工務店経営者の年収相場は？決定する要因や上げる方法などを解説

「工務店を経営しているけれど、自分の年収は業界の相場と比べてどうなのだろう？」
「これから工務店を開業するにあたり、どれくらいの年収を見込めるのだろう？」
「現在の年収をもっと上げるためには何をすべきだろう？」

このような疑問や悩みを持つ工務店経営者や、これから独立を考えている方は少なくないでしょう。工務店経営者の年収は地域差や経営規模、経営年数などによって大きく異なります。また年収を決定する要因は複雑で、単純に「このくらい」と言い切れるものではありません。

今回は工務店経営者の年収相場や年収を決定する要因、そして年収アップのための具体的な方法について詳しく解説します。この記事を参考にご自身の経営状況を見直し、より安定した収入を得るためのヒントにしていただければ幸いです。

工務店経営者の年収相場

工務店経営において社長や経営者の適切な年収設定は事業の持続可能性に直結する重要な課題です。ここでは中小企業の平均年収、経営年数による平均年収、会社規模による平均年収の3つの視点から解説します。

中小企業の平均年収

工務店経営者の年収は会社の資本金規模によって大きく変動します。国税庁の調査によると、資本金2,000万円未満の中小企業では、経営者の平均年収が約600万円台、資本金が2,000万円を超えると800万円台後半に上昇し、5,000万円以上になると1,000万円を超える傾向があるようです。

工務店に特化すると全国平均で約600万円程度となっており、都市部では700万円前後、地方では500万円前後と地域差があります。多くの工務店は建設業許可取得のため500〜1,000万円未満の資本金設定が一般的であることから、中小規模工務店の経営者年収は600万円前後と考えられます。

経営年数による平均年収

工務店経営者の年収は経営年数に比例して上昇する傾向があります。経営初期は事業基盤の構築や設備投資などで利益が限られ、年収は400万円台から500万円台程度にとどまることが一般的です。

経営5年目頃になると顧客基盤の拡大や信頼関係の構築により700万円から800万円程度に上昇します。さらに10年以上経営を続けると、ノウハウの蓄積や安定した受注により1,000万円を超える経営者も少なくありません。

これらの数値は業界の平均的な傾向であり実際の年収は経営手腕や地域性、事業規模などによって大きく変動します。

会社の規模による平均年収

工務店経営者の年収は会社の規模に比例して増加する傾向があります。従業員数1～5人の小規模工務店では経営者自身が現場監督も兼務することが多く、平均年収は400～600万円程度となっています。

規模が拡大し従業員が6～10人になると年収は700～900万円程度に上昇し、従業員11人以上の中規模工務店では経営者の年収が1,000万円を超えるケースも少なくありません。売上高も同様で、年商が増加するほど経営者の取り分も増える傾向にあります。

この数字はあくまで目安で、経営者の手腕や地域性、業界環境などの要因によって実際の年収は大きく変動します。

工務店経営者の年収が決定する要因

工務店経営者の年収を決めるときの主な要因には経営成績、税金、従業員給与があげられます。ここではこの3つの要因を詳しく紹介します。

経営成績

工務店経営者の年収を左右する最も重要な要素の1つが会社の業績です。売上や利益が右肩上がりの好調な経営状態であれば、経営者自身の報酬を増額することは自然な流れといえるでしょう。多くの工務店では業績が順調な時期に社長報酬を見直す傾向があります。

一方で、業績不振時に経営者だけが高い給与を得ていると、従業員の不満を招きかねません。特に社員給与が低水準にとどまる中で経営者報酬だけが突出している状況は避けるべきです。

好業績時であれば適切な報酬増額は理解を得やすいものの、利益の一部を人材確保や社員還元に充てることも、長期的な経営安定には不可欠な視点です。

税金

工務店経営者の報酬決定において税金対策は重要な検討事項です。役員報酬には所得税、住民税、社会保険料が課され、会社利益には法人税がかかります。報酬を高く設定すると個人の税負担が増加し、低く抑えると法人税負担が大きくなるためバランスが重要です。

年間所得が800万円を超えると法人税率は約23%となり、所得税の累進課税と比較して検討する必要があります。適切な報酬設定は会社の財務状況によって異なるため、持続可能な経営と税務リスク管理の両立を目指して税理士などの専門家に相談することが推奨されます。

