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施工管理の仕事は「きつい」「大変」と言われ、離職率が高いイメージを持っているのではないでしょうか。
今回は、建設業全体や施工管理職の離職率、施工管理の離職率を高めている8つの要因について紹介します。
さらに、施工管理技士が働きやすく離職率の低い企業の特徴や企業の見つけ方、施工管理という仕事の魅力についても詳しく紹介します。
施工管理士の転職率とは
施工管理職の離職率とは、一定期間内に仕事を辞める人の割合を指します。一般的に1級施工管理技士の離職率は年間約5%、2級で約10%と言われています。
数字だけ見ると施工管理の離職率は他職種よりやや低めで、全産業平均(約15%程度)と比べても低い水準といえるでしょう。若手の早期離職率が高いことや入職者自体が少ないことから、人手不足が深刻となっているのが現状です。
建設業・施工管理士の離職率
建設業界全体や施工管理職の離職率は具体的にどの程度なのでしょうか。
厚生労働省「令和4年雇用動向調査」によると、2022年の建設業の離職率は10.5%でした。産業全体の離職率15.0%より低く、数値上は「施工管理の離職率は低い」といえる状況です。宿泊業・飲食サービス業(26.8%)など他業種に比べ高くはありません。
しかし、建設業の入職率は同年8.1%にとどまり、離職率を下回っています。新しく入ってくる人より辞める人の方が多く、人手不足が進行しているのです。新卒者の離職率は、2020年3月卒の新卒社員が3年以内に離職した割合は、建設業では高卒42.5%、大卒30.1%にのぼります。
このように、新卒施工管理の離職率は決して低くなく、理想と現実のギャップから早期に辞めてしまう若手が多いことが業界の課題です。
参考:建設業をとりまく現状
施工管理士の離職率を高めている8つの要因
施工管理士の離職率を高めている要因としては次の8つが挙げられます。
- 残業時間が多い
- 責任が重くプレッシャーがかかる
- 仕事内容に対応できない
- 転勤する可能性が高い
- 評価制度に不満がある
- 給料と仕事量が見合っていない
- 人間関係が難しい
- 新卒者を育てられない
施工管理士の離職率を高めている要因を下記で詳しく解説します。
残業時間が多い
施工管理の業務は、日中は現場対応に追われ、業務終了後の夜間に書類作成や打ち合わせを行う場合も多く、残業が常態化します。
実際、全産業の年間平均実労働時間が1,720時間なのに対し、建設業は2,056時間と336時間も長くなっています。忙しい現場では休日出勤や深夜残業も発生しやすく、プライベートの時間が確保しづらい状況です。
そのため「ワークライフバランスが取れない」「体力的にきつい」と感じて離職する人が少なくありません。
ただし、2024年4月1日から建設業界でも時間外労働の上限規制が入り、月45時間・年360時間となっています。
参考:国土交通省の調査
参考:時間外労働の上限規制
責任が重くプレッシャーがかかる
施工管理は工事現場の監督者として、工程・品質・原価・安全の「4大管理」すべてに責任を負います。工期内に工事を完了させるプレッシャーや、現場で事故を起こさせない重責は常に施工管理士にのしかかります。
実際には予期せぬトラブル(工期遅延や資材不足、災害など)が発生する場合もあり、その都度責任者として対処しなければなりません。
プレッシャーから精神的ストレスを抱え「自分には荷が重い」と感じて辞めてしまうケースも見受けられます。経験の浅い若手にとって、重大な責任を負い続けることは大きな負担となります。
仕事内容に対応できない
施工管理の仕事は幅広く、現場の4大管理に加えて協力会社や施主との打ち合わせ、膨大な書類作成、役所対応など様々です。
複数の業務を同時並行でこなす必要があり、ただでさえ多い仕事量に予期せぬトラブル対応まで重なると、キャパオーバーになってしまう場合もあります。結果的に「自分にはとてもこなせない」と感じてしまい離職に至るのです。
