土木工事における粗利率とは?ベストな水準や効率良く粗利率を上げるためのポイント

「たくさん工事を受注しているにも関わらず、なぜか利益が上がらない」土木業で働く人のなかには、そのようなお悩みをかかえている方もいるのではないでしょうか。建設業は売上至上主義な面があるので、工事自体が赤字であっても売上高を上げるために工事を受注するケースも少なくありません。

経営は楽にならないけれど、対策を行わないまま会社を運営しているとなると、いつまでも苦しい思いをしてしまいます。
そこから脱却するためにも、粗利率の基本情報と、効率よく粗利率を上げるためのポイントを把握し会社経営に反映させましょう。

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建設業の一般的な粗利率は?

中小企業など大きくない企業に所属している建設業の粗利率は、約20%といわれています。これは「一般財団法人 建設業情報管理センター」の調査報告で、徐々にではありますが利益率が上昇傾向である結果が出ている傾向とのこと。

統計を取り始めて建設業よりも利益率が高かった農林水産業や製造業よりも、直近ではわずかではありますが利益率が上回っている状態です。とはいうものの、過去20年を振り返ってみても、利益率は低い水準のままの状態といえます。

建設業の粗利率の目安についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。

建設業の粗利率の目安とは?利益率を上げる方法を解説!

建設業で粗利率に着目する理由は?

建設業で粗利率に注目する理由は、4つあります。それぞれの内容を詳しくまとめているので、ぜひチェックしておきましょう。すべて重要な内容なので、しっかりと理解しておく必要があります。

今足りないものはなにか、なにをどう補えばよいのかを見出し、効率よく粗利率を上げましょう。

利益の中心となるため

会社の利益の基盤は、人件費や販管費などの必要不可欠な支払いを行う粗利です。粗利を超える金額の経費を支払うことにならなければ、100%利益が残ります。

それだけでなく、粗利の金額が大きくなればなるほど、最後に手の中に残るお金の額も大きくなるので利益率も上昇します。

上記のようなことから、粗利は会社にとっての基本的な利益といえ、非常に大切なものとして認識できます。そのため、粗利をしっかりと把握しておくことが重要なのです。

経営方針の根幹を成すため

基本的な会社経営の方針を決定し、適切な状態で管理していくためには、利益の額やコストなどを正しく把握する必要があります。面倒だと感じがちですが、利益率を有効活用することで、以下のことが明確にわかりやすくなります

  • 利益率の適切な管理を行うことで、正確なデータが管理しやすくなる
  • 参考資料を手元に置くことで、会社経営の方針を管理し決定するときに非常に役立つ

細かな情報をその都度収集し、利益率を細部まで管理することで、経営を軌道に乗せやすくなります。

経営リスクに対応できるため

利益率を細かに分析してデータ化することによって、経営状況を客観的に見ることができます。そうすることで、具体的なリスクを把握しやすくなるのです。

  • 月ごとの利益を管理し、改善すべき点を発見しやすくなる
  • 決算書を作成するときに、各現場ごとに利益率を正確に算出することによって、会社の現段階の状態を把握しやすくなるなど

上記のようなリスク管理も、非常にしやすくなります。第三者の視点として、自社価値などを見極める手段に用いることもできますよ。

改善点を洗い出せるため

建設業を含む様々な職業で、改善点の洗い出し作業や利益の上がり方などを可視化することは必須です。

  • 利益率が下がった原因を見つけ、改善すべきポイントを洗い出す
  • なぜ利益率が上がっているのか、以前のデータと見比べて変化があった個所を把握するなど

業績がなかなか伸びなかったり、想定よりも利益率が低い場合は、原因を見つけ出す必要があります。複数の視点から仕事の成績内容を分析し、統計を取るなどして、会社利益向上に役立てましょう。

粗利率の計算方法に注意

利益率を計算するとき、正しく計算したつもりなのによく見ると計算を間違えていたということはありませんか?利益率を25%とした場合、原価にその価格を上乗せした金額を計算して出したとしても、正しい数字は出てきません。