従業員の給与

従業員の給与とのバランスも工務店経営者の年収を決定する上で重要な要素です。社長の役員報酬が従業員の給与と比較して極端に高い場合、社内に不満が生じやすくなります。一般的に、社長報酬は従業員の平均給与の3～5倍程度が適正とされています。

会社の付加価値をどう分配するかという視点を持ち、役員報酬と社員給与の総額バランスを考慮することで従業員のモチベーション維持につながります。

従業員給与を過度に高く設定すると経営が圧迫される恐れもあるため、会社の業績や将来性を踏まえた適切な配分が求められます。長期的な企業成長と人材確保のためにも公平感のある給与体系の構築が不可欠です。

工務店の従業員の年収相場

工務店の従業員の年収相場は建設業界全体の傾向から見ると、男性が約450万円前後、女性が約350万円前後、総合では約420万円程度となっています。建設業における正社員の平均年収は約500万円台という調査結果もあります。

実際の年収は企業の業績や規模によって大きく異なり、中小規模の工務店では男性が500万円台、女性が360万円台程度の事例があります。職種や経験によっても差がありますが、未経験の大工でも月給20万円以上が一般的です。

ベテラン大工の月給は40万円を超え、棟梁クラスになると年収800万円程度になることもあります。近年は人材不足を背景に、日給制から月給制への移行など待遇改善の動きが業界全体で進んでいます。

工務店経営者の年収を決定する際の注意点

工務店経営者が役員報酬を決める際には主に「税務対策」と「社員の人件費とのバランス」の2つが重要です。税務面では法人税を抑えるために役員報酬を調整できますが、報酬を増やすと個人の所得税負担が増えるため、総合的な税負担を考慮する必要があります。この点は税理士との相談が不可欠です。

また経営者の報酬と従業員給与のバランスも慎重に検討すべきです。報酬が従業員と比べて極端に高いと不満が生じる一方、従業員給与を上げすぎると経営が圧迫されます。

役員報酬は毎月同額支給が原則で設立から3ヶ月以内に決定し、変更は事業年度開始から3ヶ月間のみ可能です。何より「経営者としての品格」が重要で、従業員や顧客からの信頼を得られる経営者であれば適切な報酬を得ることができるでしょう。

工務店経営者の年収を上げる方法

工務店経営者の年収をあげるためには、会社の業績を上げることが近道の一つです。ここでは顧客満足度の向上、生産性向上、事業拡大の3つの視点から業績向上、工務店経営者の年収増加の方法を解説します。

サービスや品質を向上させる

工務店経営において年収を向上させる重要な鍵の一つは顧客満足度の向上です。満足度の高い顧客はリピーターとなる可能性が高いです。さらにその顧客からの口コミによる新規顧客獲得にもつながるため、結果的に売上と利益の増加をもたらします。

顧客満足度を高めるには顧客の期待を超える高品質な住宅提供が基本となります。さらに納品後のアフターサービスを充実させることで、長期的な信頼関係を構築し、顧客に安心感を与えることが重要です。また、施工中の丁寧な打ち合わせや進捗報告を徹底し、顧客の不安を解消することも欠かせません。

専門家としての知識を活かした顧客の疑問や相談への丁寧な対応も信頼獲得の重要な要素です。

生産性を向上させる

効率的な経営は工務店経営者の年収向上に不可欠です。限られた経営資源を最大限に活用し、より大きな成果を生み出すことで利益率を高められます。

従業員のスキルアップや多能工化を推進することで一人ひとりの能力を最大限に引き出し、慢性的な人手不足を解消できます。また材料や器具の在庫管理を適切に行い、調達ルートを最適化することでコスト削減が可能です。

財務面では適切な資金計画を立て、投資や借入を計画的に行うことで経営の安定化を図りましょう。資金繰り表を定期的に見直して費用対効果を常に把握することが重要です。

さらにITツールやデジタル技術を活用して業務プロセスを効率化することも有効です。顧客管理システムや施工管理システムの導入により情報共有の迅速化や業務の標準化が進み、結果として経営者の年収向上につながります。

事業を拡大する

工務店経営者の年収を大きく向上させるには新規事業の開拓が効果的です。住宅の新築だけでなくリフォームやリノベーション事業に参入することで、収益源を多様化できます。

既存住宅の改修ニーズに応えるリフォーム事業や中古住宅に新たな価値を付加するリノベーション事業は、新たな顧客層を開拓する機会となります。

環境意識の高まりを背景に、自然素材や省エネ設計を活用したエコハウス建築も需要が増加しています。高齢者向け住宅の提供や不動産仲介業への展開も収益機会を増やす選択肢です。

