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法定福利費は、企業の役員や従業員が快適に勤務していくうえで欠かせない経費の一つです。福利厚生費と混同されがちな法定福利費ですが、企業が福利厚生のために支払う費用のうち、健康保険法や雇用保険法などの法律によって企業に支払いが義務づけられているものをさします。対して福利厚生費は、企業が独自に行う慶弔費や住宅手当などの制度に関する費用を指すので違いを理解しておきましょう。
今回は建設業における法定福利費について、詳細から計算方法まで解説していきます。
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建設業における法定福利費とは?
このように法定福利費は法律で定められており、企業の意思で加入、未加入を決める、または金額を変更することは認められていません。従業員が企業で適切な環境で働き、保証を得るために法定福利費は不可欠な費用なのです。そして、建設業者に対して見積書への法定福利費の記載が義務化されています。
建設業における法定福利費は、具体的にどのようなものが該当するのでしょうか。以下でその詳細と、見積書において明示が義務付けられた背景について説明していきましょう。
法定福利費に含まれる保険料
建設業における法定福利費は主に
・健康保険料…労働者と扶養家族に疾病、負傷などが発生したときに適用される保険
・介護保険料…加齢による心身の変化から必要になる介護に対して適用される保険
・労災保険料…業務上の事故が原因で負傷した際に治療費を支払う保険
・雇用保険料…労働者が失業した際に、失業保険や再就職手当を支給する保険
・厚生年金保険…公的年金制度にかかる保険料
・子ども・子育て拠出金…国や自治体の子育て支援のため徴収されるもの
の5つです。このうち健康保険、介護保険、厚生年金保険は労使折半で支払われます。しかし、雇用保険は業種によって支払い負担の割合が異なり、労災保険と子ども・子育て拠出金に関しては100%事業者負担です。
法定福利費の明示が必要になった理由
法定福利費は、従業員が安全に働く上で不可欠な補償であり企業が負担すべき金額です。実際に建設業においては、常時使用する労働者が5人以上の事業所においては、社会保険の加入が義務付けられています。そして、2013年から下請けの建設業者が元請け業者に見積書を提出する際は、法定福利費を記載することが国土交通省の呼びかけで求められるようになりました。
法定福利費の明記が推進されるようになった背景には、以下の3つの問題や目的がありました。
保険の加入義務
建設業界では長きにわたり、社会保険未加入のまま労働をさせる風習が問題視されていました。怪我のリスクが大きい現場で事故にあっても保証を受けられないだけでなく、将来社会保障が受けられない建設労働者が多く生まれたのです。その結果、就労環境は悪化し、若年層の労働者が定着しない等の問題が発生しました。
しかし、保険未加入だと経費が削減されるため、低価格の入札が可能になるという不公平が生まれるため下請けが加入を渋り、なかなか現状が回復しないという深刻な状態だったのです。
法定福利費込みの見積書提出が開始
このような社会保険未加入の負のスパイラルを打破するために、国土交通省は法定福利費を見積書に記載することを求めました。さらに、建設業許可の新規取得や更新の際に社会保険の加入状況を確認することを定めました。
つまり、法定福利費は削減できる経費ではなく、支払わなければならない原価という扱いをするようになったのです。このような取り組みを通してすべての建設業許可業者が社会保険に加入していることを目指しました。
保険未加入企業への減点措置
建設業では法定福利費の見積書提出の義務化だけではなく、保険未加入の企業へのペナルティも課されるようになりました。現在、経営事項審査において雇用保険、健康保険、厚生年金保険それぞれに加入していなければ各40点の原点になり、全て未加入の場合120点もの減点が行われています。経営事項審査は公共工事の際に受けることが義務付けられており、これによって出された総合評定値通知書によって建設業者のランク付けが行われます。
また、指名競争入札願において保険未加入の場合入札できないケースが多いため、この措置も建設業の社会保険加入への取り組みの追い風となりました。
法定福利費の明示はあくまで任意
法定福利費の見積書への明示は推進されていますが、義務付けられているわけではありません。そのため法定福利費の明示がなかった場合でも、何らかの法的拘束力や罰則があるわけではありません。しかし、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」では、平成29年度以降、適切な保険に未加入の作業員は、特別な場合を除き現場入場を認めないとの取り扱いをするべきだとはっきり明記されています。また「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」においても、加入しなければ法令違反の可能性もあると厳しく言及されています。そのため、可能であれば明示すべき項目であることは間違いないでしょう。
