JV(ジョイント・ベンチャー)の会計処理とは?2つの会計方式と仕訳例を紹介

JV 会計処理

建設業では、複数の建設企業がJV(ジョイント・ベンチャー)となってひとつの建設工事を行うことが多くあります。ひとつの会社では受注できない資金や人手などを要する大きな建設工事などもJVにすることで受注、施工が可能になります。

JVに参加しようと検討しているが自社の会計処理をどうしたらよいのかとお悩みの方もいるのではないでしょうか。今回は、JVの会計処理とはどういうものか、また2つの会計方式と仕訳について具体的に例を用いてご紹介いたします。

JVとは

建設業におけるJVとはJoint Venture(ジョイントベンチャー)の略称で、日本語に訳すと企業共同体です。

1つの工事に対して複数の企業が共同で事業を行うために2~5社の中小企業が形成する組織のことで、主に単独企業では対応が難しい大規模なプロジェクトのために設けられます。

JVは法的には法人ではなく、民法上の組合の一種として定義されています。

建設業でのJVの区分

JVと一言にいっても、様々な種類の企業体があります。建設業におけるJVは、以下の2つの方法で区分化されています。

  • 結成の目的による区分
  • 施工方式による区分

結成の目的による区分

国土交通省は、結成の目的に応じてJVを以下の4つに区分化しています。

  • 特定建設工事共同企業体(特定JV)
  • 経常建設共同企業体(経常JV)
  • 地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)
  • 復旧・復興建設工事共同企業体(復旧・復興JV)

特定建設工事共同企業体(特定JV)

大規模で技術的難易度の高いプロジェクトの受注・施工のために結成されるJVです。工事の安定した施工を目的として構成されます。

このJVは、工事を受注することができなかった場合や、受注しプロジェクトが終了した際に解散するという特徴があります。

経常建設共同企業体(経常JV)

中小企業の複数社が経営力や技術力を高めるために結成する共同体です。経営力・施工力を強化し、入札参加資格審査を申請する際に有資格業者として登録されることを目的にしています。

工事終了後解散する特定JVとは異なり、一定期間有資格者として登録されるという特徴があります。

地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)

地域の災害応急対応や除雪、パトロールなど持続的に行う必要のある維持事業に対して形成される共同体です。地域の建設事業者が減少する中、安定的な実施体制を確保することを目的としています。

経常JVと同様に、有資格業者として一定期間登録されます。

復旧・復興建設工事共同企業体(復旧・復興JV)

大規模災害の被災地域における、地元の建設企業中心に施工力を強化するために結成される共同体です。

被災からの迅速な復旧と復興、急増する工事の需要に対する技術者不足を解決することを目的としています。

こちらも有資格者として一定期間登録されます。

施工方式による区分

建設業におけるJVは、施工方式でも以下の2種類に区分化できます。

  • 共同施工方式(甲型JV)
  • 分担施工方式(乙型JV)

共同施工方式(甲型JV)

あらかじめ設定した出費の割合に応じて、すべての構成員が資⾦や⼈員、機械等を拠出し一体となり施⼯する方式です。

下請代金の総額が4,500万円(建築一式:7,000万円)未満の場合は、全ての構成員が主任技術者を設置します。

しかし、下請代金の総額が4,500万円(建築一式:7,000万円)以上の場合は、1社のみが監理技術者を配置し、ほかの構成員が主任技術者を配置します。

分担施工方式(乙型JV)

あらかじめ工事の負担区分を定め、それぞれの区分を別々に各構成員が責任を持ち施工する方式です。

こちらも甲型JVと同様に、下請代金の総額が4,500万円(建築一式:7,000万円)未満の場合は、全ての構成員が主任技術者を設置します。

しかし、下請代金の総額が4,500万円(建築一式:7,000万円)以上の場合は、1社のみが監理技術者を配置し、ほかの構成員が主任技術者を配置します。

JVの会計処理とは?

