建設業の元請が負う責任の範囲や対応策をわかりやすく解説!

「下請業者の施工ミスでクレームが来たら、元請の責任なのか?」
「工事現場で事故が起きた場合、損害賠償は誰が負うのか?」
建設業の元請業者として、こうした疑問や不安に直面することは珍しくありません。

契約不適合責任や品確法による瑕疵担保責任、安全配慮義務など、元請が負う責任は多岐にわたり、対応を誤ると大きなトラブルに発展してしまいます。

今回の記事では、元請業者が負うべき責任の範囲と、それぞれのケースにおける具体的な対応策について解説します。施工ミスや労災事故が発生した際のリスクを最小限に抑えるために、事前に知っておくべきポイントを詳しく紹介していきます。

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建設業の元請が負う責任の範囲

建設業の元請業者は、下請業者の施工ミスによる欠陥や不具合に対し、契約不適合責任を負います。

さらに、品確法に基づく瑕疵担保責任により、構造耐力や防水に関する瑕疵は引き渡し後10年間保証されます。

また、施工中の事故についても安全配慮義務を負い、労働者や通行人の事故によっては損害賠償責任を問われるケースがあります。それぞれの責任の具体的な内容について、以下、解説していきます。

下請の施工ミスによる建物の欠陥や不具合

住宅の建設では、元請業者(ハウスメーカーや工務店)が下請事業者に工事を依頼することがあります。しかし、下請業者による施工ミスが発生した場合、その責任は元請業者が負うことになります。

これは、施主(住宅を発注した人)と直接契約を結んでいるのが元請業者だからです。

たとえ下請業者の施工ミスが原因で建物に欠陥や不具合が生じたとしても、施主は元請業者に対して修補を求められます。元請業者は、契約上の責任を果たすため、下請業者に修理を指示したり、必要に応じて自ら対応する義務を負うのです。

契約不適合責任

契約不適合責任とは、請負契約で取り決めた内容と異なる品質や仕様の工事が行われた場合に、施工業者(請負人)が施主(注文者)に対して負う法的責任のことです。

民法第562条以降に定められており、新築住宅の工事に不備があった場合、施主は元請業者に対して「修繕請求」「代金減額請求」「損害賠償請求」などを行えます。

この場合、元請業者は施主からの請求に対応した後、下請業者に対して修補や損害賠償を求めることが可能です。

品確法上の瑕疵担保責任

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、新築住宅の工事請負契約に関して、通常の契約不適合責任とは別に「瑕疵担保責任」が定められています。

これは、住宅の安全性や耐久性を確保するために設けられた特則で、特に構造耐力や雨水の浸入に関わる部分に不具合(瑕疵)が生じた場合に適用されます。

責任期間が「引き渡しから10年間」と定められており、短縮が認められない点が特徴的です。構造や防水に関わる瑕疵が発覚した場合、施工業者は長期間にわたって責任を負うことになります。

施工中に発生した事故

建設現場で労災事故が発生した場合、元請会社は下請会社の労働者に対しても責任を問われる可能性が高いとされています。これは、元請企業が「使用者」と見なされるためであり、労働基準法のもとで災害補償の義務が発生するためです。

現行の労働法制では、元請はすべての下請に対して安全配慮義務を負う立場であり、直接の雇用関係がない孫請業者や一人親方の事故であっても、元請企業が「使用者」と見なされることで責任を負うケースもあります。

通行人の事故

建設現場での作業中に通行人が事故に巻き込まれた場合、元請業者が責任を負うかどうかは、下請業者との関係性によって異なります。 重要なポイントは、元請が下請の作業をどの程度指揮・監督していたかです。

元請業者が実質的な指揮・監督をしていたと判断されれば、通行人への損害賠償責任を負う可能性が高まります。一方で、下請業者が元請から独立した事業者として業務を遂行していた場合、元請は原則として責任を負いません。

下請業者の作業員の事故

作業現場で下請業者の労働者が事故に遭った場合、元請業者が責任を負うかどうかは、下請との関係性によって異なります。

元請が危険防止の措置を怠り、それが事故の原因と認められた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。一方で、下請業者が元請とは独立した事業者として工事を請け負い、元請の直接的な指揮監督下になかった場合、元請は原則として責任を負いません。

一人親方の事故

一人親方が業務中に事故に遭った場合、元請企業が責任を負うかどうかは、両者の関係性や事故の状況によって異なります。

原則として、一人親方は個人事業主であり、元請企業と「請負契約」を結んでいるため、元請の労災保険は適用されず、元請に労災補償の義務はありません。 そのため、一人親方自身が労災保険の特別加入制度に加入することが推奨されています。