新規事業はリスクも伴いますが、市場調査と綿密な事業計画の策定により年収向上に大きく貢献する可能性があります。

工務店経営者の年収を上げる際の注意点

工務店経営者の年収をあげる際には、経費管理、工事価格の設定、売上拡大と経費削減という3つの観点が重要です。それぞれを詳しく解説していきます。

経費は適切に管理する

工務店経営において人件費や材料費、広告費は主要な経費であり適切に管理することが年収向上の鍵となります。人件費については労働力の有効活用が重要で、スキルアップや多能工化、業務効率化により一人ひとりの能力を最大限に引き出すことが求められます。

材料費は品質維持に必要ですが、適切な在庫管理や調達ルートの最適化で無駄を省くことが可能です。広告費は新規顧客獲得やブランドイメージ向上のための投資であり、効果的な広告戦略の立案が重要です。

Web集客も有効な手段となり、社内運用も検討できます。経費を適切に管理し無駄を削減することで利益を確保し、経営者の年収向上につなげることが可能です。

工事価格は適切に設定する

工事価格の設定は工務店経営の収益性を左右する重要な要素です。顧客満足度と利益確保のバランスが取れた適切な価格設定が求められます。

工事価格は業務の品質や工期、使用材料の質によって大きく変動するため、市場相場や競合他社の価格を参考にしながら自社の提供価値に見合った設定が必要です。売上から見た利益率は経営効率を測る重要な指標となり、経営者のパフォーマンスを評価する基準にもなります。

ただし、利益率だけを追求すると品質低下や顧客満足度の低下を招く恐れがあるため、長期的な視点での適正価格の設定が重要です。このバランスを適切に保つことが安定した経営と経営者自身の年収向上につながります。

売上拡大と経費削減は同時に行う

工務店経営者の年収向上には売上拡大と経費削減の両輪が不可欠です。売上面では顧客満足度を高めてリピートや口コミ獲得を促進することが重要です。高品質な施工やアフターサービスの充実、丁寧なコミュニケーションが顧客の信頼を獲得します。

同時にWebサイトの改善やSNS活用など多様な集客方法を組み合わせることや、リフォームやエコハウスなど新規事業開拓も収益源の多様化に繋がります。

経費削減では固定費の見直しが効果的です。良質な材料を適正価格で調達するルートの確立や、業務効率化による人件費の適正化が求められます。ITツールの導入や補助金活用も業務効率化に貢献します。

売上向上と経費削減の両方をバランスよく進めることで、持続的な年収アップが実現できるのです。

建設業での売上向上には営業代行の活用がおすすめ

建設業で売上を上げたい場合には建設業特化の営業代行サービスを活用することがおすすめです。建設業に特化した営業代行サービスであれば、プロの営業担当が建設業全体の動向やニーズを把握したうえで営業活動を行うため、効果的なアプローチが可能となります。

弊社サービスである建築建設特化の営業代行「ツクノビセールス」は、月に2,000社もの企業に営業し、成果が出なかったら返金保証もしています。累計4,000万円の売り上げに繋がった事例もあります。

まずは話だけでも聞いてみたい！という方には無料で営業戦略のご提案もしておりますので、こちらからお気軽にご相談ください。

【まとめ】工務店経営の年収は業績など様々な要因を考慮しながら決定しよう！

工務店経営者の年収は全国平均で約600万円とされていますが、都市部では約700万円、地方では約500万円と地域差があります。年収1,000万円を目指すことも可能で、経営戦略や事業規模によって大きく変動します。

年収向上には生産性向上と事業拡大が重要です。従業員のスキルアップや多能工化の推進、材料・在庫管理の最適化、適切な資金計画の立案などが効率的な経営につながります。またリフォームやリノベーション、エコハウス建築などの新規事業開拓も収益源の多様化に効果的です。経費管理や適切な工事価格設定、売上拡大と経費削減の両立が安定した経営と年収向上の鍵となります。ぜひこの記事を年収向上にお役立てください。

工務店を開業する方法や工務店の平均利益率についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

工務店を開業する方法とは？必要な許可や資金・集客方法などを解説

工務店の平均利益率は25％！低いときの施策や改善方法などを解説