また、入社前に抱いていたイメージと実際の業務とのギャップに戸惑い、対応しきれない新人が早期に辞めてしまうこともあります。
転勤する可能性が高い
施工管理職は転勤や長期出張が多い点も離職理由の1つです。
大手ゼネコンや建設会社では、プロジェクトごとに全国各地の現場に配属されます。そのため、頻繁に勤務地が変わり、場合によっては遠方に長期間単身赴任という場合もあります。
家庭を持っている人にとって、転勤は大きな負担です。転勤が多く家族を連れて引っ越しが難しいために施工管理の仕事を辞める人もいます。慣れない土地での生活や家族と離れて暮らす寂しさが積み重なり、最終的に離職を選択するケースもあるのです。
評価制度に不満がある
人事評価や昇進制度への不満も離職を招く要因です。
建設業界では資格の有無以外の評価基準があいまいになりがちで、真面目に働いていてもなかなか昇給・昇進しないという不満を抱く施工管理士もいます。評価の透明性が欠け、頑張りが正当に報われない職場ではモチベーションが下がり、優秀な人材ほどキャリアアップを求めて他社へ転職してしまう傾向があることも否めません。
反対に、人事制度が明確で評価が公正な会社ほど社員の納得感が高まり、離職率も低くなります。企業側には、資格だけでなく業績や現場での取り組みを適切に評価する仕組み作りが必要となるでしょう。
給料と仕事量が見合っていない
施工管理の給与水準は決して低くありませんが、仕事量に見合っていないと感じる人が多いことも事実です。建設業全体の平均年収は364万円と、全産業平均の460万円より低い水準にあります。
施工管理技士個人であれば、正社員なら平均450万円以上、経験や資格次第では700万円前後も可能とされています。それでもなお「これだけ働いてこの給料では割に合わない」と感じる人が後を絶ちません。業務量の多さや長時間労働の負担が大きい証拠とも言えます。
特に、固定残業制などで一定時間分の残業代しか支払われない場合、超過分のサービス残業が慢性化しがちです。努力や時間外労働が正当に報われない環境では不満が蓄積し、「給料が見合わない」ことが離職の引き金となってしまいます。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査、令和5年分 民間給与実態統計調査
人間関係が難しい
現場では自社の上司だけでなく、多くの職人さんや協力会社のスタッフ、施主、近隣住民など様々な人と関わります。
この中で板挟みになることも多く、対人調整に神経をすり減らす場面が少なくありません。
例えば、経験豊富な年上の職人に指示を出す際に反発を受けたり、若い現場監督だからと軽んじられたりする場合があります。時には職人から怒号を浴びせられることもあり、萎縮してしまう新人もいるでしょう。
また、クライアントの無理難題と現場事情との板挟み、近隣からの騒音クレーム対応など、神経をすり減らす場面も少なくありません。人間関係のトラブルに嫌気がさして辞めてしまう人も多いのです。
実際、「建設業で業務に関連したストレスの内容」として「職場の人間関係」を挙げた人が多かったという結果もあります。
円滑なコミュニケーションが取りづらい職場環境だと離職率が上がってしまう典型的な例と言えるでしょう。
新卒者を育てられない
慢性的な人手不足の中、現場では即戦力が求められるあまり、新卒や若手社員に十分な研修や指導を行う余裕がない企業もあります。「仕事は見て覚えろ」という風土になり、右も左も分からない新人が放置されがちです。
研修がない会社の場合、若手は自力で仕事を覚えなければならず、働きにくく感じてしまいます。十分な教育を受けられないまま現場に放り出された新人は、スキルアップできないもどかしさや失敗のプレッシャーから早期に離職しやすくなるのです。
実際、新人の定着率が低い会社ほど組織の高齢化が進み、人材の再生産ができない悪循環に陥っています。しかし、若手を計画的に育成しフォローする体制が整った会社であれば、新人も定着しやすく離職率は低く抑えられます。
