積算とは?見積もりとの違いや業務の流れ・必要なスキルなども解説

積算とは

正しい「積算」は、見積書作成時に赤字工事を避ける上で欠かせない要素です。積算とは、工事業界の中でも重要な業務であり、その計算方法は工事の種類によって異なります。

正確な積算の方法や必要性、簡易な積算手法などを理解することは、発注者はもちろん受託者にとっても極めて重要です。正確な積算によって、赤字工事のリスクを軽減することができます。

この記事では、積算と見積もりの違いや業務の流れ、必要なスキルについて解説します。ぜひ参考にしてください。

積算とは

積算は工事の費用を積み上げて全体の費用を算出する作業です。図面や書類から材料の数量を抽出し、積み上げ方式で計算することを指します。この過程で得られる数量積算は、建物や土木の構造物の価格を算出するのに利用されます。

見積もりとの違い

積算と見積もりの主な違いは、見積もりが請負金額を示すのに対し、積算は工事にかかる費用を算出する点です。積算結果は積算原価と呼ばれ、利益を含まない工事費用を示します。一方、見積もりでは積算原価に諸経費と利益を加えた金額が示され、この金額が契約金額となります。

積算の必要性

建設工事で積算を行う主な理由は、工事ごとに費用が異なるためです。施工場所や材料の相場の変動、作業員数、気象条件、工事期間の延長などの条件が変わるため、同じ工事内容でも費用は異なります。
したがって、工事ごとに積算を行い、適正な費用を把握する必要があるのです。積算によって正確な費用を把握することで、工事による赤字を回避して利益を確保できます。

積算の主な流れ

積算の主な流れは以下の通りです。

  1. 必要な人工の算出
  2. 材料の算出
  3. 総工費の算出
  4. 書類の作成

順に解説していきます。

1.必要な人工の算出

人工(にんく)とは1日8時間における人件費を表す概念です。費用は工事の施工条件に応じて変動します。1人工は「1人が8時間で可能な作業量」を表し、人工の算出は国土交通省が改訂した「公共建築工事標準単価積算基準」を活用して算出します。

2.材料の算出

材料の算出では、工法に応じて必要な材料やその数量を正確に把握することが必要です。設計図や仕様書を参考にして、国土交通省が作成した「土木工事標準歩掛」を活用して算出します。

3.総工費の算出

総工費を算出する際には、人件費単価と材料費単価をそれぞれ算出する必要があります。人件費の単価は、国土交通省の「令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価表※」に基づき、特殊作業員や軽作業員などの職種別に確認します。

材料費単価の算出には、一般財団法人建設物価調査会の「建設物価」や一般財団法人経済調査会の「積算資料単価データベース」などを参考にするのが良いでしょう。各単価を算出後、「数量×単価」で労務費と材料費を計算して直接工事費を算出した上で、間接工事費を加算すれば、総工費を算出できます。

※労務単価は積算の際に活用されるものであり、作業員への賃金支払いを約束するものではありません。

4.書類の作成

見積もりに必要な全ての数値やデータが揃ったら、以下の書類を作成します。

  • 設計内訳書
  • 単価比較表
  • 明細書
  • 仕訳票

これらの書類を基に、最終的な見積もりを作成します。

積算を構成する要素

積算を構成する要素は4つあります。

  • 歩掛
  • 直接工事費
  • 間接工事費
  • その他の費用

それぞれの要素を正しく理解しましょう。

歩掛

歩掛(ぶがかり)とは作業ごとにかかる手間を数値化したものです。工事費用の見積を出す際に欠かせない要素で、労務費の算出においては特に重要となります。作業時間だけを基準に算出するのではなく、作業現場や材料、施工方法、難易度などに応じて異なる作業量を設定することで、適正な工賃の算出が可能です。

参考:国交省|公共建築工事標準単価積算基準
歩掛の詳細や計算方法についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。
歩掛とは歩掛とは?計算方法・使うメリットや注意点もわかりやすく解説

直接工事費

赤字工事を防ぐためには、工事費用を細かく積算することが重要です。
直接工事費は以下の項目で構成されています。

材料費施工に必要な材料の費用を数量と仕入れ価格から算出する。
労務費施工に必要な労務の費用を指すため、人員の募集費用や食事代などは該当しない。
直接経費特許使用料、水道光熱費、機械経費が該当する。

間接工事費

間接工事費は、「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費」の3つで構成されています。公共工事では「共通費」、民間工事では「諸経費」と呼ばれることもあります。

共通仮設費工事現場で作業のために仮設される物や設備にかかる費用。足場や養生、管理事務所、職人の休憩所などの設置費用や維持管理費、備品代、撤去費用などが該当する。
現場管理費工事現場を管理するために必要な費用。現場管理者の給与や保険料、通信費、食事代、人員募集の広告費などが該当する。
一般管理費工事に直接関わる費用ではなく企業の経営維持に必要な費用。経営陣や本社での従業員給与や福利厚生、光熱費、通信費、広告宣伝費、建物の維持管理費などが該当する。

