大規模修繕の工事にかかる期間は?流れや費用・注意点なども解説

大規模修繕 期間

「マンションの大規模修繕工事の期間ってどのぐらい?」
「大規模修繕工事の流れを知りたい」

このような方に向けて、今回は大規模修繕全体の工事期間・個別にかかる工事期間・周期・費用相場・流れ・注意点について紹介します。

この記事を読むことで、マンションの大規模修繕工事の期間についての理解が深まります。

大規模修繕全体の工事期間

マンションの大規模修繕全体の工事期間は、工事の計画を開始してから工事完了まで、約1〜2年ほどかかります。ここからは、下記の順に解説します。

  • マンションの規模別の工事期間
  • 2回目以降の工事期間

マンションの規模別の工事期間

ここからは、マンションの規模別の工事期間を下記の手順で紹介します。

  • 小規模マンションの工事期間
  • 中規模マンションの工事期間
  • 大規模マンションの工事期間

小規模マンションの工事期間

総戸数50戸未満の小規模なマンションの大規模修繕工事は、約3〜4ヶ月程度かかります。小規模なマンションだからこそ、住人同士が顔見知りの場合もあります。工事の準備の時点で組合員の意見を聞き取り、意見を調整していく必要があるでしょう。そうすることで、今後円滑に組合運営ができます。

小規模だからといって準備期間が少なくてもよい、といったわけではないことを覚えておきましょう。

中規模マンションの工事期間

総戸数50〜100戸ほどの中規模マンションの大規模修繕工事は、4〜6ヶ月ほどかかります。中規模のマンションになると建物は大型化し、共用設備も増えるでしょう。

また理事会や修繕委員会を行った際、要望や費用・工事などの内容を見ていきながら工事の準備をしていく必要があります。工事の計画をする時点で信頼性の高い専門家に入ってもらうことが大切です。

大規模マンションの工事期間

100戸以上ある大規模マンションの大規模修繕工事の期間は、半年から1年ほどかかります。また高層マンションや施工面積が大きい建物だと1年以上かかる場合もあるでしょう。

建物の規模が大きくなると、検討する内容も増えていきます。工事を計画する時点から余裕を持ったスケジュールで準備を進めていく必要があるでしょう。

2回目以降の工事期間

2回目以降の大規模修繕工事は、1回目と比べてより細かい工事をする必要があるでしょう。例えば築年数が15年と30年では、劣化の具合が違ってきます。

建物が建設されてから紫外線や雨・風などで、年月が経過するごとに劣化しやすくなります。そのような理由もあり、同じ工事を行ったとしても、2回目のほうが工事期間が長く、費用も高額になってくるのです。

大規模修繕で個別にかかる工事期間

大規模修繕で個別にかかる工事期間について、下記の順で解説します。

  • 足場や仮設設備の設置
  • 下地補修・シーリング工事・鉄部塗装工事
  • 外壁塗装工事・防水工事

足場や仮設設備の設置

足場や仮設整備の設置にかかる期間は、15〜20日ほどです。足場の設置は、建物の周辺を囲うように設置していくのが特徴です。また、その周りをメッシュシートで覆っていきます。

「仮設整備の設置」は、作業員の事務所や資材を置く場所など、工事の間使用する整備の総称です。仮設整備は、工事の後足場と共に解体し撤去します。

下地補修・シーリング工事・鉄部塗装工事

下地補修やシーリング工事・鉄部塗装工事にかかる期間は、2週間〜1ヶ月ほどと言われています。
下地補修は天井や壁などに発生したひび割れなどを補修していく作業のことです。

またシーリング工事は、サッシ廻りや外壁のつなぎ目などに充填しているゴム状の部分を新しくする作業です。鉄部塗装工事とは、耐久性を高めるために錆を落として塗装し直すことを言います。

外壁塗装工事・防水工事

外壁塗装工事や防水工事にかかる期間は、1〜3ヶ月ほどです。外壁塗装工事とは、劣化した部分を補修して新しく塗装し直すことです。作業の流れとして、高圧洗浄でコケやカビを落とします。次に下地処理でクラックの補修を行い、塗装していく流れです。
防水工事は、建物の屋上やベランダ・バルコニーなど、雨にさらされる部分を水から守る工事を行います。

