一人親方がアルバイトを雇ったら労災保険はどうなる?注意点や補償範囲も解説

一人親方として建設業を営んでいる方で、手が回らない繁忙期に一時的に従業員を増員したいと考えている方は少なくありません。実際に、一人親方が臨時雇用をするケースは多いのです。一人親方であるのなら大多数の方が「一人親方労災保険」に加入しているでしょう。しかし、一時的なアルバイトにも労災保険の加入義務があるのか、その手続きについては理解している方は少ないのではないでしょうか。今回はアルバイトを雇用する際の労災保険について、補償範囲や注意点なども踏まえて解説していきます。

そもそも一人親方がアルバイト雇うと一人親方じゃなくなるの?

一人親方の定義は「誰にも雇用されず、誰も雇用せず、家族以外では経営しない」ことです。そのため、アルバイトを雇用することで、一人親方の定義から外れてしまうのではないかと懸念する声をよく伺います。結論から言うと、アルバイトの雇用期間が年間100日以内であれば一人親方の定義に該当します。しかし、年間の雇用期間が100日を超えると、一人親方ではなく中小事業主に該当することになり、一人親方労災保険には加入できなくなるので注意が必要です。

労災保険はアルバイトにも適用される?

労災保険は勤務時間や雇用体系にかかわらず、全ての従業員に適用される制度です。派遣社員、パートタイマー、日雇い労働者でも労災保険が適用されるのです。そのため、一人親方がアルバイトを雇用する場合は労災保険に加入させる必要があります。さらに、従業員を雇用している雇用主自身も、労災保険に加入する義務があるので現在一人親方労災保険に未加入の方は必ず加入しましょう。アルバイトの労災保険の詳細について以下で詳しく解説していきましょう。

アルバイトは適用される法的根拠

アルバイトに労災保険が適用されることは、法律で定められています。まず、労働者災害補償保険法で「労災保険は原則として労働者を使用しているすべての事業に強制的に適用される」とされています。また、労働者の定義については、労働基準法の9条で「労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」とされています。つまり、一時的な雇用のアルバイトであっても「労働者」の定義になり、労災保険への加入は義務付けられているのです。

例外は?

全ての労働者に適用される労災保険ですが、農林水産業では例外となるケースがあります。具体的に言うと、労働者5人未満の個人事業の農業、畜産、養蚕又は水産業で特定のケースに当てはまる場合や、労働者の常時使用のない個人事業の林業で、年間使用延労働者数が300人未満の場合は、暫定任意適用事業とみなされ労災保険への加入は任意となります。ただしこの場合も、労働者の過半数が労災保険への加入を希望した場合は加入しなければなりません。また、労働基準法で業務上の怪我や病気は事業者の費用負担が義務付けられているので、労災に未加入であっても事業主の労働者への補償義務は発生します。

特別加入制度とは?

労災保険は基本的に事業者に雇用される労働者に適用される制度です。しかし、労働者以外にも業務の実態や災害の発生状況を踏まえた結果、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めています。これを「特別加入制度」と言います。特別加入が許可されるのは、中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者です。一人親方が労働者ではないのに労災保険が適用されるのは、特別加入制度の下で危険が伴う建設業で労働者同様に保護が必要と判断されているからなのです。

労災保険を選ぶときのポイントは?

アルバイトに労災保険が必要とは理解していても、自身が加入している一人親方労災保険とは異なるため、どのような労災保険に加入すればいいか悩む方は多いでしょう。アルバイトの労災保険は、特別な加入手続きは必要ありません。雇用した際に事業所単位で「保険関係成立届」と「概算保険料申告書」を労働基準監督署に提出すれば、労災保険に加入することになります。もしもの時は、現場の労災を使用することも可能です。しかし、一人親方仲間に事業の一部を依頼する際は、相手方も一人親方労災保険に加入していなければ労災保険の適用はされないので注意してください。ここでは一人親方におすすめの労災保険も紹介します。

おすすめの労災保険は「一人親方労災保険組合」

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そもそも一人親方と中小事業主の違いは?

一人親方と中小事業主の違いは、従業員の雇用形態にあります。先ほども少し触れましたが、一人親方は基本的には家族以外の従業員を雇用せず建設業を営む事業主を指します。アルバイトの雇用は、年間100日未満です。対して中小事業主は、アルバイトを含む従業員を常時雇用している事業主を指します。継続した雇用ではなくても、年間の雇用日数が計100日を超えれば個人事業主となるので注意が必要です。つまり業務拡大の計画があり、今後も人員を増やしたいのであれば、一人親方から中小事業主に労災保険を変更する必要があります。

労災保険でアルバイトが補償される内容は?

アルバイトの労災保険の保険料に関しては、すべて事業者の負担になります。そして労災保険の補償内容は、基本的には正規雇用の社員と全く変わりません。しかし、一部の補償に関しては労働者の収入金額に応じて変わる給付基礎日額を元に給付金額が算出されるため、収入に応じて変化があることは理解しておきましょう。アルバイトが対象となる労災保険の補償内容の中から、特に重要な項目を5つをピックアップしました。以下で詳細を解説していきましょう。

療養(補償)等給付

療養等給付は、災害や事故が発生した際、治療や薬の費用が負担される制度です。療養補償や療養給付とも呼ぶこともあります。労災病院や指定の医療機関では無料で診察が受けられますが、指定の病院がない場合は一時的にアルバイトが治療費を全額負担します。そして後から労働基準監督署へ請求すればその費用が支給されるという流れになります。治療費だけではなく、怪我が完全に治癒するまでの入院費や通院交通費を含む移送日まで、補償の対象になります。