従来の見積書との違い
国土交通省により提示された見積書のひな型では、従来の見積書と比較すると法定福利費の取り扱いがより明確なものになっています。従来の見積書の慣行では、トン単価や平米単価による見積が一般的で、法定福利費の取り扱いは重要視されていませんでした。しかし国土交通省によって新しく提示された見積書では従来の総額による見積高だけではなく、保険料の種類や内訳、料率、対象金額などが明確に記載されるようになったのです。この活用により、社会保険への加入に必要な金額を業者が容易に把握できるようになりました。
建設業における法定福利費の内訳の明示方法
国土交通省の取り組みにより、法定福利費の内訳の記載が推進された見積書が一般的になりつつあります。法定福利費の一般化は労働条件の悪化による若手の人材不足という、建設業界の存続にかかわる問題解決のためにも重要な取り組みです。そのため、政府や建設業団体の意向に従って取り組むべきでしょう。
法定福利費の記載には複雑な計算が必要と考えるかもしれませんが、法令に従い社会保険加入を行っていれば難しい手順なく対応が可能です。明示方法について以下で詳細に解説していきます。
全体の労務費の算出
まずは労務費の総額を算出します。労務費とは一つの工事にかかる人件費を指します。賃金、雑給、従業員賞与手当、法定福利費、退職給付費用の5つから成り立っており、建設業の場合は現場で作業する作業員のみを所要人工数としてカウントします。計算式は「所要人工数×賃金=労務費」という極めてシンプルなものです。例えば、作業員が15人で1日の賃金が15000円であれば、労務費は「15×15000=225,000」となります。
労務費から法定福利費の計算を行う
労務費を換算したら、保険料換算率をかけて法定福利費を割り出しましょう。見積書には雇用保険料、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金の5つの内訳を記載しなければなりません。法定保険料率は都度改正されるだけでなく都道府県によっても異なります。そのため、厚生労働省のHPや協会けんぽのHPで毎回確認する必要があります。また、算出する際は事業者負担分のみに保険料率を掛けるよう注意してください。
エクセルでの自動計算
法定福利費の計算は「労務費×保険料率」という極めてシンプルな式で割り出されます。しかし、それぞれの保険料をアナログに計算するとミスが発生するリスクがあるので、自動算出が推奨されています。まず、Excelの数式による方法を紹介しましょう。関数を利用することで自動計算が可能となりますが、専門的な知識に欠ける人が誤った数式を用いるリスクもあります。見積書のExcelのテンプレートが存在するので、そちらを用いて計算すると良いでしょう。
ITシステムの活用
Excelの人為的ミスや共有の難しさというデメリットをカバーするのが、ITシステムです。見積書の効率的な作成を目指して、インターネット環境さえあればどこでも見積書の作成ができるITシステムが多く開発されています。代表的な例として、2,700以上の工務店での導入実績のあるAnyONEが挙げられます。自動計算だけでなく小目を自動作成する機能も備わっているため、ミスの防止だけでなく作業の効率化にも大きく貢献しているのです。
法定福利費の明示
最後に、算出した法定福利費を見積書に記載します。先ほども述べたようにの事業主負担分を見積書へ記載するのがポイントです。もし事業主負担分以外の法定福利費を含める場合は、その旨を明記し工事の労務費からその金額を除外する必要があります。また、見積書の中の法定福利費は請負金額の内訳に含まれるため課税対象となります。そのため、消費税を計算する際に、材料費や労務費、経費に足す必要があることも忘れてはいけません。
建設業における法定福利費の計算はエクセルで簡単にできるため有効的に活用しよう!
法定福利費の計算は、各項目ごとに税率が変わるため時に面倒に感じるかもしれません。しかし社会保険未加入が問題視されており、その改善のための取組が官民一体となって進められています。法定福利費の見積書記載は、社会問題解決のためにも、競争の公平性を保つためにも今後必然となってくるでしょう。ExcelやITシステムを導入すれば、専門的な知識がなくとも簡単に法定福利費は算出できます。事務作業の効率化のためにも、導入して有効活用していきましょう。
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