積算における共通仮設費についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

共通仮設費とは積算における共通仮設費とは?内訳や計算方法をわかりやすく解説

その他の費用

直接工事費と間接工事費を合わせた「純工事費」以外にも、工事を行う際には現場管理費や工事の一時中断に伴う費用が必要です。具体的には事務所の家賃や光熱費、広告宣伝費といった会社の一般管理業務に関わる費用が含まれます。

積算のやりがい

積算のやりがいは、自己成長や専門知識の獲得、会社の業績への貢献などが挙げられます。

様々な業務の図面を解析し、建築や施工に関する知識を広める過程で成長を実感できます。また、正確な積算が会社の業績に直結することで達成感を得ることもあるでしょう。さらに、大きな工事に関わることで社会的な貢献意識や誇りを感じられます。

積算を行うときに必要なスキル

積算を行うときに必要なスキルは3つあります。

  • 豊富な専門知識
  • 計算スキル
  • コミュニケーション能力

順に解説します。

豊富な専門知識

積算に必要なスキルとして、建築分野に関する豊富な専門知識が欠かせません。建設工事に関する専門知識が必要であり、設計図や仕様書を読み解く能力や施工計画を作成する能力が求められます。
また、建設に関する専門用語や工事過程についての理解が必要であり、建設材料の相場についても理解しておく必要があります。

計算スキル

積算に必要なスキルとして、計算能力も不可欠です。専用のソフトウェアを活用するため、複雑な計算は不要ですが、それでもある程度の計算力は求められます。

コミュニケーション能力

積算に必要なスキルには、専門知識だけでなく、コミュニケーション能力も不可欠です。積算業務では建築主や現場監督、請負業者など、建設に関わる様々な人々との連携が必要です。そのため、専門知識を有するだけでなく、適切なコミュニケーションを取る能力も重要となります。

積算に役立つ資格

積算に役立つ資格には以下のようなものがあります。

  • 建築積算士
  • 建築コスト管理士

順に解説していきます。

建築積算士

建築積算士は、設計図や建築図面を読み解きながら、材料の数量や人数など建築の生産過程で必要な情報を割り出す業務を担います。かつては国土交通省が認定する資格でしたが、民間資格となり、公益社団法人日本建築積算協会が認定する資格制度となっています。

建築コスト管理士

建築コスト管理士は、建築積算に関するスペシャリストです。各現場や工事の費用算定から、建築プロジェクトの企画・構想、工事の実施、維持・保全、廃棄までの全過程においてのコストマネジメントを行います。積算に関する知識だけでなく、コスト情報収集・分析、発注戦略、建築関連法規といった幅広い分野における専門知識が必要です。

積算を行うときのポイント

積算を行うときのポイントは4つあります。

  • 施工計画を細かく練る
  • 現場の環境を考慮する
  • 労務費を適正にする
  • 積算ソフトを利用する

積算業務の効率化を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。

施工計画を細かく練る

成功する積算を行うためには、施工計画を詳細に練ることが必要です。仮設、工法、安全衛生など多岐にわたる内容が含まれます。適切な工程表や計画書を作成することで、より正確な積算が可能となります。

現場の環境を考慮する

積算を行う際には、現場の環境を考慮することも重要です。施工や設計は天候や地形によって影響を受け、作業人数や機械の使用も異なります。したがって、現場の特性を考慮したオーダーメイドの積算を行う必要があります。季節によっても工事に必要な費用が変動するため、夏や冬などの季節には対策費を別途考慮すると良いでしょう。

労務費を適正にする

労務費を適正に算出するためには、歩掛を活用して労務費を把握して積算に反映させる必要があります。計算の際には、労務費に特化した国土交通省の「建設保全業務労務単価」を活用するのが一般的です。情報は年度ごとに更新されるため、常に最新の情報を把握するようにしましょう。

積算ソフトを利用する

積算を効率化し、計算ミスを防ぐためには、積算ソフトの利用も有効です。積算業務は時間と手間がかかり、手動で行う際には計算ミスが発生するリスクがあります。

建設業向けの積算ソフトを使用すれば、材料選択や数量入力から自動計算ができ、利益率の設定が完了していれば見積書の作成も容易に可能です。積算を迅速かつ正確に行いたい場合は、積極的に専用ソフトウェアを活用しましょう。

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【まとめ】積算は会社の利益に直結する大切な業務!よく理解して適切に行おう

積算は工事にかかる費用を予測し、全体の費用を計算する作業です。積算の正確さは会社の利益に直結するため、積算業務には専門知識や責任が伴います。
しかし、その分やりがいも感じられる業務です。適切な積算が行われないと、赤字工事になったり会社の信頼に大きな影響を与えたりします。積算に関する理解を深めて、安定した経営を目指しましょう。

建築積算ソフトおすすめ7選と無料フリーソフトについてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

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