防水工事業における建設業許可の要件まとめ!一般建設業と特定建設業の要件の違いには要注意

建設業許可を受ける際には、どの業種であっても必ずクリアしなければならない要件があります。ここでは防水工事業の建設業許可に必要な要件を解説します。

「防水工事業」の定義は?

防水工事業とは、アスファルトやモルタル、シーリング材によって防水を行う業種のことをいいます。土木系でも防水工事を行う場合がありますが、防水工事業は建築系の防水工事のみを指します。防水工事の種類としては、以下の6つが挙げられます。
・アスファルト防水工事
・モルタル防水工事
・シーリング工事
・塗膜防水工事
・シート防水工事
・注入防水工事

防水工事業と「とび・土木・コンクリート工事」の違い

トンネルなどの建設工事を行う際にも防水工事が行われますが、トンネルなど土木系の防水工事は、「とび・土木・コンクリート工事」に分類されます。防水工事業が取扱う工事は、建築系の防水工事のみです。

防水工事業と「左官工事」の違い

外壁の塗装など、防水モルタルを用いた防水工事は、防水工事業あるいは左官工事業のどちらであっても施工できます。

防水工事業の建設業許可要件まとめ

建設業許可の要件は、主に6つあります。
1.経営業務の管理責任者をもつこと
2.適切な社会保険に加入していること
3.誠実性があること
4.欠格要件に当てはまらないこと
5.専任技術者を各営業所に配置していること
6.財産的基礎があること
この中で、5番と6番の要件については、一般建設業の許可か特定建設業の許可かによって、異なります。

経営業務管理責任者に関する要件

建設業許可を取得する要件として、国土交通省のホームページには「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」が建設業の経営に最低でも1人は必要であると記載されています。法人として経営業務管理責任者を選ぶ場合は、常勤役員のうち1人が、個人で経営業務管理責任者を選ぶ場合は、本人または支配人が、以下のいずれかに該当しなければなりません。
1.5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
2.5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験を有する者
3.6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
ちなみに、防水工事業の許可を受けたい場合であっても、ここで必要とされる経験は、防水工事業に限定されるわけではなく、29業種いずれでも構いません。
それぞれが具体的にどのような人物を指しているのか、以下で解説します。

経営業務の管理責任者

1つ目の「5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、法人であれば5年以上の役員経験が、個人であれば個人事業主として5年の経験があれば、この要件を満たします。

経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者

2つ目の「5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験を有する者」とは、法人であれば、役員の次のポジションである執行役員や営業所長、工事部長などを意味します。個人の場合は、事業主を専従者として支える配偶者や子供などに当たります。

経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

3つ目の「6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者」とは、建設工事の資金調達や、下請業者との契約締結、技術者や技能者の配置など、経営業務全般を6年以上経験していることを意味します。

上記いずれにも該当する人がいない場合

上記1~3のいずれにも該当する常勤役員がいない場合、以下のいずれかに該当する役員を1人と、その役員を補佐する人を設置すれば、要件を満たすとみなされます。
【常勤役員の条件】
①建設業で2年以上の役員経験と、建設業で役員等に次ぐ地位の経験が合わせて5年以上あること
②建設業で2年以上の役員経験と、異なる業種での役員等の経験が合わせて5年以上であること
【補佐する人の条件】
許可を受ける会社において、
①5年以上、財務管理の経験がある人
②5年以上、労務管理の経験がある人
③5年以上、運営管理の経験がある人
をそれぞれ配置すること。ただし1人で兼務が可能です。

社会保険の加入に関する要件

令和2年10月の法改正により、社会保険の加入に関する要件が新たに追加されました。健康保険と厚生年金保険については、法人であれば1人社長の場合であっても加入必須であり、個人事業主であれば従業員が5名以上の場合は加入しなければなりません。また、1人でも雇用している場合は、必ず雇用保険に加入する必要があります。

誠実性に関する要件

建設業の営業取引で重要な地位にあるとみなされる、法人の役員や事業主、支店長、株式の大量保有者などが以下の事項に当てはまる場合、不誠実な行為を行う可能性があるとして、建設業許可を受けられない場合があります。
・請負契約締結の際に、詐欺・脅迫・横領を行ったり、工事内容や後期について、請負契約の内容に違反するなどの行為により、免許等の取消処分を受け、その処分の日から5年が経過していない
・暴力団の構成員である
・暴力団により実質的な経営の支配が行われている

