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建設現場での品質検査は、構造物の安全性や耐久性を左右する重要な業務です。
しかし、「検査作業に時間がかかって工程が圧迫される」「人手不足で品質を安定させるのが難しい」といった悩みを抱える現場も少なくありません。
近年、こうした課題に対応する手段として、AI(人工知能)の活用が進められています。
本記事では、建設業における品質検査の現状から、具体的なAI活用事例、導入のメリットや手順、注意点までを幅広く解説します。
建設業における品質検査の現状
建設現場では、品質検査に多くの労力と時間が割かれています。人手不足や検査精度のばらつきといった課題が顕在化しており、従来の方法だけでは対応が難しくなっています。
ここからは、3つの観点から見た現状を詳しく説明します。
技術者が高齢化している
国土交通省のデータによると、2023年時点で60歳以上の技能者が全体の約25%を占めており、65歳以上の従事者は52万人以上にのぼります。
一方で、29歳以下の若手人材は全体のわずか12%程度しかおらず、若手の入職者数が減少傾向にあるため、今後さらに高齢化が進行すると予測されています。
特に、2025年には建設業界で約90万人の働き手が不足するとも見込まれており、ベテラン技術者の大量引退によって、現場の技術やノウハウの継承が困難になるリスクが高まっています。
このような状況は、品質検査の現場でも技術力や専門性の維持が難しくなり、品質確保に大きな影響を及ぼしています。
出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況についてp7」
時間や手間がかかっている
品質検査は目視や手作業に依存しており、効率化が進みにくい業務の1つです。施工プロセスでは現場確認や立会いの回数が多く、検査員の負担が増しています。
一方で、現場技術者の減少や監督業務の多様化により、臨場機会は減少傾向にあり、検査体制の維持が難しくなっています。
さらに、検査記録は依然として紙ベースで行われることが多く、データの集計や共有に時間がかかります。書類や写真などの証拠資料作成も煩雑化しており、業務全体の見直しが求められています。
こうした状況の背景には、人員不足と業務の複雑化があり、現場対応と書類作成の双方でコスト負担が増しています。
費用が増加している
建設業界では、現場予算の制約が厳しくなる中で、検査業務の手間や人員確保にかかるコストが増えており、これが全体の工事費の上昇要因となっています。
特に、技術者の高齢化や人手不足によって、限られた人員で多くの検査業務をこなさなければならず、外部の専門家や第三者機関への依頼が増えることで費用がさらに膨らむケースも見られます。
また、品質検査の厳格化や証拠資料の充実化に伴い、現場対応や事務作業にかかる間接費も無視できません。
このように、品質確保のためのコスト増加は、建設プロジェクト全体の収益性や効率性にも影響を及ぼしています。
建設業における品質検査でのAI活用事例
実際の現場では、AIがどのように品質検査に活用されているのでしょうか。
ここでは、5つの事例を紹介します。
ひび割れ点検
東北中央自動車道・古川橋の工事では、橋梁の壁高欄に対する出来形計測とひび割れ点検にAIとロボット技術を導入しました。
計測ロボットが寸法計測と高解像度撮影を同時に行い、取得した画像はAIが解析してひび割れの位置や大きさを自動で抽出します。帳票も自動生成されるため、従来の人手作業を大幅に削減できます。
これにより、現場作業の省力化や検査の標準化が進み、建設現場における品質管理の新たな方法として位置づけられています。
生コンクリートの性状判定
東京外環中央北側ランプの工事では、生コンクリートの品質を客観的かつ効率的に評価するために、AIと画像解析技術を用いたシステムが導入されました。
コンクリート表面の色やツヤ、気泡の有無などをAIが解析し数値化することで、主観に頼らない品質判定が可能となります。
さらに、打継ぎ部の良否判定やスランプ・単位水量といった性状もリアルタイムで評価され、全量を対象とした検査が実施されます。これらの検査結果は共通のデータプラットフォームで一元管理され、帳票も自動で作成されます。
たわみ量の推定
設楽ダムの盛土工事では、タイヤローラに搭載したレーザースキャナとカメラを用いて、タイヤの接地面を連続的に撮影し、得られた点群データや映像の変化をクラウドに送信します。
これらの情報をAIが解析することで、たわみ量や締固め状態を推定し、従来のプルーフローリング試験の代替として機能しています。
解析結果は3次元の地形モデルとして可視化され、盛土の状態を画面上で直感的に確認できます。これにより、全層にわたる品質管理を効率的かつ均一に進めることが可能になります。
コンクリートの充填状態の判定
国道24号大和御所道路の工事では、鋼製橋脚の基礎コンクリート打設時に、フレームに設置した振動センサーで充填状況を計測しています。センサーの表示はAIカメラが自動で読み取り、充填不足箇所を特定します。
解析結果はクラウドで共有され、現場や遠隔地からもリアルタイムで確認できます。充填不足があれば現場に即時通知され、迅速な対応が可能になります。
この仕組みにより、コンクリート工の品質の均一化と省力化が進み、施工管理の効率向上と他現場への展開も視野に入れた活用が進められています。
床版の配筋検査
中部横断自動車道・塩之沢川橋の工事では、ドローンと画像認識AIを活用した自動配筋検査システムが導入されました。
従来の手作業による計測では時間や労力がかかり、人的ミスや抜き取り検査による網羅性の不足が課題でしたが、ドローンによる高精細な空撮で床版全体の配筋状況を効率的に取得し、AIが鉄筋の位置や配置を正確に解析します。
