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建設業の現場では、労働災害を防止して働く人の安全と健康を守るため、安全管理と衛生管理が非常に重要となります。しかし、下請業者は元請業者の指示に従わなければならず、独自の判断で安全衛生対策を行うことが難しいのが実情です。そこで、下請業者が安全衛生に関する事項を遵守することを誓約する「安全衛生誓約書」の提出が求められます。
この記事では、安全衛生誓約書の意義や法的効力、具体的な書き方と記入例について詳しく解説します。安全衛生誓約書の重要性を理解して適切に作成・運用することで、建設現場の安全衛生レベルの向上につなげましょう。
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安全衛生誓約書とは
安全衛生誓約書とは、工事の下請業者が元請業者に提出する書類の一つです。
下請業者が請け負った工事を施工するにあたり、元請業者の安全管理・衛生管理に関する指示に従って協力することを誓約する内容となっています。この誓約書の目的は、下請業者に安全衛生管理の重要性を再認識してもらい、元請業者と協力して労働災害の防止に努めてもらうことです。
建設現場での事故は、一人の怪我や死亡にとどまらず、工期の遅延や費用の増大、企業の信用失墜といった多大な損失につながります。安全衛生誓約書を取り交わすことで、元請業者と下請業者が一体となって安全衛生管理に取り組む体制を築くことができるのです。
誓約書が持つ法的効力
誓約書には、誓約する人の一方的な意思表示が記載されるのが一般的です。それでも契約書と同様の法的効力を持ちます。つまり、誓約書を提出した下請業者は、記載された内容を守る義務を負うことになります。
もし誓約内容に違反した場合は、債務不履行による損害賠償責任を問われる可能性があります。ただし、誓約内容が公序良俗に反する場合は、たとえ誓約書に署名・捺印していても、法的効力は認められません。
公序良俗に反するとは、社会の一般常識から見て著しく道徳に反したり、あまりにも不公正であったりする内容を指します。したがって、元請業者が下請業者に無理な内容を誓約させるようなことがあってはなりません。
また、安全衛生誓約書は、元請業者と下請業者の間で取り交わされるものですが、第三者(たとえば労働基準監督署など)に対しても一定の効力を持ちます。万が一、労働災害が発生した場合、安全衛生誓約書の内容が適切であったかどうかが、責任の所在を判断する材料の一つになることがあります。
決まったフォーマットはない
安全衛生誓約書の様式は、建設業界の標準書式である全建統一様式に含まれていません。そのため、元請業者である各社が独自のフォーマットを作成しているのが実情です。
書式や項目は元請業者によって異なり、中には下請業者にとって不利な内容が含まれているケースもあります。例えば、元請業者の指示に絶対服従することや事故が発生した場合の損害賠償責任を全面的に下請業者が負うことなどを誓約させる内容が盛り込まれていることもあります。
このような内容は、下請業者に一方的に不利益を強いるものであり、適切とは言えません。下請業者としては、誓約書の内容をよく確認した上で提出する必要があります。
内容に疑問点や不安点がある場合は、元請業者に確認し、必要であれば修正を求めましょう。安全衛生誓約書は、あくまでも元請業者と下請業者が協力して安全衛生管理を進めるためのツールです。一方的に下請業者に責任を押し付けるような内容であってはなりません。
ただし、安全衛生誓約書の内容があまりにも簡素すぎるのも問題です。現場の実情に合わせて、必要十分な項目を盛り込む必要があります。元請業者と下請業者が十分に協議し、適切な内容の誓約書を作成することが重要といえるでしょう。
安全衛生誓約書の書き方と記入例
それでは、安全衛生誓約書の具体的な書き方と記入例を見ていきましょう。これらを参考にした上で、自社の状況に合った誓約書を作成してください。
安全衛生誓約書の書き方
安全衛生誓約書には、一般的に以下の内容を記載します。
- 作成日
- 事業所の名称
- 会社名
- 所長名
- 所在地
- 会社名
- 代表者
- 現場代理人
- 安全衛生責任者
- 雇用管理責任者
作成日
誓約書を作成した日付を記入します。年月日を正確に記載しましょう。
事業所の名称
工事現場の名称を記入します。正式名称を正確に記載する必要があります。