大規模修繕の周期

マンションの大規模修繕工事の周期は「12年に1回」が主流です。また塩害が予想されるような海辺と日照が標準的な地域では、経年劣化の度合いが変わってきます。12年周期を基本として、建物の劣化状態によって工事の期間を調整していく必要があるでしょう。

また、最近では18年に1回となっているマンションも増えてきています。現在は、高耐久化の工事を行うことにより、18年程度まで周期を延長できるといった考え方が広まっています。

2回目以降の大規模修繕を行う時期

大規模修繕工事の周期は、12年に1回が一般的なので、2回目以降の大規模修繕工事は、24年目ごろに行うのがよいと言われています。

また、2022年4月に開始された管理計画認定制度の認定基準には、「長期修繕計画の計画期間が30年以上であり、残りの期間内で大規模修繕工事が2回以上行われるよう設定されている」といった内容が記載されています。そのため、30年以内に2回目の大規模修繕工事を実施するのがよいでしょう。

大規模修繕にかかる費用相場

マンションの大規模修繕にかかる費用相場として、1戸あたり70万円〜130万円ほどかかります。またマンションの規模によって、工事ごとの費用相場は異なります。下記をご覧ください。

工事内容大規模マンション
(総戸数100戸以上)
小規模マンション
(総戸数50戸以下)
防水工事3,000~4,000万円600~800万円
外壁工事3,500~5,000万円700〜1,000万円
仮設工事3,000~4,000万円600〜800万円
設備工事500~1,000万円100〜200万円

2回目以降の大規模修繕工事にかかる費用相場

1回目の大規模修繕工事と比べて、2回目・3回目の大規模修繕工事のほうが、工事にかかる費用が高くなります。

国土交通省が発表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、1回目の大規模工事でもっとも多い割合が〜6,000円・2回目では〜8,000円・3回目だと〜15,000円という結果になっています。この結果から見ても、回数が多くなるほど、大規模修繕工事にかかる費用が高いことが分かります。

大規模修繕の流れ

大規模修繕の流れを下記の順で解説します。

1.修繕委員会を結成する
2.工事の発注方式を決定する
3.建物調査診断を実施する
4.修繕工事の内容を検討する
5.施工会社を選定する
6.総会を開催・施工会社と契約する
7.工事説明会を実施する
8.工事を開始する
9.工事の完了・引き渡し

1.修繕委員会を結成する

まず検討前の管理組合内における体制づくりをしていきます。その1つとして、修繕委員会の結成があります。

通常、修繕委員会のメンバーは組合員から選ばれるのが特徴です。年齢・性別・人数に定めはありません。最終的に決定を下すのは理事会です。しかし、そこまでの役割は準備段階から完工まで、修繕委員会が担っています。

2.工事の発注方式を決定する

大規模修繕工事の発注方式は、主に下記の3つが挙げられます。

  • 責任施工方式
  • 設計監理方式
  • アドバイザー方式

責任施工方式とは、施工会社・マンション管理会社など、1社のみと請負契約を結ぶ方法です。設計監理方式とは、設計監理と工事請負を分担する方法のことを言います。

またアドバイザー方式とは、別名プロポーザル方式と呼ばれており、基本計画立案・業者選定補助業務契約、工事監理契約の2つの契約をコンサル会社と結ぶ方式です。

3.建物調査診断を実施する

建物の診断で現状がわかったら、次に工事の実施時期や工事内容を検討していく必要があります。建物が劣化している場合は、劣化箇所を優先的に修繕計画を行っていく必要があるでしょう。

また、大規模修繕工事実施予定時期の1〜2年ぐらいになると、管理会社やコンサルタント・施工会社などに依頼して、建物の調査診断を実施しましょう。

4.修繕工事の内容を検討する

建物の現状が分かったら、次は工事の実施や工事内容を検討する必要があります。その際、積立金とのバランスを見ながら施工内容を検討していく必要があるでしょう。

また、設計の段階で分かる概算費用はあくまでも推定の金額です。将来的に積立金の不足が予測される場合は、管理費会計を含めた費用の見直しも必要です。

5.施工会社を選定する

工事の内容・予算が決まったら、次は施工会社の選定を行います。マンションの大規模修繕工事では、複数の施工会社を比較して検討していく必要があります。

施工会社の選定は主に下記の3つ方法が挙げられます。

  • 特命随意契約・・・理事会や管理組合とすでに信頼関係にある1社を指名して見積もりを取る方法
  • 見積合わせ・・・現地での説明会や設計図面などをもとに複数の施工会社に見積もりを依頼して検討する方法
  • 競争入札・・・指名や公募によって入札希望会社を選び、競争入札を行う方法