休業(補償)等給付

休業(補償)等給付は、業務中や通勤途中の事故や怪我が原因で出勤できなくなった場合に、休業中の所得を補償する制度です。休業補償、休業給付とも呼びます。労働中の事故が原因で療養しており、労働できず賃金が受けていないことが確認できる場合、制度の対象となります。休業3日目までは待期期間となりますが4日目から受給可能で、1日につき給付基礎日額の60%相当の金額が給付される制度です。さらに、加えて休業特別支給金として、1日につき給付基礎日額の20%相当の金額が上乗せされます。

障害(補償)等年金/障害(補償)等一時金

障害(補償)等年金と障害(補償)等一時金は、業務上の災害や事故で病気やケガが治癒した後、障害が残った場合に支払われる年金、一時金のことを指します。障がいの等級によってどちらの制度が適用されるかが決まります。障害等級1級から7級までに該当する障害が残った場合は障害(補償)等年金が、障害等級が第8級から第14級の場合は障害(補償)等一時金が支払われます。どちらの場合も補償金額は給付基礎日額と障害等級をもとに計算されます。

傷病(補償)等年金

傷病(補償)等年金は、労働中の災害や事故で負った怪我が療養を開始した後、1年6ヶ月を経過しても治癒しない場合に支払われる年金です。この制度を利用する場合、障害が傷病等級表の第1級〜第3級に該当していることが条件となります。傷病等級に応じた特別支給金と特別年金も用意されています。傷病等級に応じて傷病特別支給金は定められており、傷病(補償)年金とは傷病特別年金等級ごとに「給付基礎日額の〇〇日数分」という計算方法で算出されます。

介護(補償)等給付

業務中の怪我や災害が起因となり、労働者が常時または随時介護を要する状態になった時に給付されるのが「介護補償給付」です。こちらの給付を申請するためには、以下の条件を満たす必要があります。
①障害(補償)年金もしくは傷病(補償)年金を受給する権利を持っている
②精神神経・胸腹部臓器に障害等級第1級3・4号、傷病等級第1級1・2号の障害がある
③両眼が失明すると同時に、障害または傷病等級第1級・第2級の障害がある
④現在進行形で介護を受けている
⑤介護老人保健施設などに入所していない

アルバイトの場合いつ補償される?

労災の補償を受けられるのは、業務中と通勤中とされています。業務中の事故や災害を業務災害、通勤中の災害や事故を通勤災害と言います。しかし、ひと言に業務中や通勤中と言っても、様々なケースが考えられるので実際に事故に直面した際には、労災の補償対象になるのかどうか頭を抱える一人親方は非常に多く見受けられます。そのような事態を避けるために、実際にアルバイトが労災の対象となるケースを、具体例を交えて以下で3パターンに分けて解説していきます。

通勤途中

通勤中に自家用車やバイクで転倒した場合も、基本的には労災保険の補償の対象になります。しかし、通勤中の事故は、労災保険が適用されないケースもあるので注意が必要です。「通勤」とは、自宅と就業場所の往復と定義され、それを「合理的な経路」といいます。合理的な経路から外れている場合、例えばコンビニエンスストア病院や選挙などに立ち寄ってから就業場所に行く場合は、補償の対象外となるのです。アルバイトが学生の場合、学校を経由して就業場所へ行く途中に災害に遭った際も、通勤の定義から外れ保証は受けられません。

労働中

労働中の事故や災害は、基本的にはすべて労災保険の補償の対象になります。転倒や事故による外傷だけではなく、真夏の労働による熱中症で倒れた際も、労災保険は適用されます。しかし、昼休みなどの休憩時間に発生した事故は業務起因性を満たさないと判断されるため労災認定はされません。つまり、昼休憩中に資材が落下して怪我した場合は、労災事故とは認定されないのです。同じように忘年会や歓送迎会での急性アルコール中毒なども、慰労目的ではなく業務の一環として行われる場合を除いては、原則として労災事故とは見なされません。

労働中に疫病などの感染

労働中に新型コロナウイルスなどの感染症に罹患し、隔離機関に業務ができない場合、感染経路が業務によることが明らかで、複数の感染者が確認された労働環境下の業務についていた場合は補償の対象となります。しかし、申請時には、新型コロナウイルス感染症の完成した経路や治療の経過、発症前14日間の行動など細かく記載する「申立書」の提出が必要です。申立書に基づいて労働基準監督署で保険給付を行うことができるか判断する、調査・聴取をする場合があります。

労災保険は一人親方がすべて手続きをしなければならない

アルバイトの労災保険を含む手続きは、基本的には一人親方がすべて行うことになります。アルバイトを雇用する際には、「労働条件通知書」という書類を提出し、雇用契約書にサインしてもらう必要があります。雇用保険の加入も必要です。下請けのみの会社であれば、工事現場の元請業者が労災保険に加入しているため、労災保険の加入は不要の場合もあります。しかし、元請けとして仕事を行う場合は加入する必要があります。年間勤務日数が100日未満のアルバイトには基本的には、現場の労災保険が適用されます。

一人親方がアルバイトを雇うときは、必ず労災保険を準備しましょう!

アルバイトにも労災保険は適用され、補償内容は正社員と変わりません。労災の保険の手続き、保険料は全て一人親方の負担になります。アルバイトが他の現場との仕事を掛け持ちしている場合は、全勤務先の業務負荷を総合的考慮したうえで労災認定がされるので、現在の就業状況についても確認しておきましょう。アルバイトの雇用日数が年間100日を超えるか否かで、一人親方として一時的な雇用となるか、中小事業主として従業員を雇用するか大きく変わります。後者の場合は一人親方の労災保険の適用から外れ、中小事業主として保険に加入し直す必要があり、アルバイトもその労災保険が適用されるようになります。労働条件をしっかりと確認したうえで、適切な条件で労災保険を準備してください。