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正社員と同じように仕事をしている従業員を一人親方として扱う「一人親方問題」。企業が負担するコストを削減するために従業員を一人親方として扱うケースが増えています。
しかし、従業員が一人親方になるとさまざまなリスクが懸念されます。福利厚生がきちんと受けられなかったり、中抜きが発生してしまったり、偽装請負と判断され罰則が発生することもあります。偽装請負にならないよう、派遣会社の情報や契約内容をしっかり確認してから契約を行いましょう。
今回の記事では、一人親方問題が発生する理由・リスク・偽装請負となるポイントなどをご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
偽装請負とは?
建築業界は人手・担い手不足が長年課題として続いている業界です。労働環境の改善対策として社会保険加入や有給休暇の付与義務などを徹底していますが、その分会社側の負担が大きくなってしまうのも事実です。
その結果、従業員を一人親方として扱って経費を削減しようとする「一人親方問題」が多発しています。一人親方は個人事業主と同じ扱いになるため、社会保険や雇用保険に加入できません。こうして会社のコストを削減する抜け道として、一人親方の偽装請負が多発しています。
社員を偽装請負する理由
「どうして社員を偽装請負するの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?実は、社員が1人増えるごとに会社が負担する出費も増えるので、社員を一人親方扱いして負担を減らすためです。
社員が増えると、厚生年金や社会保険・労災保険などを会社側が支払います。福利厚生を整えるために必要な経費を抑えようと、中には一人親方になるのを勧めてくる会社もいます。
年金
会社に所属している期間は、会社側が保険料を一定額負担してくれます。将来もらえる年金の金額も月10万円前後です。しかし、もし一人親方扱いを勧められ受け入れてしまった場合は、受け取れる金額が月7万円程度まで下がってしまいます。御自身で国民健康保険にも加入し、従来よりも高い金額の保険料を納めなければなりません。
一人親方として十分な数の請負契約があったり、単価が高い仕事を一定数契約できていれば問題ありませんが、社員と同じ仕事量で一人親方扱いになった場合は、ご自身が負担する金額が増えてしまいます。
社会保険料
もしも一人親方が会社を設立し、経理や事務をパートや準社員に頼もうとすると、社会保険料の負担がのしかかってきます。現在は50人以上の会社のみ対象ですが、年々政府が取り立て強化をしているのも事実です。
消費税の支払い削減
会社が支払う消費税は、人件費の割合が高いほど納税額が増える仕組みです。もしも社員が一人親方として独立すれば、会社が収める税金が減らせるというメリットがあります。
社員が一人でも多く一人親方として独立し、業務請負契約が可能になれば、業務委託費は課税仕入れに算入できます。会社の消費税はその分安くなり、加えて福利厚生の出費も抑えられるのです。
偽装請負の問題点
建設業界の一人親方問題に限らず、IT業界のアウトソーシングなどでも偽装請負が問題となっています。しかし、中には「一体何が問題なの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
ここからは、偽装請負の4つの問題点をご紹介します。起こりうるリスクや発生する原因などと合わせて、詳しく解説します。
福利厚生が受けられない
偽装請負は、責任の所在が不明瞭になる点がさまざまな問題に繋がります。雇用条件や労働環境が曖昧な対応になってしまい、特に福利厚生が提供されない点が問題です。
派遣や社員が現場に行くと、労働者は勤務先企業と雇用関係があるため労働法が適用されます。しかし、請負になると雇用関係がないため、労働法が適用されなくなってしまいます。労働法が適用されないと、健康保険・残業手当・住宅・通勤手当の給付などは一切ありません。会社が有利になってしまうのが大きな問題です。
契約解除や解雇のリスクも