施工管理士の離職率が低い企業の特徴
施工管理士の離職率が低い企業の特徴としては次の5つが挙げられます。
- コミュニケーションを取りやすい
- 経営が安定している
- 新人のサポート体制が充実している
- 福利厚生制度が整っている
- 労働時間が適切に管理されている
施工管理士の離職率が低い企業の特徴を下記で詳しく解説します。
コミュニケーションを取りやすい
社員同士や上司部下の人間関係が良好であれば、トラブルも起きにくく信頼関係が構築されて働きやすい職場と言えます。悩み事や意見を気軽に言い合える環境が整っていると、ストレスの発散や課題解決が速やかに行われ、結果として定着率の向上につながります。
反対に、上下関係が厳しく物が言いにくい職場は不満が蓄積しやすいため、人間関係がよい会社かどうかを見極めることが大切です。
経営が安定している
一般的に大企業ほど給与水準が高く福利厚生が充実し、教育体制も整っていて人員にも余裕があるため、一人ひとりの業務負担が比較的軽いです。
実際、建設業でも従業員数が多い大手ほど労働環境が良好なケースが多く、社員も長く勤めやすいようです。
ただし、「大企業=ホワイト企業」とは限りませんが、財務的に安定し将来性のある会社であればリストラなどの不安も少なく、安心して働き続けられるでしょう。
新人のサポート体制が充実している
OJTによる現場指導や資格取得支援や定期的な研修がある会社では、未経験者や新卒社員も着実にスキルアップできます。先輩社員がメンターとなって相談に乗り、失敗をフォローする文化がある職場は新人にとって心強く、安心して長く働けるでしょう。
育成を怠る企業では若手が根付かず人材が流出してしまいます。新人サポートが手厚い会社かどうかは、離職率の低さを測るポイントです。
福利厚生制度が整っている
福利厚生が整備された会社は働きやすい環境が整っているため、離職率も低くなります。
各種社会保険への加入や企業年金制度、住宅手当、家族手当、育児支援、十分な休日休暇制度、保養所の利用などが充実している企業では、社員は待遇面の安心感が高まり長く働きたいと思うものです。
保険や年金制度をしっかり整備している会社では、従業員の定着率が上がります。このように、社員思いの福利厚生はモチベーションアップになり、離職率の低下につながります。
労働時間が適切に管理されている
勤務時間の管理が厳格で労働法規を順守している会社も離職率が低い企業の典型です。
建設業界では、「残業や休日出勤は当たり前」という風潮が根強い会社もありますが、ホワイト企業では長時間労働の改善に取り組んでいます。
例えば、完全週休二日制を導入し土日は必ず休みにしている、36協定遵守で月残業時間の上限を設けている、サービス残業を許さず残業代を1分単位で支給している、といった企業姿勢です。
実際、勤務時間の管理がしっかりしている会社ほど社員に無理な残業をさせず、働いた分の賃金も適切に支払うため、離職する人が少なくなります。労働時間に対する会社の意識が高い職場は、社員の心身の負担が軽減され働き続けやすい環境と言えるでしょう。
施工管理の魅力
自分が携わった建築物やインフラ施設が無事完成し、街に形として残る瞬間には大きな誇りと充実感を味わえます。施工管理はプロジェクトの中心的役割を担うだけに、達成感と喜びが大きいです。
さらに、施工管理技士は国家資格であり、経験を積んで1級施工管理技士などの資格を取得すれば市場価値が高まります。施工管理士の平均年収は約450万円で、資格や役職次第では年収700万円以上も目指せる高待遇の職種です。努力次第で収入アップやキャリアアップが実現できるのは大きな魅力でしょう。
また、日本では老朽化インフラの更新や都市再開発など建設需要が絶えず、施工管理技術者は常に求められています。若手人材の不足から、経験を積んだ施工管理士は需要が高く、将来的な仕事の安定性も高い職業です。
近年は働き方改革の推進やICT・DX技術の導入で労働環境が改善しつつあり、「施工管理=ブラック」というイメージも変わり始めています。
