建設業における工程管理へのAI活用とは?事例やメリットなどを解説

「もっと効率的に現場を回せないか」「ベテランの勘に頼らず安定した管理ができないか」と悩んでいる建設現場の管理者は多いのではないでしょうか。

加えて、業界全体のデジタル化が他産業と比べて遅れていることもあり、AIの導入に不安や疑問を持つ声も少なくありません。

本記事では、そうした課題への解決に導く「AIによる工程管理」について、導入事例やメリット、導入の手順などを詳しく解説します。

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建設業における課題

建設業界では、近年深刻な課題に直面しています。特に、少子高齢化による労働力の減少や従来のアナログな業務慣習が変革の妨げとなり、持続的な成長や生産性向上の足かせとなっています。

こうした背景には、若手人材の確保や育成の難しさ、IT人材の不足、さらには業界特有の分業体制といった複合的な要因が絡み合っています。

その課題の中心となる人手不足とデジタル化の遅れについて、具体的に見ていきます。

少子高齢化により人手が不足している

国土交通省のデータによれば、建設業就業者数は1997年度の685万人をピークに減少を続け、2022年度には約479万人と、実に約30%も減少しています。加えて、2025年には建設業の労働者が約90万人不足すると予測されています。

年齢構成を見ても、55歳以上の就業者が全体の約36%を占め、29歳以下の若年層はわずか12%程度にとどまっています。

この高齢化構造は他産業と比べても顕著であり、今後ベテラン世代の大量退職が進むことで、現場の技術継承や人材確保がますます困難になると懸念されています。

出典:国土交通省「建設業における働き方改革 p2

デジタル化が進んでいない

建設業界においてもDX推進の必要性は叫ばれているものの、現場ではアナログ作業が根強く残り、デジタルツールの導入が進みにくい状況が続いています。

その背景には、ITやデジタル技術を扱える人材不足やDX推進に割けるリソースが限られていることが挙げられます。

さらに、建設業界特有の重層下請け構造や長年の慣習が、デジタル化の障壁となっています。加えて、初期投資の負担やDXへの理解不足、従来のやり方を変えることへの抵抗感も根強く、特に中小企業では投資余力の不足が導入の大きなハードルとなっています。

建設業における工程管理へのAI活用とは

このような状況であっても、工程管理にAIを活用する動きは大手企業を中心に広がっています。

従来、工程管理は人手に頼る部分が多く、進捗管理や調整が担当者の経験に依存していました。しかし、AI技術を導入することで、工程調整や進捗状況の把握、作業の最適化などが効率的に行えるようになります。

AI活用の具体的なものとしては、画像解析やデータ分析による作業状況のリアルタイム把握、スケジュール自動最適化、報告書の自動生成などがあります。現場の実務に直結した形で導入が進んでおり、各社で成果が現れ始めています。

建設業における工程管理へのAI活用事例

実際にAIを導入して工程管理を効率化・高度化している建設業界の事例を紹介します。各社がどのようにAIを取り入れ、どのような効果を得ているのかを確認してみましょう。

清水建設株式会社

清水建設がボッシュエンジニアリング、山﨑建設と共同で開発した「ブルドーザーの自動運転システム」は、盛土工事に従事するブルドーザーに搭載されており、操作者が作業内容を設定すると、ブルドーザーに搭載された3D LiDARやGNSS、カメラなどの各種センサーから得られる情報を専用のAIが解析します。

そして、前後進や旋回、ブレードの上下稼働などの運転制御、さらに物体や人の検知による緊急停止などの動作を自動で行います。
今後は、環境認識機能の高度化と自律施工を実現し、建設現場の省人化や工程管理の高度化、生産性の向上を目指しています。

大裕株式会社

大裕は、仮設足場材の選別作業にAI画像認識技術を導入し、工程管理の効率化を進めています。

従来、人手で行われていた足場材の形状やサイズの識別、分類作業を、AIがカメラ映像を通じて自動で行い、搬送・仕分け装置と連動して各種資材を的確に振り分けます。これにより、作業時間や人的ミスを大幅に削減でき、資材管理の精度やトレーサビリティも向上しました。

AIを活用した自動選別は、作業負荷の軽減や省人化を促進し、建設業における工程管理のスマート化と生産性の向上に貢献する先進的な事例といえるでしょう。

株式会社大林組

大林組はAI技術を活用した「画像によるスランプ管理システム」をエム・ソフトと共同開発しています。当システムは、生コン車の荷下ろし時に撮影したコンクリートの画像をAIの深層学習機能で解析し、コンクリート全量のスランプ(軟らかさの指標)を自動で管理します。

