一人親方でも従業員を雇うことはできる?手続きやメリットを解説

一人親方で仕事をしていると忙しくなったり、大きな仕事を任された時、人手が欲しくなったりしますよね。事業が大きくなってくると従業員を雇う選択肢を考える場面も多いと思います。「一人親方で従業員を雇えるのか?」「どんな手続きが必要なのか?」などについてをこの記事ではご紹介いたします。その他、メリット・デメリットや一人親方で従業員を雇う場合の必要な手続き、注意点についても解説する記事となっています。

一人親方でも従業員を雇うことは可能!従業員を雇うメリット・デメリットを解説

一人親方でも、従業員を雇う事は可能です。ですがメリット・デメリットがあります。どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ご自分の環境と照らし合わせて考えてみて下さいね。

一人親方が従業員を雇うメリットは?

メリットは特に下記が考えられます。

  1. デスクワークを任せられる
  2. 生産性が上がる

それぞれについてのメリットをご紹介します。

1.デスクワークを任せられる

まずは事務作業を任せられます。業種によって事務作業とひと言で言っても様々な種類があります。仕入注文、仕入支払、請求書作成、入金確認、帳簿管理、確定申告などが上げられますが、事務員を雇う事でミスの修正や再発注などの追加作業もなくなります。現場の仕事をしながら一人で全てこなさなければと言う心配はなくなります。これだけでも精神的には楽になる部分が出てきますよね。事務作業には期日付きの物も多く、「○月○日までにこの書類を提出して下さい。」や「早急に送って下さい。」など本業をしながら期日を考え処理をするのはなかなか難しいですよね。

2.生産性が上がる

事務作業がなくなり本業に集中できる事はもちろんの事、今まで受け切れなかった仕事を受ける事もできるようになりますし、大きい現場仕事もこなせるようになります。

「一人だとこの現場を受けるのは難しいな」「この作業は一人ではなくもうひとりほしいな」など思ったことが一度はあるのではないでしょうか。業種にもよりますが、作業が工程的にわかれていたり、作業のサポートが必要だったりする事もあります。そんな時仕事を割り振ってこなす事が出来ます。

一人親方が従業員を雇うデメリットは?

もちろんメリットだけではなくデメリットも発生します。主には下記です。

  1. 責任の範囲が広がる
  2. 雇用のための手続が必要となる

責任の範囲が広がる

採用した人が信用できない人だった、仕事をもらった会社に従業員が迷惑をかけてしまったなど従業員を雇うことによるデメリットがあります。上記項目でもお話したように、すぐに喧嘩したり、一般常識を守れない人を雇っている場合その人のトラブルのフォローに入る必要が出てきますよね。職人としての信用にも影響してきます。

手続きが必要

従業員を雇う事になれば必要な手続きがあります。様々な種類がありますので、内容を確認して必要な手続きに漏れが無いようにしましょう。

一人親方が従業員を雇う時に必要な手続きを解説

「各種保険加入手続き」「労務関係の手続き」「給与支払いするための手続き」の3つがあります。ざっくりと見てみてもピンとこないですよね。下記内容を確認して手続きを行ってください。

保険加入の手続き

従業員雇用のため保険加入手続きを行いましょう。各保険種類は3つになります。

3つの種類は「労災保険」「雇用保険」「社会保険」です。

労災保険

労災保険とは仕事中、通勤中に追った怪我や病気などになった場合給付金がでる保険です。個人事業主、法人関係なくまた、正社員、パート、アルバイト関係なく入らなければいけません。また従業員の増員、減員や名称変更、住所変更などには変更手続きが必要になります。変更が生じた場合必ず変更手続きを取るようにしましょう。

雇用保険

まずは雇用保険の加入です。雇用形態関係なく「1週間の労働時間が20時間以上である事」「31日以上雇用する見込みがある事」以上2つの条件に当てはまる場合は加入しなければいけません。従業員を雇用して10日以内にハローワーク又は労働基準監督署に届け出をする必要があります。手続きの遅れや加入をしないなどしてしまうと懲役や追徴金があるので注意しましょう。

社会保険

社会保険は厚生年金と健康保険があります。個人事業主の場合、従業員が5人以上いる場合は加入の必要があります。法人の場合は従業員の人数に関係なく厚生年金、健康保険の加入が必須となります。厚生年金の手続きは管轄の年金事務所で行い、健康保険は健康保険組合などで手続きをします。

