電気工事に必要な『電気工事業者登録』とは?登録の必要性や手続きについて解説!

電気工事業を始める際は、定められている法律に沿って、正しく「電気工事業者登録」を行う必要があります。

しかし、電気工事業者登録の仕組みは煩雑であることから、「登録の仕方がいまいち良く分からない」「そもそも自分が要件に当てはまっているのかを知りたい」という人も少なくないでしょう。

そこで当記事では、電気工事業者登録の概要や登録の必要性、具体的な手続き方法について網羅的に解説します。今後、電気工事業を始める予定のある方は、ぜひご一読ください。

『電気工事業者登録』とは?

『電気工事業登録』とは、電気工事業を開業する際に、各都道府県に対して提出する必要がある登録書のことを意味します。

電気工事業登録をする必要がある事業範囲は、「一般用電気工作物」及び「自家用電気工
作物」に関する事業です。無事に申請が認められた後は、「登録電気工事業者」として、さまざまな仕事に従事できます。

「電気工事業者登録」と「建設業許可」の違い

「電気工事業者登録」とよく並んで語られる制度に、「建設業許可」があります。建設業許可とは、建設業法第3条に基づいた建設業の制度で、建設業許可を有している場合には、建設工事の請負・施工が認められます。

2つの制度は、名称や申請先、要件などが異なることから、一見すると無関係に思えますが、実際には建設業許可を所有していると、電気工事業登録はみなしとなるなど、連動する部分も存在します。

例えば、先ほど電気工事業者として電気工事の施工にあたるためには、電気工事業者登録を受けなければならないとお話しました。しかし、電気工事業者登録を受けている場合には、建設業の許可を持っていなくとも、500万円未満の工事であれば、自社で施工することが可能になるのです。

電気工事業者登録が必要になる工事内容

では、電気工事業者登録が必要になる工事の内容には、どのようなものが挙げられるのでしょうか。以下では、電気工事業者登録が必要になる工事内容について紹介します。

600V以下、50kW未満の電気工作物における工事

まず挙げられるのは、600V以下、50kW未満の電気工作物における工事です。この工事は、通称、「一般用電気工作物」と呼ばれています。一般用電気工作物の代表的な工事内容としては、一般家庭や商店などの屋内配電設備や、小出力発電設備があります。

最大出力500kW未満の電気工作物における工事

最大出力500kW未満の電気工作物に関する工事も、「一般用電気工作物」同様、電気工事業者登録が必要です。電気工事業者登録をせずに、工事を請け負うと、罰則が科されます。

電気工事業者登録が不要になる工事内容

電気工事業者登録が必要不可欠な工事がある一方で、電気工事業者登録は不要な工事も存在します。下記では、電気工事業者登録が不要な工事の内容を説明します。

ネオン・非常用予備発電装置に関わる工事

ネオン・非常用予備発電装置に関わる工事は、電気工事業者登録をしなくても問題ありません。

600V以下自家用電気工作物に関わる工事

600V以下の自家用電気工作物に関わる工事も、軽微な工事であることから、電気工事業者登録をする必要が無いとみなされています。

電気工事業者の4つの登録区分

電気工事業者の登録区分は、 「登録電気工事業者」「みなし登録電気工事業者」「通知電気工事業者」「みなし通知電気工事業者」の4つです。以下で、それぞれの登録区分の違いについて詳しく見ていきましょう。

登録電気工事業者

「登録電気工事業者」とは、「一般用電気工作物」「自家用電気工作物」に関する電気工事を行う事業者のうち、建設業許可を取得していない事業者を指します。

みなし登録電気工事業者

「みなし登録電気工事業者」とは、「一般用電気工作物」「自家用電気工作物」に関する電気工事を行う事業者のうち、「建設業許可」の取得が済んでいる事業者を指します。

通知電気工事業者

「通知電気工事業者」とは、「一般用電気工作物」に関する電気工事を行う事業者のうち、まだ建設業許可を取得していない事業者を指します。

みなし通知電気工事業者

「みなし通知電気工事業者」とは、「一般用電気工作物」に関する電気工事を行う事業者のうち、建設業許可の取得が済んでいる事業者を指します。

登録と通知の違い

電気工事業者の登録区分は、 「一般用電気工作物」の電気工事を行うか否かで「登録」もしくは「通知」に分けられます。

具体的には、はじめに「建設業許可」を取得しているかによって、種別を分けます。建設業許可がある場合には「みなし登録」扱いになり、建設業許可が無い場合と比べて、申請書類や添付書類が少なく済みます。一方、建築業許可が無い場合は、電気工事業登録の申請を行わなければなりません。

この際、申請に関しては、「電気工事業の業務の適正化に関する法律」において、電気工作物の種類により「登録」と「通知」に区別されることになります。

通常、電気工作物は、「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」に分けられますが、事業登録において重要なのは、「事業用電気工作物のうち、自家用電気工作物で最大出力500Kw未満の設備工事」に関わるかどうかという点です。

