働き方改革推進支援助成金とは?5つのコースや申請手順などを解説

働き方改革推進支援 助成金

昨今では、長時間労働の是正や柔軟な働き方の実現など、労働環境の変化に対応するための「働き方改革関連法」への対応が求められています。中小企業もその例外ではありませんが、適切な対応が遅れている場合も少なくありません。

そんな企業に役立つのが、「働き方改革推進支援助成金」です。この記事では、働き方改革推進支援助成金についての概要や特徴、申請手順などを解説します。ぜひご一読ください。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金とは、中小企業が働き方改革を推進する際に必要な費用の一部を助成する制度です。主な目的は生産性の向上であり、職場環境の改善や有給休暇の取得を促進する取り組みに対して支援が提供されます。

例えば、フレックスタイム制や遠隔勤務システムを導入することで「ワークライフバランス」を改善でき、従業員のストレス軽減や職場満足度の向上が期待できます。これが生産性向上にも貢献するのです。

働き方改革推進支援助成金の5つのコース

働き方改革推進支援助成金には5つのコースがあります。

  • 適用猶予業種等対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 労働時間適正管理推進コース
  • 団体推進コース

1つずつ解説します。

適用猶予業種等対応コース

適用猶予業種等対応コースでは、週休2日制の推進や時間外労働の削減といった環境整備に取り組む中小企業経営者をサポートします。2024年4月1日から、適用猶予業種にも時間外労働の上限規制が適用されることになります。

対象となる事業主

支給の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす中小企業事業主です。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主である
  2. 成果目標1から4の設定に向けた条件を満たしている
  3. 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している
  4. 以下のいずれかに該当する、適用猶予業種である
    建設業
    運送業
    病院等
    砂糖製造業

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)

対象となる取り組み・成果目標

支給対象となる取り組みは、定められた成果目標のうちいずれかを選択し、それを達成することを目指すものです。業種によって選択できる目標が異なります。

建設業が支給対象となるのは、以下の項目です。

成果目標 詳細
月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数を縮減すること 時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間以下に設定する
時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超えて月80時間以下に設定する
全ての対象事業場において、4週における所定休日を1日から4日以上増加させること

上記の成果目標に加えて、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上または5%以上で賃金引き上げを行うことも選択できます。

参考:厚生労働省|令和5年度「働き方改革推進支援助成金」(適用猶予業種等対応コース)(建設業)のご案内

助成金額

助成金額は、対象経費総額の3分の2を乗じた金額となります。ただし、成果目標の上限額と賃金加算額の合計金額のうち、より低い金額が適用されます。

引用:厚生労働省|令和5年度「働き方改革推進支援助成金」(適用猶予業種等対応コース)(建設業)のご案内

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースは、年次有給休暇や時間外労働の削減、特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を対象としています。これにより、労働時間の改善や従業員の休息とワークライフバランスの向上を支援し、企業の生産性と従業員の満足度を向上させることが期待されます。

対象となる事業主

支給の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす中小企業事業主です。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主である
  2. 成果目標1から3の設定に向けた条件を満たしている
  3. 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

対象となる取り組み・成果目標

支給の対象となる取り組みは、以下の1から3の成果目標の中から選択し、それを達成することを目指します。

成果目標1 時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、または月60時間から80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行う
成果目標2 年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する
成果目標3 時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ特別休暇の規定を新たに導入する

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

助成金額

助成額は、通常、対象経費総額の3分の2を乗じた金額となります。ただし、成果目標の上限額と賃金加算額の合計金額のうち、より低い金額が適用されます。

成果目標1 事業実施前の時間外労働時間数等が、月80時間を超えている場合

①時間外労働時間数等を月60時間以下に:200万円

②時間外労働時間数等を、月60時間から80時間以下に:100万円

事業実施前の時間外労働時間数等が、月60時間を超えている場合

①時間外労働時間数等を月60時間以下に設定:150万円

成果目標2 最大25万円
成果目標3 最大25万円

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を確保する制度です。働く方の生活時間や睡眠時間を守り、健康保持や過重労働の防止を目指し、勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小企業事業主を支援します。

対象となる事業主

対象となる事業主は、以下の条件をすべて満たす中小企業事業主です。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主
  2. 勤務間インターバルを導入していない
  3. 休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場のうち、対象となる労働者が半数以下
  4. 休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している
  5. 36協定が締結・届出されている
  6. 過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態がある
  7. 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

対象となる取り組み・成果目標

下表のいずれか1つ以上を実施する必要があります。

成果目標 休息時間数が9~11時間
11時間以上の勤務間インターバルを導入して定着を図る
詳細 勤務間インターバルの新規導入
勤務間インターバルの適用範囲の拡大
勤務間インターバルの時間延長

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

助成金額

助成額は、対象経費総額の3分の2を乗じた金額となります。ただし、上限額は以下の通りです。

新規導入 休息時間数9時間以上11時間未満:80万円
休息時間数11時間以上:100万円
拡大や延長 休息時間数9時間以上11時間未満:40万円
休息時間数11時間以上:50万円

