建設業における「電子契約ガイドライン」とは?よく用いられる2つのガイドラインについて解説!

昔までは紙で契約書を作成するのが一般的でしたが、最近では電子契約を導入している企業が増えています。建設業で電子契約を行う場合は、「JIIMA」と「国土交通省」の電子契約ガイドラインを読む必要があります。そこで今回は、建設業におけるJIIMAと国土交通省の電子契約の重要なポイントを紹介します。電子契約サービスを導入したい方は参考にしてください。

2001年の建設業法改正で「電子契約」が合法化!

今までの契約書は書面でのやり取りをしていました。書面契約は契約書の作成、作成した契約書の印刷、製本、契約書を相手方へ郵送をします。相手方が記入した契約書の返送、ファイリングをして保管します。書面でのやり取りは契約をするまでに時間がかかりました。
しかし、2000年に「IT書面一括法」が成立し、書面の提出や交付が必要な法律に対して、書面ではなく電子メールなどの情報技術を使ってやり取りができるようになりました。
電子契約に変えるとインターネット上で契約書を作成し、相手方と共有できるので、書面での工程を最小限にまとめることが可能です。相手方と対面しないで契約まで進められるほか、作業工数やコストを削減できるなどメリットが多く、さまざまな企業が電子契約を導入しています。
そして、その電子化が2001年に建設業法に適用されています。そのため、書面でのやり取りをしていた建設業の業務請負契約書の電子化の使用が増えています。

建設業における「電子契約ガイドライン」とは?

電子契約にはガイドラインが存在します。ガイドラインは主にJIIMA(公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会)と国土交通省の2つが使われています。

建設業の電子契約ガイドライン1:JIIMA

建設業の電子契約活動ガイドラインについて紹介します。JIIMAのガイドラインには電子契約の定義、電子署名、サイン、運営する際のポイントなど、電子契約を使う際に身につける知識が掲載されています。

「電子契約」の定義

電子契約の定義は、契約書を電子で作成し、インターネットなどのネット回線を 使って契約する相手方へと送ります。そして、その契約内容に承諾した証として契約者本人が電子署名にサインをし、契約をかわすことを指しています。
作成した電子契約は、国税書類として扱うため、税法に則った対応をしましょう。また、電子契約には「真実性の確保」と「可視性の確保」といった大きい2つの保存要件があります。そのため、ネット上で電子契約をする場合は、全体の取引の1つの手段と考えましょう。

電子契約で使う「電子署名」・「電子サイン」とは

ネット上で契約を交わす際には、電子署名やサインが必要になり、どちらも電子契約に使います。電子サインは、契約者本人と契約する相手方だけの認証方法のため、関係者以外の介入がありません。
電子署名は関係者以外の本人認証や高い暗号技術が使われているので、その文章が本物かどうかをしっかり見極めて、保護してくれます。
電子署名法第2章では、電子契約書に電子署名やサインが記されて初めて、正しい契約書として成立すると記載されています。

電子契約を運用する際のポイント

JIIMAのガイドラインには電子契約を運用するポイントが記されています。ポイントを4点にまとめて紹介しているので、しっかり確認しましょう。

ポイント1:契約相手ごとの本人性の確認

電子契約を運用する際は、契約した相手ごとに本人の確認が必要です。通常、企業同士が契約をする際は、企業の関係者や代表取締役(契約をする権利を持っている人)が電子契約書に直接署名し、本人確認をします。
しかし、企業と個人で契約する場合は、契約内容の重要度が高いか低いかで審査の通る基準が変わります。重要度が高い場合は、印鑑登録証明書や住民票があると審査がスムーズになります。一方で重要度が低い契約の場合は、運転免許書やマイナンバーカードで審査が受けられます。
契約する相手が企業か個人かによって、本人確認や審査内容が変わってきますので、しっかり確認しましょう。

ポイント2:既存システムへの連携

電子契約サービスは今あるシステムと連携させるだけで、仕事の効率が上昇します。ユーザーID、パスワードを作り、SSO(シングルサインオン)システムを導入、連携させると、インターネットだけで作業ができるので、効率の良い業務が可能になります。電子契約にはさまざまなサービスがありますが、国土交通省から適法と認められたサービスがあります。そこで利用するのがグレーゾーン解消制度です。「ContractS SIGN」や「クラウドサイン」など、一部の電子契約サービスではグレーゾーン解消制度を利用しています。国土交通省からさまざまな要件を満たしているサービスであることが確認できるため、安心して利用可能です。

