法定福利費の仕訳方法は?法定福利費で計上される各保険料ごとの計算方法も紹介!

法定福利費とは、企業や個人事業主が負担する社会保険料、雇用保険料、労災保険料などを指します。これらの社会保険料や労働保険料の仕組みを正しく理解できていないと、計上することは難しくなります。

今回は法定福利費に焦点を当て、具体的な仕訳や計算方法について解説していきます。

法定福利費の仕訳方法は?

法定福利費として計上が義務付けられている経費には、社会保険料や労働保険料などが含まれます。通常、これらは雇用主である会社や個人事業主が負担しますが、中には従業員が負担する保険料もあります。

こうした法定福利費を仕訳するためには「仕組み」を正しく理解することが重要です。まずは、法定福利費の仕訳方法について解説します。

簡便的な仕訳

簡便的な仕訳について、以下に例を挙げて解説します。

【給与支給時の仕訳】
借方:給与 400,000/貸方:普通預金 360,000
貸方:法定福利費 40,000

従来の仕訳では「預り金」として処理されていた4万円ですが、簡便的な仕訳では「法定福利費」として計上します。したがって法定福利費を一時的にマイナスとして記録します。

【月末の仕訳】
月末の仕訳は特にありません。

【支払時の仕訳】
借方:法定福利費 80,000/貸方: 普通預金 80,000

給与支給時、仮にマイナス計上していた法定福利費を支払い時に計上します。
そうすることで、会社や個人事業主の負担分の法定福利費のみが計上され、原則的な仕訳と同様の結果となります。

ただし、発生主義による法定福利費の計上ができないため、決算時には調整が必要となります。また、月末が休日などで保険料支払いが翌月に延びる場合は、法定福利費の計上が遅れることもあるので気を付けましょう。

原則的な仕訳

法定福利費は、雇用主である会社や個人事業主の負担と、従業員本人が負担する部分があります。従業員の本人負担部分は、毎月の給与支給時に給与から天引きされます。

以下の給与明細を例に挙げて解説します。

支給控除
給与300,000厚生年金保険料27,450
健康保険料15,255
介護保険料2,355
雇用保険料900
所得税6,750
住民税12,200
給与支給額235,090

引用:みんなの会計事務所|法定福利費を支払った時の仕訳(会計処理)をわかりやすく解説

法定福利費の管理において、従業員から天引きした保険料は一時的に会社が預かることになります。それを反映した仕訳は以下の通りです。

【給与支給時の仕訳】
(給与)300,000 /(普通預金)235,090
/(預り金<厚生年金保険料>)27,450
/(預り金<健康保険料>)15,255
/(預り金<介護保険料>)2,355
/(預り金<雇用保険料>)900
/(預り金<所得税>)6,750
/(預り金<住民税>)12,200

【月末の仕訳】
(法定福利費)27,450 /(未払金<厚生年金保険料>)27,450
(法定福利費)15,255 /(未払金<健康保険料>)15,255
(法定福利費) 2,355 /(未払金<介護保険料>)2,355
(法定福利費) 1,800 /(未払金<雇用保険料>)1,800

法定福利費には消費税がかからない点に留意してください。

【支払時の仕訳】
ここでは例として、厚生年金保険料の支払いを行った際の仕訳を解説します。

(預り金<厚生年金保険料>)27,450 /(普通預金)55,770
(未払金<厚生年金保険料>)27,450 /
(法定福利費)        870 /

厚生年金保険料の支払い以外でも、同様の手法で仕訳をすることが可能です。預り金と未払金が適切に処理され、法定福利費の正確な管理が可能となります。

法定福利費の計算方法

法定福利費を正確に計算するために、各費用ごとに明確な計算式が設けられています。
一つずつ解説します。

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、企業と従業員で半分ずつ負担することが定められています。以前は健康保険料と同様でしたが、2017年9月までの厚生年金保険料率の引き上げが終了し、現在は18.3%で固定されています。

厚生年金保険料の計算式は以下の通りです。
厚生年金保険料 = (標準報酬月額 × 18.3%) ÷ 2

健康保険料

健康保険には、健康保険組合と全国健康保険協会(協会けんぽ)の2つの運営機関が存在します。いずれの場合においても、企業と従業員で保険料を折半することが規定されています。

企業が負担する保険料の計算式は以下の通りです。
健康保険料 = (標準報酬月額または標準賞与額 × 健康保険料率) ÷ 2

なお、基準となる「標準報酬月額」は毎年見直しが行われますので、最新の情報に注目してください。

介護保険料

介護保険料も健康保険料や厚生年金保険料と同じく、企業と従業員で負担は折半となります。基本的な計算方法も同じです。健康保険機関によって利率が異なるため、所属する健康保険の運営機関で確認する必要があります。

介護保険料 = (標準報酬月額 × 介護保険料率) ÷ 2

子ども・子育て拠出金

「子ども・子育て拠出金」とは、子育て支援を目的として課される税金の一種です。この拠出金は、社会保険料と同様に年金事務所(日本年金機構)によって徴収されますが、その実態は社会保険料ではなく税金です。

社会保険料は雇用者と従業員が半分ずつ負担しますが、この拠出金は雇用者が全額を負担する仕組みとなっています。従業員が独身かどうかや子供の有無に関わらず、厚生年金に加入しているすべての従業員が対象となります。

子ども・子育て拠出金 =(標準報酬月額または標準賞与額 × 0.36%)

雇用保険料

雇用保険料率は業種によって負担割合が異なります。また、年度によっても率が変わりますので、計算前には厚生労働省の公式Webサイトを確認してみるのがおすすめです。
企業負担分の計算方法は以下の通りです。
雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率(業種にあったものを適用)

労災保険料

労災保険は、業務に起因する怪我や病気に対する従業員の給付を提供する制度です。その保険料は企業が全額を負担します。

この制度は、官公署や国の直営事業所、船舶保険被保険者などを除き、すべての従業員が対象となります。労災保険料率は業種によって異なり、年度ごとに変更されるため、計算時には対象年度の率を確認して利用する必要があります。

具体的な計算式は以下の通りです。
労災保険料 = 全従業員の年度内の賃金総額 × 労災保険率

法定福利費は原価と経費どちらで計上すべき?

「法定福利費」は、企業が損益計算書上で「原価」としても「経費」としても取り扱うことがあります。

たとえば、建設業界では、社会保険や労働保険の未加入が問題視され、見積書に法定福利費を明示することが法律で義務づけられています。

下請け企業は元請け企業に「工事費用+事業主負担分の社会保険料」を請求できるため、自社の負担分を正確に管理する必要があります。このようなケースでは、法定福利費は「原価」として計上されることがあります。

また、プロジェクト案件で原価管理が必要な場合などには、法定福利費を「労務費」として原価扱いすることもあります。

法定福利費を原価にするか経費にするかは、従業員に支給した給与を「原価に含むかどうか」で判断するのも一つの方法です。

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【まとめ】法定福利費は仕訳方法が2種類ある!仕訳と計算方法をしっかり行って決算に備えよう

法定福利費にはさまざまな種類があり、それぞれが負担利率が異なるため、非常に複雑です。適切な仕訳を行うためには、法定福利費の種類や仕訳方法を正確に理解し、会社の事情に合わせて柔軟に対応することが重要となります。

さまざまな法的要件や負担のあり方を考慮した上で正確で適切な仕訳を計上しましょう。そうすることで、企業の経営を円滑に進めることができます。

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