲渡は完了です。法的に事業譲渡が完了するのは、効力の発生日です。そのため、移転手続きは、一般的に効力発生日かその直近に行われます。譲渡契約を締結してから効力発生日まで日数が空くと、譲渡する資産の価値が変動する可能性があります。お互いに不利益を受けないためにも、譲渡資産は第三者による評価を受けましょう。

事業譲渡時の建設業許可

建設業の事業譲渡の際は、建設業許可の扱いが重要になります。令和2年の10月以前は、建設業を事業譲渡する場合、建設業許可の引き継ぎはできませんでした。事業を譲渡する会社の建設業許可は取り下げ、譲り受ける会社は新たに建設業許可を取得しなければいけません。しかし、令和2年の10月に行われた建設業法の改正により、事前に認可を受けることで建設業許可をそのまま継承できるようになりました。

建設業許可の認可申請の流れ

建設業許可の事前認可を得るための具体的な手続きを見ていきましょう。事業譲渡に伴う建設業許可の事前認可を取得する際は、次の手順で手続きを行います。

  1. 事前相談
  2. 申請書提出
  3. 審査
  4. 認可
  5. 認可通知書送付
  6. 資料提出

東京都の場合、事前認可の相談は効力発生日の4ヶ月前から受け付けています。申請書の提出は、効力発生日の2ヶ月前から25日前までとなっています。それぞれのスケジュールを把握し、早めに手続きを進めましょう。

建設業許可の認可申請のポイント

建設業許可の事前認可を得る際、申請する上で次の3つが重要な注意点です。それぞれの注意点について解説するので、事業譲渡の予定がある人は把握しておきましょう。

  • 申請先
  • 申請時期
  • 必要書類

申請先

建設業許可は大臣許可と都道府県知事許可があり、種類によって申請先が異なります。譲渡される建設業許可が大臣許可の場合、管轄の地方整備局が申請先です。譲渡される建設業許可が都道府県知事許可の場合、都道府県庁に申請しなければいけません。申請先は細かく場合分けされているため、不明確な場合は、都道府県もしくは管轄の地方整備局へ相談しましょう。

申請時期

建設業許可の事前申請は、当然ですが事業譲渡の契約による効力が発生する前に行わなければいけません。効力の発生日になって慌てて手続きを行っても、さかのぼって申請は不可能です。
先ほど、東京都の申請の受付を紹介しましたが、受付の開始日は都道府県ごとに異なります。そのため、申請する役所に確認し、スケジュールを組まなければいけません。

必要書類

建設業許可の事前申請には、数多くの書類を提出しなければいけません。事前申請で必要な書類は以下の通りです。

  • 譲渡認可申請書
  • 役員の一覧表
  • 営業の沿革
  • 営業所一覧表
  • 使用人数
  • 使用人の生年月日と住所などの調書
  • 専任技術者の一覧表
  • 専任技術者の証明書
  • 技術者要件を証明する書類
  • 許可申請者の住所・生年月日等に関する調書
  • 直近1年間分の工事経歴書
  • 直近3年間分の各事業年度の工事施工金額
  • 直近1期の財務諸表
  • 定款
  • 営業沿革
  • 所属建設業者団体
  • 健康保険の加入状況がわかる資料
  • 健康保険の加入状況と確認資料提出についての誓約書
  • 主要取引金融機関名称
  • 出資者や株主などに関する調書
  • 法人の登記事項証明書(発行後3カ月以内)
  • 事業納税書証明書

このように、用意する書類は多岐にわたるため、早くから準備をしておくことが重要です。

建設業で事業譲渡を行う際の注意点

ここからは、建設業で事業譲渡を行う際の注意点を解説します。建設業で事業譲渡を行う際は、次の5つの点に注意して手続きを進めましょう。

  • 計画的に行う
  • 自社の強みをまとめる
  • 取引先や従業員へのフォローは丁寧に
  • 進行中の案件の引き継ぎ
  • 専門家のアドバイスを受ける

それぞれの注意点を解説します。事業譲渡の予定がある人は、解説する内容を読んで、この機会に把握しておきましょう。

計画的に行う

事業譲渡を行う際は、計画性が重要です。後継者不足や高齢という理由に焦って、事業譲渡を決めると、従業員や取引先に迷惑をかける恐れもあります。事業譲渡を本格的に検討する際は、計画書を作成し、ゴールからスケジュールを逆算しましょう。そして、スケジュール通りに事業譲渡が行えるように準備を進めてください。