JVは複数の共同企業体から構成されていて、参加している企業は対等の立場です。しかし、企業体を効率的に運営していくためには、業務の代表となる企業を選ばなければなりません。

代表企業のことをスポンサー会社、その他の企業をサブ会社と言い会計処理も異なります。会計処理は出資割合に基づいた完成工事高や工事原価を記録していくことです。スポンサー会社は現場管理やJV委員会の運営、予算を策定するなどの役割があります。

なかでも会計処理の担当は重要なことです。サブ会社への出資金の請求処理や下請け会社への支払処理をする必要があります。サブ会社は、スポンサー会社からの出資金に応じて支払いをし、原価明細から会計処理を行います。

JVにおける2つの会計方式

JVではスポンサー会社が会計処理を担当する割合が多くなります。もちろんサブ会社でも会計処理は必要です。JVの会計方式は「独立会計方式」と「取込会計方式」の2つがあります。それぞれ内容についてご紹介していきます。

独立会計処理

JVという共同企業体に参加するスポンサー会社とサブ会社の各企業が、JV独自の会計処理を個々の企業の会計から独立して行うことを独立会計方式と言います。つまり、JVの会計処理と企業の会計処理を別々におこなわなければなりません。

取込会計方式

JVという共同企業体の代表となるスポンサー会社がすべての取引を取り込み、処理することが取込会計方式です。スポンサー会社の財務諸表にJVの会計が入ってしまうことになります。スポンサー会社とサブ会社の出資比率に応じてそれぞれ分け、修正をしなくてはなりません。

JVの会計処理例

JVの会計処理をおこなう際の方法について、一般的な会計処理を例に解説していきます。基礎データとJVの工事内容から、独立会計方式と取込会計方式、それぞれの会計処理を具体的に数字を用いて解説します。決算期は1年間です。

①基礎データ

JV構成会社出資割合
スポンサー会社60%
サブ会社40%

②JVの工事内容

金額
工事契約高12,000千円
工事原価9,000千円

前受金の処理

前受金を受け入れた場合の処理方法をご紹介します。独立会計方式、取込会計方式、それぞれの処理方法は下記の通りです。

独立会計方式

工事に係る前受金4,000千円の受取をした。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金4,000JV未成工事受入金4,000

スポンサー会社、サブ会社ともに仕訳はなし。

 

上記4,000千円の前受金を構成会社へ分配した。

借方科目金額貸方科目金額
スポンサー会社出資金2,400JV現金預金4,000
サブ会社出資金1,600
借方科目金額貸方科目金額
現金預金2,400スポンサー会社未成工事受入金2,400
現金預金1,600サブ会社未成工事受入金1,600

取込会計方式

工事に係る前受金4,000千円の受け取りをした。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金4,000スポンサー会社未成工事受入金2,400
預り金(JV)1,600

サブ会社は仕訳なし。

 

上記4,000千円の前受金をサブ会社に分配した。

借方科目金額貸方科目金額
預り金(JV)1,600スポンサー会社現金預金1,600
預金現金1,600サブ会社未成工事受入金1,600

工事原価の処理

工事原価が発生した場合の処理方法は下記の通りです。ご紹介している2つの会計方式をそれぞれで解説します。

独立会計方式

JVに9,000千円の工事原価が発生し、各構成会社に請求をおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
未成工事支出金9,000JV工事未払金9,000
未成工事支出金5,400スポンサー会社工事未払金5,400
未成工事支出金3,600サブ会社工事未払金3,600

上記の原価、9,000千円のうち7,000千円の支払いを各構成会社が出資した。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金7,000JV出資金(スポンサー会社)4,200
出資金(サブ会社)2,800
借方科目金額貸方科目金額
工事未払金4,200スポンサー会社現金預金4,200
工事未払金2,800サブ会社現金預金2,800

上記の資金により、JVは現金の支払いをおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金7,000JV現金預金7,000

スポンサー会社、サブ会社は仕訳なし。

取込会計方式

9,000千円の工事原価が発生し請求原価の支払いのため、スポンサー会社はサブ会社に請求した。

借方科目金額貸方科目金額
未成工事支出金5,400スポンサー会社工事未払金9,000
立替金(JV)3,600
借方科目金額貸方科目金額
未成工事支出金3,600サブ会社工事未払金3,600

 

上記、9,000千円のうち、7,000千円の支払いをするため、サブ会社が現金で出資した。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金2,800スポンサー会社立替金(JV)2,800
工事未払金2,800サブ会社現金預金2,800

上記の資金によってJVは支払いを現金でおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金7,000スポンサー会社現金預金7,000

 

サブ会社は仕訳なし。

手形支払い

次の例は、手形による支払いの処理方法です。下記になりますので参考にしてください。

独立会計方式

工事原価9,000千円のうち、3,000千円の支払いを各構成会社が手形により出資した。

借方科目金額貸方科目金額
出資手形1,800JV出資手形(スポンサー会社)1,800
出資手形1,200JV出資手形(サブ会社)1,200
借方科目金額貸方科目金額
工事未払金1,800スポンサー会社支払手形1,800
工事未払金1,200サブ会社支払手形1,200