今回は、以下のような条件で間違いがちな計算式での計算例を挙げてみます。

  • 原価100万円
  • 粗利率を25%上乗せした金額を想定して、総売上高を計算している

総売上高=250,000(粗利率を25%にしたときの金額)÷1,250,000(原価100万円+25%の上乗せ)×100

この計算式はついうっかりやってしまいがちですが、しっかりと計算してみると粗利率は20%になってしまうため、想像とは違った結果を生んでしまいます。

この計算方法で導き出される答えは、積算に慣れていないとついやってしまいがちなので注意しましょう。

目標売上高の計算方法

目標とする利益を正しく把握できる計算方法は、以下の通りです。

  • 目標売上高=原価価格÷(100%-目標利益率%)

さきほどの計算では粗利率が20%となってしまいましたが、今回は上記の式に当てはめて計算を行っていきます。

まず、正しい目標売上高を計算します。

①原価100万円÷75%=目標売上高は1,333,333円

目標売上高の算出ができたら、順を追って目標利益25%に近い数字が算出できるか計算していきます。

まずは粗利率を算出しましょう。

②目標売上高1,333,333円-原価100万円=粗利率333,333円

次に売上率の目安を計算します。

③粗利率333,333円÷売上高1,333,333円=24.9999%

目標に近い数字が出せました。正しい計算方法を身に着け、会社の成長につなげましょう。

建設業の粗利率はなぜ低い?その3つの理由

建設業における土木工事は、どうして粗利率が低いのでしょうか?粗利率が低いのには、理由があります。

今回は、気になる理由を3つに分けて解説します。どのような理由があるのかを把握し、自社に当てはまっている部分がないか振り返りをするきっかけにしてみてください。

改善点を発見する可能性もあるので、しっかりとチェックしておきましょう。ついうっかりやってしまいがちなことから、土木工事業界特有の理由も含まれているのでぜひ目を通してみてください。

①売上高のことしか考えていない

建設業界は、売上を非常に重視する傾向があります。しかし、売り上げを重視しすぎてしまって、利益を後回しにしてしまいがち。

  • 赤字でも働き続ける
  • 竣工まで赤字か黒字かわからない状態であることが多い

上記のようなことが多々ある場合は、利益率が低下しやすいです。赤字でも職人さんに仕事を出すために、仕事を請け負っているという会社も少なくありません。

売上高を優先しすぎると、利益への意識や注意が散漫になって金利率が低くなってしまうのです。

②重層的な下請け構造

建設業は、ひとつの工事を専門別に振り分けて対応することが多いので、重層的な下請け構造になっています。下請けが重層的になるということは、合理的な面がある一方で、下位の下請け会社は取り分が少なくなってしまう現象が起きてしまいます。

これは、複数の中間会社を経由して仕事を請け負っているためです。下請け会社がメインの仕事を行う場合は、中間業者をはさまず直接仕事を請け負うことで、より多くの利益を得やすくなります。

③丼勘定になっている

ついうっかりやってしまいやすい、「これくらいになるはず」という丼勘定。家計で行っても大変な目に遭うことが多いのに、仕事でそれを行ってしまうのはよくありません。

まずは、土木工事に関係しているお金の流れを把握するためにも、以下のものに注目し、適切かつ詳細に情報をまとめましょう。

  • 実行予算の作成
  • 原価と発注の管理
  • 入出金の管理

お金の流れを正しく把握しておかなければ、原価が多くなっていたとしても気づかないことがあります。

粗利率を高める5つの方法

粗利率を上げるためには、5つの方法があります。低い粗利率で走り続けるのは、決して楽なことではありません。粗利率を高め、会社を軌道に乗せましょう。

具体的にどのような方法があるのかを解説しているので、取り組みやすいものからぜひ実践してみてください。継続して実践することで、徐々に成果を実感しやすくなります。

会社が潤い、ゆとりをもって経営できるよう、粗利率を上げる方法をいろいろな面で実践して会社を大きくしましょう。

①売上高ではなく粗利益額を中心に考える

売上高に注目するのは、非常に大切なことです。しかし、売上高だけに注目してしまうと、粗利に対しての意識が薄まりがちになります。そうならないためにも、売上高だけでなく粗利を知るための計算式を知っておきましょう。

