建設業における日給月給制で有給休暇はとれる?

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社会保険労務士 佐藤弘樹
社会保険労務士 佐藤弘樹

平成28年に社会保険労務士試験に合格。経理・財務や人事・労務といったバックオフィスシステムを手掛ける会社で16年間の営業経験を積む。その後、北海道札幌市にて「社会保険労務士事務所みらい経営アシスト」を開業し、オンラインでの人事・労務管理に関する相談サービス『どこでも社労士』を提供。「働くすべての人が、豊かで幸せな毎日を送れるように」というミッションを掲げ、企業の労務管理をサポート。豊富な実務経験と専門知識を活かし、クライアント企業の成長に貢献。プライベートでは双子の娘を持つパパの顔も覗かせる。北海道社会保険労務士会会員登録番号:第01180056号。『どこでも社労士』:https://www.dokodemo-sr.com/

建設業では日給月給制を採用している会社もあります。また現場によって工期が異なり、作業内容の変更などから有給休暇を取りづらい場合も珍しくありません。しかし、日給月給制や有給休暇についてあまり深く考えたことがない人もいるのではないでしょうか。

今回は、そういった建設業の日給と月給の制度や、有給休暇について紹介します。日給月給制のメリットとデメリットや、有給休暇に関する実情などもあわせて解説します。社員の待遇を検討するための知識にもなるため、ぜひ最後までご覧ください。

建設業の日給月給制とは?

建設業で採用されることもある日給月給制とは、1日あたりの給与があらかじめ定められている制度です。定められた日給に毎月の勤務日数をかけた金額が、給与として決まった日に支払われます。

建設業では現場監督などの管理者は月給制ですが、作業員や職人は日給月給制を取ることが少なくありません。月給制でも日給月給制でも各自治体で定められている最低賃金を下回ってはいけないため、最低賃金には常に注意しなければいけません。

日給月給制と月給制の違いは?

日給月給制と月給制の違いは、一言でいうと、給与の金額が安定しているかどうかです。日給月給制は、給与を月額で決めておき、欠勤した場合に、欠勤した日数分の給与を月額から減額するというもの。

月給制は同じく、給与が月単位に決められていて、月間の労働日数に関係なく支払われるものをいいます(通常の月給制の場合には、欠勤の有無によって給与が減額されることはありません)。つまり、日給月給制は、仕事を休むとその分だけ給与が減るため、毎月一定の金額から上下するものとイメージしてください。

日給月給制でも有給休暇は取得できる?

有給休暇は、労働基準法で定められた休暇の付与制度です。定められた条件を満たした従業員全員に対して、会社は付与しなければいけません。定められた条件とは、半年以上継続して勤務し、その期間中の出勤率が8割以上であることです。

有給休暇は、継続して勤務している年数が増えるほど付与日数も増えます。有給休暇は毎年付与され、1年は繰越可能です。しかし、有効期限は2年のため、それ以上は繰越できません。

また、有給休暇は雇用形態に関わらず付与する義務が会社にあります。

建設業の日給月給制のメリット

ここでは、建設業における日給月給制のメリットを解説します。日給月給制では、通常の月給制度と同様に、残業と休日出勤には割増賃金を支払わなければいけません。そのため、休日出勤や残業などは給与が増えるため、従業員のモチベーション向上につながります。

また、日給月給制は給与の基準が明確なため、毎月の給与の概ねの金額を従業員が把握しやすい点もメリットです。毎月の収入をある程度把握できれば、安心感を得られるため、従業員が生活に不安を抱くこともありません。

建設業の日給月給制のデメリット

次に、建設業における日給月給制のデメリットを解説します。日給月給制の最大のデメリットは、出勤日数が減ると給与が減少することです。日給月給制は出勤日数と給与が連動しているため、欠勤すると給与が減少します。

病気や怪我が理由で欠勤する場合でも、その分給与が減少するため、日給月給制では欠勤できないというプレッシャーを感じる従業員もいるかもしれません。

有給休暇に関する基礎知識

ここまでは、日給月給制を中心に紹介してきましたが、ここからは有給休暇の基礎知識を解説します。次の3つの点で有給休暇について詳しく解説します。

  • 有給休暇の期限
  • 有給休暇は買取も可能!
  • 有給を取ると給料は減るって本当?

それぞれの内容を把握し、有給休暇の適正な付与と利用について検討しましょう

有給休暇の期限

先ほども少し解説しましたが、有給休暇には期限があります。付与された日から2年間、有給休暇を取得可能です。しかし、2年を過ぎると付与された有給休暇は消滅するため、取得できなくなります。

ただし、有給休暇は勤務を継続すれば新たに付与されます。具体的には1年ごとに新しく付与されるため、昨年付与された未取得の有給休暇と、今年新たに付与される有給休暇の日数の期限が混在することも珍しくありません。有給休暇が混在すると、古い分から消滅すると考える人もいます。しかし、法律的に定められてはいないため、各社の裁量となります。

有給休暇は買取は原則禁止!