建設業の元請が下請に損害賠償責任を請求できるケース

建設工事において、元請企業は施主と直接契約を結ぶため、施工ミスが発生した場合、その責任を施主に対して負う立場になります。

しかし、施工ミスの原因が下請事業者にある場合、元請は下請に対して損害賠償を請求できる可能性があります。元請と下請の関係も請負契約に基づいているため、下請が契約通りの業務を遂行しなかった場合には、その責任を問うことが可能です。

ただし、請求が認められるかどうかは、契約内容や損害の程度、工事の状況によって異なります。トラブル発生の際には、専門の弁護士に相談するのが良いでしょう。

建設業の元請の責任に対する対応策

※H3見出しを踏まえて執筆してください。

施工ミスへの対応策

施工ミスによる欠陥が発覚した場合、元請は迅速かつ誠実な対応が求められます。

施主との信頼関係を維持するための示談交渉、下請事業者との責任分担協議、必要に応じた法的手続きの活用を適切に行うことで、トラブルを円滑に解決できます。

弁護士の助言を受けながら対応するのが一般的です。以下、対応策2つについて深掘りします。

施主と話し合う

施工ミスにより施主に不便や不快をかけてしまったことを、誠意を持って謝罪することが最も重要です。そのうえで、もし発見された欠陥が修補可能であれば、施工業者がその修補費用を負担することが基本的な対応となります。

欠陥が修補できない場合、代金減額や損害賠償を検討する必要があります。具体的な対応方法を施主と話し合い、解決策を見つけることが重要です。施主に対して積極的に代替案を提案し、契約解除のリスクを避けましょう。

責任の分担を話し合う

元請と下請事業者の間での責任分担の協議では、まず、元請と下請事業者の間で結ばれた工事請負契約書を確認することが重要です。契約書に責任範囲や瑕疵担保に関する条項がしっかりと定められているかを確認し、どのような責任が発生するのかを明確にします。

そして、欠陥の原因が下請事業者の施工ミスによるものかどうかを検討しますが、指示内容が不明確な場合や誤っている場合、元請にも一定の責任が生じる可能性があります。

専門の弁護士を挟むことで、法的観点から双方の主張を整理し、公平な解決を目指してくれます。

労災への対応策

建設業では労災事故が発生するリスクが高いため、元請企業が責任を問われることを前提として、事故を防ぐための予防策と万が一の事故発生時に備えることが重要です。

以下、労災への対応策を2つ解説します。

ガイドラインを遵守する

労災事故を防ぐためには、国や各団体が定めるガイドラインを遵守することが不可欠です。

法令遵守、安全衛生管理体制の確立、徹底した安全教育、現場課題の改善などを元請企業が責任を持って実行することが、労災防止に繋がり、企業の持続的な運営にも大きく貢献します。

労災上乗せ保険を活用する

建設業で労災事故が発生すると、元請企業は高額な損害賠償リスクを負うため、労災上乗せ保険を活用することが重要です。この保険は、企業を守るためだけでなく、下請業者を保護することにも繋がります。

そもそも、政府の労災保険は、労働者やその遺族に一定の給付を行いますが、労災訴訟で発生する「逸失利益」や「慰謝料」については十分に賄えません。

巨額の損害賠償にも対応でき、自社の正社員だけでなくすべての下請け業者や一人親方も補償対象としてくれる労災上乗せ保険に加入することで、元請企業は労災事故発生時の高額な経済的リスクを軽減できます。

話し合いでまとまらない場合は法的手続きを活用する

施工ミスや欠陥に関する責任分担について、話し合いで合意が得られない場合、法的手続きを活用することが有効な手段となります。

裁判所で調停委員や裁判官が当事者間に入り、話し合いによる解決を目指す「民事調停」や、裁判所ではなく、第三者機関(建築工事紛争審査会など)があっせん・調停・仲裁をする「建築ADR」、最終的には「訴訟」が選択肢となります。

法的手続きに進む前に、弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることが有利な解決への第一歩となります。

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【まとめ】建設業者の元請が負う責任はケースによって異なる!ガイドラインを遵守し安全な工事を実現しよう

今回の記事では、建設業の元請業者が負う責任について解説しました。元請は、下請業者の施工ミスによる建物の欠陥に対して契約不適合責任を負うだけでなく、品確法による瑕疵担保責任、安全配慮義務など多岐にわたる責任を担っています。

また、工事中に発生する事故に関しても、労働者や通行人の安全を確保する義務があり、場合によっては損害賠償責任を問われることがあります。これらの責任は、契約内容や工事の状況によって異なり、明確な対応策を講じることが重要です。

トラブルを未然に防ぐためには、契約の適正な締結、現場の安全管理、法令やガイドラインの遵守が不可欠です。万が一問題が発生した場合は、施主や下請業者と誠実に話し合い、適切な対応を行いましょう。元請業者としての責任を理解し、安全で円滑な工事を実現しましょう。

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