労務関連の手続き

雇用形態や給与形態などを明確に提示することは法律で決められています。きちんと決まりを確認しましょう。

雇用契約の締結

まず、従業員と雇用契約を結びましょう。「個人事業主が従業員を雇い給与を支払います。」という契約の事です。労働者保護目的があり、労働基準法の内容に添う必要があります。ですが、雇用契約書の発行自体が義務付けされているわけではありません。口約束や口頭での伝達では解釈の違いなどトラブルの原因になりかねないので書面発行をおすすめします。

労働条件の通知

従業員を雇用するに当たり「労働期間」「就業場所」「業務内容」「業務時間・残業早出の有無」「休日・休憩・有給休暇の内容」「給与・退職金等の支払い時期など金銭面」など必ず説明が必要な労働条件(絶対的明示事項)は法律で定められています。

引用元:e-gov法令検索「労働基準法施行規則(第5条)

36協定の締結

「36協定締結」という言葉を初めて聞いたという方も多いと思います。

労働基準法第36条に基づく時間外、休日労働に関する協定届けの事を指します。

法定労働時間である1日8時間・1週間40時間を超えて労働をさせる場合、36協定を締結し労働基準監督署に提出しなければいけません。

就業規則の届出

従業員が10名を超える場合、就業規則が必要になります。賃金・労働時間などをまとめた上で労働基準監督署に提出が必要です。10名以下の場合必要性なしとされていますが、トラブル防止になるので作成する事をおすすめします。

給与支払いのための手続き

給与は時給や固定給を支払えばいいというものではありません。

提出必須の書類があります。きちんと決められたルールがありますのでそれに従って行うようにしましょう。

給与計算の準備

給与を計算する上で必要なソフトの購入など準備が必要になります。

従業員の基本データ入力や口座確認はもちろんの事、給与明細出力のためプリンターなど備品の購入も必須になってきます。

給与支払事務所等の開設届出書の提出

給与を支払い始める前に税務署に提出が必要な書類の1つが「給与支払事務所等の開設届」の提出です。給与の支払いが発生しますという書類ですので提出が必要です。提出期限は支払う事になった日から1か月以内ですが、早めの提出を心がけましょう。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の用意

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは所得の控除を受けるために必要な書類です。年末調整時、従業員の税額を計算する際使用します。扶養家族や障害の有無、生命保険控除などを従業員に記載してもらう書類です。税務署や市町村の役所から提出を求められない限り提出は不要ですが保管しておきましょう。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出も必要です。給与から差し引いた源泉所得税は毎月納付するのが基本ですが、給与の支払い人数が10名未満の場合、半年に一回7月と1月にまとめて納付することが認められています。毎月の納付は事務的な手間が多いため提出しておく事をお勧めします。提出期限の明記はありませんが申請書提出翌月からの適用になるため早めの提出を心がけましょう。

家族を従業員として雇うことはできる?

従業員を雇用できるのかという内容を説明してきましたが、家族を雇いたいという場合はどうなのかでしょう。「家族でも従業員だから雇用できる?」「雇用は出来るけど家族だからなにか別の方法があるの?」自分の家族の状況を踏まえて検討して下さい。

家族を雇う場合は手続き不要?

家族は基本的に従業員の扱いではありません。個人事業主の家族が一緒に仕事をする場合「専従者」という扱いになります。たとえば、本業が別にある奥さんが事務仕事を手伝っているので給与を払って「専従者」にしたい!と言うことは基本的に出来ません。「専従者」と言うのは文字通り、「この仕事専門で家族に従って働いているもの」という意味です。他に本業を持っていたら仕事専門という枠に当てはまりません。ですが、別の仕事をしていても「専従者」として扱い可能な場合もあります。詳しくは顧問税理士、会計士に状況を詳しく話し指示を仰いで下さい。また従業員の枠では無いため上記で説明してきた手続きは不要になります。

手続きが必要な場合とは?

手続きは不要になりますが、労災保険のみ特別加入を認められます。「勤務時間・給与形態・休暇など家族以外の従業員と変わらない」「雇用主の指示に従い労働している事が明確」が当てはまる場合のみ該当します。手続き内容など変わってくるため組合などに相談してみましょう。

ひとり親方でも従業員を雇うことは可能。各種手続きをお忘れなく!

一人親方が従業員を雇う場合のメリット・デメリットや手続きについて解説しました。従業員を雇う事で多方面の責任が増える事も確かです。メリット・デメリットを理解したうえで検討する事をおすすめします。