欠格要件

法人の役員や事業主本人、支店長などが以下の事項に当てはまる場合、欠格要件に該当するとして、建設業の許可を受けられません。ただし、単なる従業員がこの要件に当てはまったとしても、許可の取得に影響はありません。
・成年被後見人もしくは被保佐人、または破産者で復権していない
・不正が原因で建設業許可を取り消され、その後5年が経過していない
・法律に違反して刑の執行が終わっている、またはその刑の執行を受けなくなってから5年が経過していない

専任技術者の要件(一般建設業の場合)

建設工事の請負から履行までは専門知識が必要となるため、防水工事業に関する資格や経験をもつ専任技術者を、各営業所に配置しなければなりません。ここでは一般建設業の場合の専任技術者の要件について解説します。

実務経験のみで申請する場合

定められた国家資格や学歴等がない場合、防水工事業での実務経験が10年以上ある人であれば、専任技術者として申請することができます。

学歴と実務経験で申請する場合

10年の実務経験がない場合でも、指定学科として定められた学科を履修しており、さらに一定の実務経験があれば、専任技術者として申請することが可能です。防水工事業における指定学科とは、土木工学または建築学です。学歴と実務経験の組み合わせは、以下のとおりです。
・高校を卒業後、5年以上の実務経験がある
・大学を卒業後、3年以上の実務経験がある
・専門学校を卒業後、5年以上の実務経験がある(専修学校を卒業し、専門士または高度専門士を称する場合は、卒業後3年以上の実務経験がある)

特定の国家資格で申請する場合

防水工事業において、一般建設業の専任技術者に必要とされる国家資格は以下のいずれかです。
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(仕上げ)
・職業能力開発促進法の防水施工技能士
(ただし、2級の場合は3年の実務経験も必要)

財産要件(一般建設業の場合)

一般建設業の場合、以下のいずれかを満たせば財産要件を満たします。
・直前の決算書において自己資本(純資産)の額が500万円以上である
・500万円以上の預金残高がある

専任技術者の要件(特定建設業の場合)

次に、特定建設業の場合の専任技術者要件について解説します。特定建設業は下請業者への発注金額が大きいことから、一般建設業よりも専任技術者に求められる要件は厳しくなります。

指導監督的な実務経験で申請する場合

一般建設業の専任技術者要件を満たしていて、さらに元請として税込4,500万円以上の工事について2年以上、指導監督的な実務経験をもつ人は特定建設業の専任技術者として申請が可能です。

特定の国家資格で申請する場合

防水工事業において、特定建設業の専任技術者に必要とされる国家資格は、以下のとおりです。
・1級建築施工管理技士

国土交通大臣の認可を受けた人

建設省告示第128号(平成元年1月30日)に示されている対象者は、大臣特別認定者として専任技術者を申請することができます。この大臣特別認定者とは、指定建設業7業種(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)について、過去に特別認定講習を受け、試験に合格している人のことです。ただし、この特別認定講習は現在行われていないので、基本的には実務経験または国家資格の取得で要件を満たすことになるでしょう。

財産要件(特定建設業の場合)

特定建設業の場合、以下の条件すべてを満たせば、財産要件を満たすことになります。特定建設業は、一般的に多くの下請業者を使って工事を行うため、財務状況が健全である必要があります。そのため、財産に関する要件は一般建設業に比べて厳しく設定されています。
・欠損の額が資本金の20%を超えていない
・流動比率が75%以上である
・資本金が2,000万円以上である
・自己資本が4,000万円以上である

実務経験の証明方法は都道府県によって異なる

専任技術者に求められる実務経験については、どのように証明すればいいのでしょうか。実務経験の証明に必要な工事資料は、申請する行政機関によって異なるため、詳細はそれぞれの行政機関に確認する必要があります。
【東京都の場合】
東京都では、以下のいずれかを、証明する年数分で準備する必要があります。
・工事請負契約書
・工事請書+注文書
・請求書+入金確認資料(法人口座通帳など)
【神奈川県の場合】
神奈川県では、基本的に証明する年数分の法人税確定申告書(確定申告書の事業種目欄で申請業種が記載されていることが条件)にて証明します。しかし確定申告書で証明できない場合については、以下のいずれかを証明する年数分(各年1件以上)準備する必要があります。
・工事請負契約書
・工事請書+注文書
・請求書+入金確認資料(法人口座通帳など)

【まとめ】防水工事業の建設業許可取得を目指すには実務経験や学歴を利用しよう

建設業許可の取得には多くの書類や手続きが必要となります。取得するために必要な要件がどのようなものかということを事前に把握し、要件を満たさない点がないか注意しつつ、取得に向けた手続きを行いましょう。また、実務経験や学歴は取得にむけた重要なポイントとなるため、自分の経歴を建設業許可に生かせることができるか確認することも大切です。