ポイント3:電子契約導入の周知

契約書や証明書をインターネット管理に変更すると、効率が良くなります。ただし、導入した際は相手方に報告を忘れないようにしましょう。電子契約サービスのシステムにもよりますが、相手方にもアカウントや電子証明書の発行が必要になる場合があります。なるべく相手方に負担をかけないためにも、電子契約を取り入れたときは、丁寧にしっかり説明しましょう。

ポイント4:訴訟リスク

万が一、民事訴訟になった場合、電子証明は証拠として使用することができます。使用する電子契約書には誰が記載しているのか、誰が作成、署名しているのかなど一定の条件を満たしていれば証拠として提出が可能です。
また、電子署名には「公開鍵」と「秘密鍵」の2つの暗号があります。その暗号方式によって、契約者の署名が証明されます。公開鍵はほかの人に見られてしまっても問題ありませんが、秘密鍵は契約者本人以外には知られないようになっています。また、電子契約書は公開鍵を使用しないと復元ができません。
管理をする電子契約書が会社にとって、どのくらいのリスクがあるのかをしっかり考えて保存しましょう。

建設業の電子契約ガイドライン2:国土交通省

国土交通省の電子契約ガイドラインには、建設工事や請負工事で使用する電子契約について記載されています。請負契約で電子契約を使用する理由や、要件などをまとめているので、参考にしてください。

請負契約において電子契約を利用できる理由

契約書にはさまざまな形式のものがありますが、原則書面での交付になります。建設工事の請負契約も書面での交付が原則です。しかし、国土交通省の電子契約ガイドラインには、契約する相手方との承諾を得た場合のみ、電子契約が認められると記されています。建設業法第19条に詳しく掲載されているので、請負契約をする方は確認しましょう。

請負契約で電子契約を利用するための要件

国土交通省の電子契約ガイドラインには、建設工事の請負契約をインターネット上で行うための法律で規定されている要件があります。法律で規定している一定の要件は原本性の確保、見読性の確保、本人性の確保です。この3つの要件を詳しく紹介しますので、参考にしてください。

要件1:原本性の確保

原本性の確保とは、本人が契約書を作成して複製ではなく原本であることを保証することです。電子にて契約書を使用する場合は、タイムスタンプと電子署名を組み合わせて使うのが一般的です。
タイムスタンプとは、契約した時刻に電子データが存在していたこと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術です。電子署名とタイムスタンプを組み合わせると、契約者本人が作成し、その時間以降は改ざんされていないことが証明できます。トラブルを避けるためにも、電子署名、タイムスタンプ、システムの整備をしっかり行いましょう。
国土交通省の電子契約ガイドライン(規則第13条の2第2項第2号関係)には原本性の確保について記載されていますので、一度目を通しておきましょう。

要件2:見読性の確保

見読性の確保とは、契約をする相手方がデータを出力すると、書面での作成ができるようになることです。一般的に企業内でデータをやり取りする際は、クラウド上に保管して使います。しかし、見読性の確保の場合、相手方がデータを出力し、書面やディスプレイに分かりやすく表示できるようにしなければなりません。また、契約をするときに関わった関係者が同時にアクセスする可能性があります。文字化けやデータ破損などのトラブルを防ぐためにも、原本性の確保同様、システムの整備が必要です。
国土交通省の電子契約ガイドライン(規則第13条の2第2項第1号関係)には見読性の確保について記載されているので、こちらもチェックしましょう。

要件3:本人性の確保

本人性の確保とは、電子署名した本人の確認がしっかり証明できていることを表します。電子契約には、契約者本人の確認ができる公開鍵を使った、電子証明書が必要です。電子証明書を電子メールに添付して、相手方に送ったメールのリンクをクリックしてもらうと、本人確認ができます。重要な電子契約の場合は、第三者機関が発行する電子証明書をもらうケースもあります。

【まとめ】建設業における電子契約ガイドラインは「JIIMA」と「国土交通省」のもの!それぞれのポイントも要チェック

今回は建設業における電子契約のガイドラインについて紹介してきました。建設業法の一定の要件を満たすと電子での契約書が可能です。建設業の電子契約は「JIIMA」と「国土交通省」のガイドラインからの条件が必要になります。国土交通省では原本性・本人性・見読性などの要件を満たせば契約書の電子化が可能です。要件を満たして電子契約を導入しましょう。