自社の強みをまとめる

事業譲渡にあたり、自社の強みを事前にまとめておきましょう。特定の分野に特化した技術があったり経験豊富な作業員が多かったり、建設会社の強みは多種多様です。しかし、そうした強みもアピールできなければ意味がありません。事前に自社の強みを情報としてまとめて譲渡先候補に説明することで、譲渡される側も事業計画を立てやすくなります。

取引先や従業員へのフォローは丁寧に

事業を第三者へ譲渡する際は、取引先や従業員へのフォローを丁寧に行いましょう。取引先も従業員も、事業譲渡の説明はある程度内容が確定した段階で行いましょう。なぜなら、曖昧な部分があると取引先も従業員も不安を感じて、会社から離れていく可能性があるからです。取引先や従業員が不安を感じないように分かりやすく決定した内容を伝えることで、事業譲渡後も変わらずに取引や仕事ができます。

進行中の案件の引き継ぎ

建設業で事業譲渡を行う場合は、進行中の案件があれば引き継ぎも重要です。工期が複数年にわたるような工事を受注し進行している場合、発注者に不利益が生じないように注意しなければいけません。譲渡先が引き継ぎ工事を行うのか、同業他社に請け負ってもらうのかを決めておく必要があります。いずれにせよ、事業譲渡が決まった段階で、早めに対応しなければいけません。

専門家のアドバイスを受ける

事業譲渡を行う際は、必ず専門家のアドバイスを受けましょう。なぜなら事業譲渡を行うには多くの分野で専門知識が必要になるからです。例えば、財政状況や資産と負債などを、事細かに経営者が把握することは不可能です。そのため、会計士や税理士、法律が係わる部分では弁護士に依頼しアドバイスを求めましょう。事業譲渡全体ではM&Aの専門会社などの力を借りて、理想の形で事業の譲り渡しを完了させましょう。

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事業譲渡が成功するポイント

ここからは、事業譲渡を成功させるコツを解説します。建設業で事業譲渡を行う際は、次の3つの点を意識して手続きを進めましょう。

  • 有資格者や優れた技能保有者が多い
  • コンプライアンスを守っている
  • 経営事項や競争参加資格審査の評価が高い

それぞれのコツを具体的に解説するので、事業譲渡を行う際の参考にしてください。

有資格者や優れた技能保有者が多い

現在は作業員の高齢化も進み、優れた技能を持っている人や有資格者の数が建設業界全体で減少傾向にあります。木造建築であれば熟練の大工、鋼構造物であればノウハウの豊富な溶接工などは、若手が減少しているため希少な人材です。そうした人材が何人も在籍していれば、それだけで大きな強みとなり、事業譲渡においても有利に進む可能性があります。

コンプライアンスを守っている

建設業に関わらず、コンプライアンスを遵守することは会社経営にとっては当然のことです。しかし、建設業者には法令を守らず行政から指導を受ける会社もあります。そのような建設業者は譲渡先もなかなか見つからず、事業譲渡が上手くいかないことも珍しくありません。しかし、しっかりコンプライアンスを守っていれば、譲渡先も安心して事業を買い取れます。

経営事項や競争参加資格審査の評価が高い

建設業においては、経営事項審査と競争参加資格審査の評価が高いと事業譲渡も有利になることがあります。経営事項審査と競争参加資格審査は、公共工事を受注するためには必ず受けなければいけません。

しかし、すでに審査を受けていて高い評価を得ている会社であれば、譲渡後も大きな工事を受注できる可能性もあります。

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【まとめ】建設業の事業譲渡では建設業許可の認可申請が必要!流れや注意点を把握しておくことが重要!

経営者の高齢化や後継者不在により建設業界から会社がなくなることは、技術の喪失にもつながるため、避けなければいけません。後継者がいない場合は、同業他社などに事業譲渡を検討しましょう。事業譲渡は多くの手順を踏まなければいけませんが、成功すれば会社の持つ強みが譲渡後も活躍しつづけます。事業の譲渡を考慮している人は、今回解説した内容を参考に、具体的に取り組みかたを検討してみてください。

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