会社が従業員の有給休暇を買取るというのは、原則として禁止されています。ただし、例外的に以下の3つの場合に限り、有給の買取りが認められています。

  1. 法律で定められた日数を上回って付与した有給休暇
  2. 退職時に残っている有給休暇
  3. 時効で消滅した有給休暇

①:労働基準法で定められた日数より多く付与した分の有給休暇に関しては、買取りを行っても問題ありません。

②:退職する場合は以後有給を取得することができないため、買取りが認められています。

③:有給は2年間有効です。これを過ぎてしまった場合は取得することができないため、従業員の不利益になることはありませんので、会社が買取ることができます。

なお、買取り額については、特に法的な決まりはありませんので、就業規則等で会社が自由に定めることができます。自社に合ったルールをご検討いただければと思います。

有給を取ると給料は減るって本当?

有給休暇を取得すると、給与が減少すると考えている人もいますが、そういったことはありません。有給休暇は国が認めた制度であり、有給休暇を取得した場合に給与を減らすことはできません。これは日給月給制とは関係なく、月給制でも同一です。

有給休暇を取得しても欠勤扱いにはなりません。もし、欠勤扱いをすれば違法となる可能性があるため、適切に有給休暇として処理しましょう。違法な行為が行われていると疑われる場合は、労働基準監督署による調査などが行われることもあるため、有給休暇の扱いには十分注意しましょう。

建設業の有給休暇の取得状況

ここからは、建設業界の有給休暇の取得状況を解説します。有給休暇は会社に雇用されている人の権利ですが、2022年の全産業で働いている人の取得率は62.1%、日数は1年間で平均10.9日です。建設業では57.5%、10.3日と他の産業に比べてやや低くなっています。

(出典:令和5年就労条件総合調査の概況. 厚生労働省,(参照2024-7-04))

なぜこういった状況になっているのか、次の4つのポイントから解説しますのでみていきましょう。

  • 約50%が「有給休暇を全く取れない」という実態も
  • 建設業で有給休暇を進めるための施策
  • 若手人材の確保・育成
  • 業務効率化

約50%が「有給休暇を全く取れない」という実態も

先ほど、建設業における有給休暇の取得率は57.5%で、日数は10.3日と解説しました。しかし現場で働く作業員に限定すると、結果は異なります。現場仕事を行う作業員に有給休暇の取得率についてアンケートを行うと、4割以上の人が全く取れないという結果になりました。

なぜこういった事態になっているかというと、現場の予定を会社がどんどん組んでしまうためです。1つの現場が終わってもすぐに次の現場が入るため、有給休暇を取得できない人も少なくありません。そのため、現場の人が有給休暇を取得するためには、人員に余裕がなければ困難というのが現状です。

建設業で有給休暇を進めるための施策

ここからは、建設業で有給休暇を進めるための施策を解説します。建設業でも特に現場仕事をする人は、有給休暇の取得率が非常に低いことが分かりました。人員の不足や多忙などは従業員では解決の手立てがない問題のため、経営者が率先して解決に動かなければいけません。

しかし、どのように解決すればいいか分からない経営者の方もいるのではないでしょうか。そこで、次の2つのポイントを参考に有給休暇を進めるための施策に取り組んでみてください。

  • 若手人材の確保・育成
  • 業務効率化

若手人材の確保・育成

人員の不足という最大の問題を解決するためには、若手人材を確保し育成するしかありません。元々建設業では人材不足が叫ばれて久しく、高齢化に伴い、若手の育成は急務です。建設業界全体では既に若手の人材確保に努めています。

しかし、業界にだけ人材確保を任せるのではなく、それぞれの会社でも若い人が働きたくなる工夫に取り組まなければいけません。若手人材の確保は有給休暇の取得促進以外にも、会社の土台を安定させるためには避けては通れない道です。将来的な事業継続のためにも、若手人材に取り組み、有給休暇の取得率向上にもつなげましょう。

業務効率化

若手人材の確保と育成以外にも、業務を効率化することで、有給休暇の取得率の向上を図る会社もあります。中でも注目されているのがITを利用した機器の導入です。たとえば、ITをつかった情報共有制度を構築することで、最新情報のやり取りがスムーズになります。

また、近年では遠方の現場で使用される重機を、建設会社から遠隔操作で操縦するシステムを開発している会社もあります。有給休暇の取得率向上のため、積極的にこうした技術を取り入れ、業務の効率化に取り組んでみましょう。

建設業では日給月給制から月給制へ移行が進められている

日給月給制を採用することも多い建設業ですが、近年では完全に月給制へ移行する会社も増えています。なぜなら、日給月給制では作業員を確保できないからです。高齢化などにより職人や作業員が減少している建設業界では、従業員の確保が急務です。そのため、毎月の給与が安定する月給制に移行する企業も増えています。

ただし、月給制の場合、毎月の給与が経営を圧迫することがあります。そのため、増加する給与分をどのように補うか経営者は検討しなければいけません。

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【まとめ】建設業では日給月給制から月給制へ。有給休暇取得率の低さも課題

近年では、建設業界全体で人材不足解消のために日給月給制から月給制に移行している会社も増えています。また、有給休暇を取得しやすいように若手の育成や業務の効率化といった取り組みも盛んに行われています。

労働人口が減少し続けている日本では、どの業界でも人材確保が急務です。建設業界で若手人材を確保するためには、有給休暇を取得しやすい環境の整備や、安定した給与体系への移行が必須事項です。今回紹介した内容を参考に、給与体系や有給休暇について検討してみてください。

建設業界で多い日給月給制についてはこちらの記事でも解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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