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

労働時間適正管理推進コース

労働時間適正管理推進コースは、生産性向上と労務・労働時間の適正管理を目指す中小企業を支援する取り組みです。

2020年4月からは、労働管理書類の保存期間が5年(当面は3年)に延長されました。労務・労働時間の適正管理を推進するための環境整備に取り組む中小企業事業主を対象としています。

対象となる事業主

対象となるのは、以下の条件をすべて満たす中小企業事業主です。

  1. 労働者災害補償保険の適用事業主であること。
  2. 全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していないこと。
  3. 全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則等に規定されていないこと。
  4. 全ての対象事業場において、交付申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
  5. 全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

助成金額

取り組みの実施に要した対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額が助成されます。しかし、助成額が上限額を超える場合は100万円が上限です。

また、賃金額の引き上げを成果目標に加えた場合、指定した労働者の賃金引き上げ数に応じて、上記の上限額に加算されます。ただし、引き上げ人数は最大で30人までです。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

団体推進コース

団体推進コースは、事業者に直接助成金を提供するのではなく、様々な事業者が加盟する団体(商工会議所や商工会など)を対象とした支援プログラムです。

職場環境改善に取り組む事業者が所属する団体に助成金が支給されます。具体的には、労働条件の改善のために時間外労働の削減や賃金引き上げなどの取り組みを行う事業主団体に助成金が交付されます。

対象となる事業主

助成の対象となる企業は、1年以上の活動実績がある事業主団体または共同事業主です。事業主団体は3者以上で構成され、共同事業主は10者以上で構成されている必要があります。

共同事業主は、全ての事業主が合意した協定書を締結している必要があります。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

対象となる取り組み・成果目標

休息時間数が9時間以上11時間未満、または11時間以上の勤務間インターバルを導入して、定着を図ることを目標としています。

具体的には、以下のいずれかの取組を行う必要があります。

  • 勤務間インターバルの新規導入
  • 勤務間インターバルの適用範囲の拡大
  • 勤務間インターバルの時間延長

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

助成金額

支給額は、以下のいずれか低い方の額となります。

  • 対象経費の合計額
  • 総事業費から収入額を控除した額、または上限額500万円

ただし、複数の都道府県で構成される事業主団体等(構成事業主が10以上)に該当する場合は、上限額は1,000万円となります。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

全コース共通項目

すべての働き方改革推進支援助成金の共通項目は、事業の実施期間が交付決定の日から2024年1月31日までです。団体推進コースのみが2024年2月16日までとなります。以下は、全コースに該当するポイントです。

  • 労務管理担当者および労働者向けの研修と啓発活動の実施
  • 就業規則や労使協定の作成または変更
  • 人材確保に向けた取り組みの実施
  • 労務管理に関するソフトウェアや機器の導入または更新
  • 労働能率向上に資する設備や機器の導入または更新

「団体推進コース」では、人材確保に関連する取り組みが追加されます。これらの条件に一つでも該当しない場合、助成金の受給ができなくなるため、事業主はこれらの要件を確認する必要があります。

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働き方改革推進支援助成金の申請手順

働き方改革推進支援助成金の申請手順は3ステップです。

まずは、交付申請書を最寄りの労働局に提出します。必要書類には交付申請書や事業実施計画、36協定届、就業規則の写し、年次有給休暇管理簿の写し、賃金台帳の写しなどが含まれます。提出方法は直接届け出るか郵送のいずれかです。

次に提出後に労働局が受付・審査を行い、決定するかどうか検討します。審査期間はおおよそ1か月で、審査を経て支給が決まると助成金を受け取れます。

建設業での36協定の書き方についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業 36協定建設業の36協定の書き方は?特別条項や記載例など書き方を徹底解説!

働き方改革推進支援助成金の注意点

働き方改革推進支援助成金を申請する際には、助成金の支給条件や対象事業者に求められる条件を満たしているか確認しましょう。また、締切日前に早めに提出することが重要です。

申請数が多い場合には予告なく締め切られる可能性もあるため、早めに申請する必要があります。助成金の交付決定から支給までにはタイムラグがあり、取り組みにかかる費用は事業者が先に負担することになるため、事前に資金調達を検討することも重要です。

手間をかけずに助成金申請するなら

「働き方改革推進支援助成金」などの助成金の申請を行う場合は一度社労士に相談すると良いでしょう。社労士に相談するメリットは以下です。

  • 条件クリアするための助言がもらえる
  • 自社に適したそのほかの助成金を教えてもらえる
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【まとめ】働き方改革推進支援助成金を活用しより働きやすい職場づくりに取り組もう

労働環境の改善は、従業員の就労意欲を高める効果があります。働きやすい環境を整えることで、従業員の満足度が向上し、それが企業全体の業績向上につながります。

特に中小企業においては、従業員一人ひとりの生産性向上が成長に不可欠な要素です。働き方改革推進支援助成金を活用し、より働きやすい職場づくりに取り組みましょう。

【2024年】建設業でおすすめの助成金・補助金一覧と申請時のポイントについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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