この範囲内での、電気工事業務のみを行う場合は、事業者登録は「通知」で構いませんが、これ以外の電気工事事業は、全て登録手続きが必要になるのです。

ここで気になるのは、「登録」と「通知」に、どのような違いがあるかということですが、「登録」では、「主任電気工事士を設置している」「経済産業省令が定めている器具を所有している」という、2つの条件を営業所ごとに満たしている必要があります。

一方、「通知」では、経済産業省令が定めている器具を所有しているという条件のみ、営業所ごとにクリアしていればOKです。つまり、「登録」の場合は、主任電気工事士を雇用する必要があり、「通知」の場合は、主任電気工事士を雇用する必要がない、という違いがあるのです。

電気工事業者登録のために必要な手続き

この章では、電気工事業者登録に必要な手続きの詳細について解説します。

申請書の提出・登録証の交付

まず行うべき項目として、電気工事業者登録申請書の提出があります。この際、電気工事業を営む営業所が、ひとつの都道府県のみの場合は、該当の都道府県知事に登録申請書を提出します。反対に、複数の都道府県にまたがって営業所を展開する場合には、経済産業大臣に登録申請書を提出するのがルールです。

また、登録申請書を提出した後は、都道府県知事または経済産業大臣から登録証が交付されます。登録証は、電気工事業者としての登録が済んでいることの証明になる重要書類ですので、無くさないように保管しましょう。

満たすべき要件

登録電気工事業者が満たすべき要件には、「一般用電気工作物」に関する電気工事を行う営業所ごとに、「主任電気工事士」を配置することが挙げられます。

主任電気工事士は、資格ではないことから、誰でもなれると思われがちですが、実際には、下記のいずれかの要件を満たしている必要があります。

第一種電気工事士であること
第二種電気工事士免状の交付後、電気工事に関する実務経験を3年以上有する第二種電気工事士であること
なお、主任電気工事士は、原則として、ひとつの営業所につき、ひとり配属されていなければなりません。ひとりの主任電気工事士が複数の営業所を掛け持ちすることはできませんので、ご注意ください。
また、主任電気工事士として認められるのは、「個人事業主」「役員」「直接雇用者」のみに限定されます。派遣社員などの間接雇用者が主任電気工事士になることはできないことを念頭に置いておきましょう。

有効期間

電気工事業者登録の有効期間は、5年間です。有効期間の満了後、引き続き電気工事業を営む場合には、更新登録をする必要があります。

電気工事業者通知のために必要な手続き

「登録電気工事業者」ではなく、「通知電気工事業者」として事業を営む場合には、事業を開始する10日前までに、「電気工事業開始通知書」を提出する必要があります。

通知書は、電気工事業者登録同様、1都道府県のみに営業所を設置する場合は該当の都道府県知事に、いくつかの都道府県に営業所を設置する場合は、経済産業大臣に提出します。
なお、通知電気工事業者については、登録電気工事業者のように、主任電気工事士を配置したり、5年ごとに更新手続きを行う必要はありません。

電気工事業者登録に関してよくある質問

ここまでの内容で、電気工事業者登録の概要や具体的な登録手順についての理解が深まったのではないでしょうか。最後に、電気工事業登録に関してよくある質問に回答します。電気工事業者登録をする際の参考にしてください。

Q. 建築業許可を受けた場合に必要な手続きは?

前述した通り、「登録電気工事業者」が期間中に建設業許可を取得した場合は、その時点で「登録電気工事業者」としての効力がなくなります。そのため、改めて「みなし登録電気工事業者」として「電気工事業開始届出書」を都道府県知事もしくは経済産業大臣に提出する必要が出てきます。

また、「通知電気工事業者」が建設業の許可を受けた場合も、改めて「みなし通知電気工事業者」として、「電気工事業開始通知書」を都道府県知事もしくは経済産業大臣に提出する必要があります。

Q. 個人事業から法人化した場合に必要な手続きは?

これまで、個人事業主として電気工事業を営んでいた方が、法人化し、会社を経営する場合は、登録電気工事業の承継、譲渡手続きが必要になります。

この際、個人事業主として登録していた区分が「みなし登録電気工事業者」の場合は、承継、譲渡による手続きが行えません。これにより、「電気工事業者廃止届出書」の提出と併せて、新たに「電気工事業開始届出書」を提出する必要があります。

【まとめ】電気工事業者登録は電気工事を施工する業者には必須!登録区分についても要チェック!

今回は、電気工事業者登録の概要や登録の必要性、具体的な手続き方法について解説しました。

電気工事業を営む際は、原則として個人・法人に関わらず電気工事業者登録を行う必要があります。ただし、なかには登録が不要な工事も存在するため、自身が対応する業務範囲をしっかりと考慮したうえで、必要に応じて電気工事業者登録の申請をしましょう。

また、電気工事業者は、建設業許可の取得状況や、主任電気工事士の有無によって、4つの登録区分に分かれています。それぞれで、請負可能な工事の内容は異なるため、申請の際は、しっかりと確認することがポイントです。