施工管理の仕事は苦労も多いですが、得られるやりがいや見返りも大きく、建設に情熱を持つ人にとって挑戦する価値のある職業と言えるでしょう。
施工管理士が離職率の低い企業を見つける方法
施工管理士が離職率の低い企業を見つける方法としては次の3つが挙げられます。
- 実際に職場に足を運ぶ
- データや口コミや調べる
- 転職サポートサービスを活用する
施工管理士が離職率の低い企業を見つける方法を下記で詳しく解説します。
実際に職場に足を運ぶ
可能であれば、気になる建設会社や現場の付近に足を運んでみましょう。会社の営業所や現場事務所を平日夜に訪れてみるとヒントが得られます。
夜遅くまで事務所の明かりがついているようなら社員が長時間残業している恐れがあり要注意です。
また、実際に工事中の現場を外から見学してみるのも有効です。もし資材や工具が散乱していたり、怒号が飛び交っているような様子であれば、安全管理や職場の風土に問題があります。
現地を見ると、ホームページや求人票では分からないリアルな労働環境を感じ取れるでしょう。
データや口コミを調べる
企業の労働環境を知るのに役立つ公開情報源はいくつかあります。
新卒向けの企業情報誌「就職四季報」は有名です。「就職四季報」では、企業ごとの平均残業時間や有給休暇消化率、3年後の新卒定着率などのデータが掲載されており、離職率の低い会社を探すのに役立ちます。
上場企業であれば、公開されている有価証券報告書もチェックしましょう。報告書には従業員数や平均勤続年数、平均年齢、育休取得率などが記載されており、会社の定着率や働きやすさを測るヒントです。
一方、最近は転職サイトや求人サイトに現職社員・元社員が投稿した口コミ情報も多数存在します。給与水準や職場の雰囲気、上司の評価など生の声を知ることができる点で貴重な参考資料です。
ただし、匿名の投稿ゆえ事実と異なる情報も混ざり得るため、口コミはあくまで参考程度にとどめ、公式データと併せて総合的に判断するようにしましょう。
転職サポートサービスを活用する
建設業界に強い転職エージェントや人材紹介会社に相談すれば、自分では得にくい企業の内部情報や業界動向を教えてもらえるメリットがあります。
他業種から施工管理へ転職を考えている場合や、働きながら次の職場を探したい場合に心強い味方となるでしょう。
専門家は建設業界のホワイト企業の特徴や求人傾向を熟知しており、希望条件(勤務地、給与、休日など)に合った優良企業をピックアップして紹介してくれます。志望動機書の書き方指導や面接対策のアドバイスを行ってくれるケースもあり、内定獲得の成功率も高まります。
もちろん最終的な見極めは自分自身で行う必要がありますが、業界に詳しいプロの力を借りると、離職率が低く自分に合った施工管理の職場に出会える可能性が高まるはずです。
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【まとめ】施工管理士の離職率は高め!転職する際は職場を慎重に見極めよう
施工管理職の離職率に関するデータや要因、職場選びのポイントについて詳しく解説してきました。
数字上は施工管理の離職率自体は他業種より低めとはいえ、現場の労働負荷が大きいため心身の負担から離職する人は後を絶ちません。若手の早期離職率が高く人手不足が深刻である点から、離職率は高めの職種と言えるでしょう。
労働環境のよい会社かどうかを見極めるために、公式データの確認や現場の下見、専門サービスの活用などあらゆる手段で情報収集し、自分に合った職場を探してください。
施工管理の仕事自体には大きなやりがいと将来性があります。だからこそ、長く働けるホワイトな職場を見つけ出し、キャリアを築いていきましょう。
施工管理士の転職理由やすぐに辞める原因・施工管理士を新卒1年目で辞める理由についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。