会社名
元請会社の会社名を記入します。正式な社名を記載しましょう。
所長名
工事の所長名を記入します。所長の氏名を正確に記載する必要があります。
所在地
下請会社の所在地を記入します。都道府県から詳細な住所まで正確に記載しましょう。
会社名
下請会社の会社名を記入します。元請会社と区別するため、下請会社の正式な社名を記載する必要があります。
代表者
下請会社の代表者名を記入します。代表取締役など、正式な役職名と氏名を記載しましょう。
現場代理人
下請会社の現場代理人の氏名を記入します。現場の責任者として、元請業者との連絡・調整の窓口となる人物の氏名を記載する必要があります。
安全衛生責任者
下請会社の安全衛生責任者の氏名を記入します。現場の安全衛生管理の責任者として、適切な人選が求められます。
雇用管理責任者
下請会社の雇用管理責任者の氏名を記入します。労務管理の責任者として、適切な人選が求められます。
安全衛生誓約書の記入例
安全衛生誓約書の記入例として、誓約事項は大きく以下の3つに分類されます。
- 労務管理について
- 安全管理について
- 衛生管理について
具体的な誓約事項を盛り込むことで、下請業者の安全衛生管理に対する意識を高め、元請業者との連携を強化することができます。ただし、あくまでも例示であり、現場の実情に合わせて、適切な内容を盛り込む必要があります。
労務管理について
労務管理に関しては、以下のような事項を誓約するのが一般的です。
- 関連法令に基づく関係書類を整備して事業場に備え付けること
- 業務上災害が発生した場合は遅滞なく法に定められた手続きをとること
- 従業員の福利厚生向上のため、社会保険の加入や建設業退職金共済制度の加入促進を図ること
これらの項目は、労働基準法や労働安全衛生法などの関連法令を遵守し、適切な労務管理を行うことを約束するものです。
下請業者はこれらの誓約事項を確実に実行し、元請業者に報告する義務を負います。
安全管理について
安全管理に関しては、以下のような事項を誓約するのが一般的です。
- 労働基準法、労働安全衛生法等に基づいた各関係責任者を選任し、管理体制を確立すること
- 免許、技能講習などの資格を要する業務には必ず有資格者をつかせること
- 持込機械、器具、車両は法令で定められた構造規格を保持し、安全を確認したうえで使用すること
これらの項目は、労働災害を防止するために必要な安全管理体制を整備し、適切な人員配置や設備を使用することを約束するものです。
下請業者は、これらの誓約事項を確実に実行し、安全管理の PDCAサイクルを回していく必要があります。
衛生管理について
衛生管理に関しては、以下のような事項を誓約するのが一般的です。
- 健康診断は法や規則で定められた種類、頻度、検査項目を確実に実行すること
- 健康診断の結果、異常の所見があると診断された者に対して就業上の措置を確実に行うこと
これらの項目は、労働者の健康を守るために必要な衛生管理を適切に行うことを約束するものです。
下請業者はこれらの誓約事項を確実に実行し、元請業者に報告する義務を負います。
安全書類とは?建設現場での役割や種類・作成するメリットも解説
【まとめ】安全衛生誓約書の書き方をよく理解し工事を安全に進めよう
安全衛生誓約書は、下請業者が元請業者の安全衛生管理に協力することを約束する重要な書類です。適切な内容の誓約書を提出し、その内容を遵守することが工事現場の安全と衛生を守ることにつながります。
元請業者側は、下請業者に無理な内容を強要するのではなく、協力して現場の安全衛生レベルを高めていくことが大切です。一方、下請業者側は、安全衛生誓約書の内容をよく理解したうえで提出し、誓約した事項を確実に実行していくことが求められます。
安全衛生誓約書を形骸化させることなく、元請・下請が一丸となって取り組むことで、建設業の労働災害の撲滅につなげていきましょう。そのためには、安全衛生誓約書の意義や重要性を関係者全員が再認識し、安全衛生管理の PDCAサイクルを回していくことが不可欠です。
建設業界のさらなる発展のために、安全で健康的な職場環境を整備していくことが、今後ますます重要になってくるでしょう。安全衛生誓約書を有効に活用し、元請業者と下請業者が一体となって安全衛生管理に取り組んでいきましょう。
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