ここで注意したいのは、手形の振出がJVではできないことです。スポンサー会社が手形を用意して、JVの支払いをおこなうことが少なくありません。

 

上記の手形によって支払いをおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金3,000JV出資手形(スポンサー会社)1,800
出資手形(サブ会社)1,200

スポンサー会社、サブ会社は仕訳なし。

 

上記の手形によって決済がおこなわれた。

借方科目金額貸方科目金額
支払手形1,800スポンサー会社現金預金1,800
支払手形1,200サブ会社現金預金1,200

この場合のJVは仕訳なし。

取込会計方式

原価9,000千円のうち、3,000千円をサブ会社が手形で出資した。

借方科目金額貸方科目金額
受取手形1,200スポンサー会社立替金(JV)1,200
工事未払金1,200サブ会社支払手形1,200

独立会計方式と同様、JVでの手形振出がおこなえないため、スポンサー会社が準備することが多くあります。

 

上記の手形によって支払いをおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
工事未払金3,000スポンサー会社支払手形1,800
受取手形1,200

サブ会社は仕訳なし。

 

上記の手形で決済がおこなわれた。

借方科目金額貸方科目金額
支払手形1,800スポンサー会社現金預金1,800
支払手形1,200サブ会社現金預金1,200

完成工事高の計上

工事が完成し引き渡しが終了となったら、完成工事高の計上やJVの決算などをおこないます。完成工事高の処理は下記の方法となります。

独立会計方式

請負工事が完成し、発注者へ引き渡しをした。

借方科目金額貸方科目金額
完成工事原価9,000JV未成工事支出金9,000
未成工事受入金4,000完成工事高12,000
完成工事未収入金8,000

スポンサー会社、サブ会社は仕訳なし。

JV会計の決算をおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
完成工事高12,000JV完成工事原価9,000
スポンサー会社出資金3,000未払分配金8,000
サブ会社出資金2,000
借方科目金額貸方科目金額
未成工事受入金2,400スポンサー会社完成工事高7,200
完成工事未収入金4,800
借方科目金額貸方科目金額
未成工事受入金1,600サブ会社完成工事高4,800
完成工事未収入金3,200

工事請負代金を精算し、各構成会社に残金の入金が分配された。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金8,000JV完成工事未収金8,000
未払分配金8,000現金預金8,000
借方科目金額貸方科目金額
現金預金4,800スポンサー会社完成工事未収入金4,800
現金預金3,200サブ会社完成工事未収入金3,200

※決算が工事施工中の場合は、JVのみ仕訳を作成します。

借方科目金額貸方科目金額
スポンサー会社出資金〇〇〇JV未成工事支出金〇〇〇
サブ会社出資金〇〇〇

取込会計方式

工事が完成し、引き渡しをした。

借方科目金額貸方科目金額
完成工事原価5,400スポンサー会社未成工事支出金5,400
未成工事受入金2,400完成工事高7,200
完成工事未収入金4,800
借方科目金額貸方科目金額
完成工事原価4,800サブ会社未成工事支出金4,800
未成工事受入金1,600完成工事高4,800
完成工事未収入金3,200

JV会計の決算をおこないますが、スポンサー会社、サブ会社の仕訳はありません。

 

工事請負代金の精算、残額が入金されサブ会社に分配をおこなった。

借方科目金額貸方科目金額
現金預金8,000スポンサー会社完成工事未収入金4,800
預り金(JV)3,200
預り金(JV)3,200現金預金3,200
借方科目金額貸方科目金額
現金預金3,200サブ会社完成工事未収入金3,200

※決算が工事施工中の場合ですが、スポンサー会社、サブ会社どちらも仕訳処理の必要はありません。

【まとめ】JVの会計方式は独立会計と取込会計の二つが存在する!会計処理方法を間違えないようにしよう

JV(ジョイントベンチャー)の会計処理についてご紹介しました。JVの会計方式は二つあり、自社がスポンサー会社になるのか、サブ会社になるのかによっても出資比率が異なり、会計処理も違ってきます。

どちらの方式でおこなうか、把握したうえで会計処理方法を間違えないようにしなければなりません。実際に数字を用いて例をご紹介していますので、参考にしてください。

記事内に出てきた未成工事支出金についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。

建設業の未成工事支出金とは?仕訳方法や勘定科目も徹底解説

JV(ジョイントベンチャー)とは?建設業におけるJVのメリット・デメリットも解説!

 

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