  • 粗利=完成工事高-完成工事原価

無理のない範囲で完成工事原価を抑えることで、粗利の増加が見込みやすくなります。材料の仕入れ先の見直しや発注ミスの撲滅、自社施工と適度な外注の利用などを駆使しましょう。

そのほかにも必要最低限度の粗利益額の算出も欠かせません。

  • 一般的な管理費
  • 借入金の管理
  • 設備に対する投資費用
  • 社員ボーナスなど

上記のような面に注意して、粗利益額を正しく把握しましょう。

②値上げを行う

値上げに踏み切るのも、重要なことです。大幅な値上げではなく、数%値上げを行うだけでも、十分に売り上げは上がります。

とはいっても、値上げしたことによって顧客が減少してしまうのは困りますよね。そうならないためにも、以下のような対策を練りましょう。

  • 自社独自の強みを生かした商品の開発
  • 自社商品の適度なPR活動
  • 宣伝費を含めた、不要な出費のカットなど

関係者に対しては、納得してもらえるような交渉を実施してみるのがおすすめです。

③ツールを導入して情報を一元管理する

お金の流れを把握することは、非常に重要なことです。そうすることで、どこにどれくらいのお金がかかっていて、どれくらいのコストカットが見込めるのかを管理しやすくなります。

  • 複数の仕入れ先から同じものを購入したときのコスト
  • 在庫の確認と管理の資料
  • 収支の帳簿などお金の出入りの資料

上記のようなお金に関する資料を細かに記録を残し、定期的に振り返えると、コストカットにつながりやすくなります。

また、こうした社内の収支の情報管理は、建設業界に特化したITツールを導入するのがおすすめです。1つのツールで情報を管理することによって、お金の流れを把握しやすくなります。

④在庫の整理を行う

無駄な在庫を抱えてしまうと、利益率を下げる原因につながります。在庫の素材によっては、仕入れたものが劣化したり消費期限切れで使えなくなってしまうと破棄するほかありません。仕入れたものを使い切れないとなると、損失につながります。

  • 無駄な在庫を抱えず、発注したものは無駄なく使い切る
  • 在庫量が多すぎないかを見直すなど

上記のようなことを、定期的に振り返ることで仕入れ量を見直しやすくなります。そうすることで、無駄な在庫を抱え込まずに済みますよ。

⑤社員との連携を密に行う

社員とのコミュニケーションを入念に行うことも、粗利益を上げるためには重要なことです。コミュニケーションが不足すると、以下のようなことが起きやすくなります。

  • 社員同士のコミュニケーションが不足すると、連絡の行き違いや手違いが起きやすくなる
  • 担当者同士で顧客情報を共有しにくくなる
  • 重要書類に齟齬が出やすい
  • 発注書と支払額に差が出る可能性がある
  • 仕事上、1回の仕事で動く金額が大きく負債が出やすい
  • 業務内容が多いので、行き違いになってしまいがちなど

社員同士のコミュニケーションを密に行うことで、社員一人ひとりの意識が高まりやすくなります。社員が会社経営に関する関心を持ちやすくなるような、働きやすい職場作りも重要なのです。

【まとめ】土木工事の粗利率は25%前後がベスト!工事原価を抑えながら粗利率アップを目指そう

土木工事は、粗利率が上がりにくいという現状があります。仕方ないとあきらめてしまうのはもったいない!

粗利率25%を目指して、無駄な受注などを控えるなどしてコストカットを行いましょう。正しい粗利率の算出方法を身に着け、細かに情報をまとめる習慣を持つことで、どこでどれくらいのコストカットができるか可視化しやすくなりますよ。

社員同士のコミュニケーションを大切にし、粗利率をアップさせて会社の安定した経営を目指しましょう。