請負で仕事を引き受けている場合、企業側から一方的に契約解除されてしまったり、損害が発生した場合に損害賠償を請求される可能性があります。
社員として働いている場合は、合理的な理由がない限り、雇用主である会社の都合で契約解除は不可能です。また、損害が発生しても、労働者本人に悪意や過失がない限りは「使用者責任」扱いになり、会社が賠償責任を負います。
中抜きが発生する
請負で仕事を行なった場合、複数の企業が関与する場合も多いです。中間に入った企業によって中抜きが行われ、労働者が受け取れる賃金が少なくなってしまう可能性もあります。
罰則のリスク
偽装請負をした場合、
①労働者派遣法の罰則
②職業安定法の罰則
③労働基準法の罰則
以上の3つの罰則が課せられる可能性があります。
①労働者派遣法の罰則は、受注側の会社に罰則が課せられるものです。
②職業安定法の罰則は、受注・発注側の違法行為を行なった者・従業員に指示をした会社の代表者や管理職など、広範囲に罰則が課せられます。
③労働基準法の罰則には、中間搾取の排除が規定されており、違法な中間搾取があった場合に50万円以下の罰則が課せられます。
偽装請負となる場合とは
偽装請負となるケースをあらかじめ確認しておきましょう。偽装請負となるケースは主に3つあります。
①発注元企業から直接指揮命令を受けている
請負は一人親方、個人事業主と同じ扱いですので、指揮命令権は請負主にあります。発注元が業務開始時間や方法を指示することはできません。
②発注元企業がスタッフを選んだり評価したりしている
請負の場合、発注元の企業が請負スタッフを選んだり、人数指定をしたりすることは禁止されています。スタッフを評価することも不可能です。
③発注元企業から業務上の規律などを規定している
請負での指揮命令権は請負主にあります。発注元企業が自社の規律を強制しようと通達・管理はできません。
偽装請負とみなされないようにするためには?
偽装請負とみなされないようにするためには、主に2つのポイントがあります。
1つ目は「請負と派遣の違いを把握する」2つ目は「契約内容を綿密に確認する」です。
偽装請負をしようとする会社が、直接的な言葉を使って偽装請負を依頼してくることはほぼありません。知識が少ない社員が知らぬうちに偽装請負してしまうように、言葉巧みに契約をしてくる場合が多いです。ですので、ご自身の知識を増やして偽装請負とみなされないように対策を行っておきましょう。
請負と派遣の違いを把握する
偽装請負とみなされないためには、会社と契約を行う前に請負・派遣の違いをしっかりと把握しておきましょう。請負と派遣の指揮命令権の所在や、請負から成果提出までの流れも理解しておくのがおすすめです。
契約内容を綿密に確認する
相手の会社情報はもちろん、契約内容も綿密に確認するのがポイントです。派遣元の会社がコンプライアンスを守っているかを確認しましょう。
もしも派遣元の会社が人材派遣業の許可を取得していれば、コンプライアンスに基づいた派遣契約をしていると判断できます。さらに細かく確認したい方は、派遣スタッフから派遣元との雇用契約書の写しを提出してもらうのがおすすめです。
従業員が独立して一人親方になることは問題ない
建設業界において、従業員が独立して一人親方になること自体は問題ではありません。自分から望んで独立し、次第に組織や会社を設立する方も多いでしょう。
一人親方問題として注視されているのは、社員と同じ扱いなのに福利厚生がなく、同じ権限で働かされている点です。一人親方になること自体は全く問題ありませんので、将来独立を検討している方はご安心ください。
【まとめ】偽装請負には賠償責任や罰則のリスクも!偽装請負にならないように注意しよう
従業員の一人親方扱いに関する問題について詳しくご紹介してきました。一人親方問題は近年増加している雇用のトラブルの1つです。偽装請負はさまざまなリスクがあるだけでなく、最悪の場合罰則が課せられる可能性もあります。
一人親方問題を減らしていくためにも、企業側は従業員や一人親方が安心して働ける環境を整備したり、人材確保に力を入れる必要があります。コンプライアンスの徹底と、適正な請負ができるように理解を深めておくのも重要です。