6.総会を開催・施工会社と契約する

大規模修繕工事の概要が決定したら、総会を開催します。総会では、どのような工事を行うのか・予算はいくらか・どういった業者に依頼するのか、などを組合員に説明し承認を仰ぎます。

また、大規模修繕工事は、組合員の同意を得なければ実施することは難しいです。準備段階でコミュニケーションをしっかりとっておくと、組合員の同意を得やすいでしょう。

7.工事説明会を実施する

施工会社が決定したら、組合員・居住者向けに住民説明会を開催します。工事説明会を実施する理由として、工事が開始されるとベランダなど、日常生活に支障をきたす可能性があるからです。また、工事中は臭いや音などにストレスを感じる方もいます。

工事説明会で挙がった意見は施工会社などに共有して、居住者の生活に影響がでないようにしましょう。

8.工事を開始する

工事説明会を実施し、住民の同意を得られたら、工事の準備をしていきます。工事が開始されると進捗状況に遅延がないか確かめるようにしましょう。

大規模修繕工事を検討してから工事を開始するまで、約1〜1年半ほどかかります。長期のプロジェクトにはなりますが、マンションの現状を維持するには大事なことです。工事中は関係業者と綿密にコミュニケーションをとり、円滑に工事が進むように対応しましょう。

9.工事の完了・引き渡し

工事が完了したら、竣工検査を行います。竣工検査とは、外構を含めて施工状況に問題がないか確かめるためのものです。

報告内容を確認して、竣工図書を受け取ると大規模修繕工事が完了となります。「竣工図書」は、マンションを維持していく上で重要な記録です。修繕委員会のメンバーや住民、どの立場でも協力して進めていくことが重要です。

大規模修繕に関する注意点

大規模修繕に関する注意点について下記の順で解説します。

  • マンションの住民とのトラブル
  • 業者とのトラブル
  • 2回目以降の大規模修繕工事に関する注意点

マンションの住民とのトラブル

大規模修繕工事を行う際は、どうしても音が発生してしまいます。工事中は音を防ぐのが難しい場合が多いでしょう。

施工者側がする防音対策として、まずは居住者や近隣に住む住人に工事を行うことを知られておく必要があります。居住者とのトラブルを防ぐためにも、工事内容やスケジュールをあらかじめしっかりと伝えておくようにしましょう。

業者とのトラブル

マンションの大規模修繕工事の経験が少ない業者に依頼してしまうと、工事の遅延や施工ミスなどのトラブルに発展してしまう場合もあります。

業者の中には、安い契約で高い工事料金を求める悪徳業者も存在します。業者を選ぶ際は、管理組合の一定の審査基準を確認し、どういった実績があるのかしっかりと確かめましょう。

2回目以降の大規模修繕工事に関する注意点

2回目以降にマンションの大規模修繕工事を行う場合、過去に行った大規模修繕工事の経験を生かしたり、住民・区分所有者などの意見をできるだけ反映させることが大切です。

また、できるなら修繕工事だけでなく改修工事を視野に入れておきましょう。改修工事とは、古くなったものを当初の性能よりもグレードアップさせることです。工事の費用は高くなりがちですが、マンションの価値を高められます。

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【まとめ】大規模修繕工事は長期間かかる!事前にしっかり計画を立て成功させよう

マンションの大規模修繕工事にかかる期間は、トータルで1〜2年ほどです。またマンションの規模によってもかかる期間は違ってきます。

これからマンションの大規模修繕工事を行う場合は、ぜひ上記で紹介した内容を参考にしてください。工事中の住民とのトラブルに発展しないためにも、注意点をしっかり確認しておきましょう。

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