これにより、最大75%の作業省力化と橋梁全体の配筋検査が可能となり、検査の信頼性も大幅に向上しています。国土交通省のプロジェクトでも高く評価されており、今後多くの現場への展開が期待されています。
建設業における品質検査にAIを活用するメリット
ここでは、検査のばらつきを抑えながら、作業の最適化やコスト削減につながるAI活用の3つのメリットを紹介します。
品質の一貫性を向上できる
AIを活用すると、検査作業におけるヒューマンエラーや担当者ごとの判断の違いを抑え、品質の一貫性を保ちやすくなります。例えば、橋梁のひび割れ検査では、人の目では見落とされやすい微細な亀裂も、AIが画像データから自動で検出できます。
AIは常に一定の判定基準で処理するため、検査ごとの精度のばらつきが少なくなり、均質な品質評価が可能になります。
このような仕組みによって、現場ごとの品質差が減り、施工後の不具合の防止や構造物の長期的な安定維持にもつながります。
業務を効率化できる
AIを活用することで、従来は人手に頼っていた検査作業の一部が自動化され、全体の作業時間を短縮できます。
例えば、ドローンによる空撮とAIによる画像解析を組み合わせれば、広範囲の配筋検査を短時間で網羅でき、抜き取り検査に必要だった手間や人員を抑えることが可能です。
さらに、取得したデータはリアルタイムでクラウドに集約されるため、現場と管理部門との間で情報をすばやく正確に共有できます。その結果、判断や対応にかかる時間が短くなり、作業の停滞や手戻りを減らす一因にもなっています。
費用を削減できる
AIを用いた品質検査は、人的ミスによる手戻り工事の減少や検査工程の短縮によってコスト削減効果が期待できます。
例えば、AIによる全量検査が可能になると、従来のサンプリング検査に伴う不良品の見逃しや過剰検査のリスクが減少します。さらに、帳票作成や報告書の自動化により事務作業の負担も軽減され、労務コストの低減にもつながります。
こうしたコスト面の改善は、限られた予算内での品質確保や競争力強化に直接つながり、持続可能な建設プロジェクト運営の支えになり得ます。
建設業における品質検査にAIを導入する手順
ここでは、品質検査にAIを導入する手順を3つの段階に分けて説明します。
1.目標を設定する
AIを品質検査に導入するには、最初に、現場で抱える具体的な課題を洗い出します。例として、検査のばらつきによる品質不安定、検査員の作業負担の増大、検査時間の長さなどが挙げられます。
次に、これらの課題に対してAIで何を改善したいのかを明確にします。ここでは、検査の均一化や見落としの削減、作業工程の簡略化といった目的が考えられます。
この段階で導入対象の工程や範囲を決定し、期待される効果の実現可能性についても慎重に検討します。
2.適切なAIツールを導入する
設定した目標に応じて、現場の実情に最適なAI技術やシステムを選定します。画像認識AIや振動センサー連携型の解析ツール、ドローンによる空撮とAI解析の組み合わせなど、選択肢は多様です。
導入にあたっては、必要なデータの種類や取得手段、撮影機材の性能などを検討し、段階的にAIモデルを構築・学習させることが求められます。また、既存設備や運用体制との連携も考慮し、現場作業員に対する操作教育や運用マニュアルの整備も欠かせません。
3.効果測定を行う
AI導入後は、導入時の設定目標に対する成果を客観的に評価するために、効果測定を継続的に実施します。
検査の精度向上率、作業時間の短縮度合い、運用コストの削減幅など複数の指標を用いて、定量的に効果を把握します。必要に応じて、AIモデルの再学習やシステム調整を行いながら、より精度の高い検査を目指します。
加えて、蓄積された検査データを活用することで、品質管理の高度化や作業プロセスの最適化に役立てることが可能です。
こうした継続的な評価と改善を重ねることで、AIの性能を最大限に引き出せます。
建設業における品質検査にAIを導入する際の注意点
建設業でAIを導入する際は、事前にいくつかの注意点を把握しておくことが重要です。
まず、AIに対応した業務フローの見直しが必要です。従来と異なる手順に戸惑わないよう、現場全体で運用設計を調整する必要があります。また、AIの判断に頼りきらず、現地の条件や法令を踏まえた人による確認も欠かせません。
次に、初期費用や運用コストの見通しを立てたうえで、データ収集や管理にかかる労力も考慮する必要があります。高精度な検査には、現場環境に即した大量の学習データが不可欠です。
さらに、AIが苦手とする例外対応や複雑な判断については、人の判断力が依然として不可欠です。生成AIを使う場合は誤情報や情報漏えいのリスクがあるため、出力内容の確認体制も整える必要があります。
こうした点を踏まえ、制度や規格に沿った設計と運用体制の整備が必要です。
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【まとめ】建設業における品質検査でAIを活用してより安全な建設物を実現しよう!
建設現場では、様々な検査にAIが取り入れられ、精度の高い検査や広範囲の確認が可能になっています。
AIの導入により、品質のばらつきを抑えやすくなり、作業時間やコストも抑制されます。人手に頼っていた工程の自動化は、検査方法の見直しにもつながります。
導入を進める際は、課題の整理と目的に合ったツール選定と導入後の効果検証・調整も欠かせません。
ただし、AIに頼りきらずに、人の判断や現場確認との併用が求められます。安定した運用には、適切な設計と体制づくりが必要です。
建設業における工程管理へのAI活用についてはこちらの記事で解説しています。ぜひこちらもご確認ください。