従来の目視確認や断続的な試験では把握しきれなかった品質変動をリアルタイムに検知し、異常があれば即座に担当者に警告を発信する仕組みです。

これにより、高品質かつ高耐久な構造物の構築や工期延長の防止、管理コスト削減が可能となっています。

鹿島建設株式会社

鹿島建設の「資機材管理システム」は、ドローンで空撮した工事現場の映像をAIが解析して資機材の名称や位置を特定し、現場の3Dモデル上に表示する仕組みです。

AIは、AI insideが提供する統合基盤「AnyData」を用いて資機材の形状や名称を学習しており、約25種類の資機材を高精度で検出可能です。

これにより、従来の目視と手作業による資機材管理に比べて作業時間を約75%削減し、安全性向上とコスト削減が可能になります。

当システムは、資機材の管理効率を飛躍的に高めるとともに、工程全体の可視化と最適化を実現する革新的な取り組みです。

株式会社奥村組

奥村組が開発した「AIを用いたシールドの掘進管理システム」は、熟練オペレータと同等以上の最適な方向制御を支援します。200項目以上の掘進データをAIに学習させることで、高精度な方向予測を高頻度で行い、シールド掘進の線形精度向上と品質管理の効率化を実現しています。操作シミュレーション機能により、掘進操作の最適化も可能です。

国土交通省のPRISM試行業務に採択され、東京都下水道局発注の泥水式シールド工事などで実績を上げており、非熟練者でも高精度な線形管理が可能となっています。

建設業における工程管理にAIを活用するメリット

AIを活用することで、どのようなメリットを得られるのかを具体的に紹介します。

工程管理を効率化できる

従来、工程管理は手作業での進捗確認や調整が不可欠でしたが、AIの活用により格段に効率化されます。

例えば、AIが現場データを自動で収集・分析し、工程の遅延を予測することにより、問題が発生する前に対策できます。これにより、現場での時間の浪費を最小限に抑えるとともに、作業の最適化が進みます。

また、AIは過去のプロジェクトデータを学習し、プロジェクトごとの特徴やリスク要因を予測するため、より精緻なスケジュール管理が可能になります。

コストを削減できる

AIの導入により、工程管理の精度が向上し、無駄なリソース投入や手戻り作業、過剰な資材発注を抑えられます。例えば、AIが進捗状況を予測して最適な資材発注タイミングを提示することで、余分な在庫の削減が可能です。

また、作業員の動きや作業の優先順位を最適化し、待機や移動によるロスを減らせます。さらに、進捗管理の自動化により管理者の負担を軽減し、人件費の削減にもつながります。

リスク予測や事前対応が可能になることで、突発的なトラブルにも柔軟に対応でき、結果的にプロジェクト全体のコストを抑えられます。

建設業における工程管理にAIを導入する手順

ここからは、AIシステムを工程管理に導入する際の具体的な手順と、導入コストの試算方法について説明します。

導入する手順

工程管理におけるAIの導入には、以下の手順を踏みます。

  1. 現場課題の把握とAI導入目的の明確化
  2. 補助金や支援制度の活用検討
  3. 小規模現場でのPoC(概念実証)実施
  4. AIシステムの選定とカスタマイズ
  5. 現場スタッフへの教育・研修実施
  6. 本格導入と運用開始
  7. 効果測定と改善のPDCAサイクル実施

まず、現場の課題と導入目的を明確にさせることが重要です。補助金や支援制度を活用して初期コストを抑え、小規模な現場で試験導入(PoC)を行い、効果と課題を確認します。その結果を基に最適なAIを選び、必要に応じてカスタマイズします。

導入時には現場スタッフへの研修も行い、スムーズな運用を目指します。導入後は定期的な効果測定と改善を行いながら、現場に定着させていきます。

導入コストの試算方法

建設業界で工程管理にAIを導入する際のコスト試算は、主に以下の費用に分かれます。

  • AIシステムの購入やセンサー機器、導入支援にかかる初期費用
  • クラウド利用料や保守、研修などの運用費用

例えば、1現場あたりの初期費用は約10〜200万円、年間運用費は約10〜150万円が目安です。ただし、AIシステムの契約内容やプロジェクトの規模によって費用は変動します。また、IT導入補助金などを活用すれば、導入費用を大幅に軽減できる場合もあります。

さらに、AIの活用によって人件費の削減や工期短縮が可能となり、数年で投資を回収できるケースも多く、費用対効果の面からも十分に検討する価値があります。

建設業における工程管理にAIを活用する際の人間の役割

AIの導入によって建設現場の工程管理は大きく進化しつつありますが、それでも人間の関与は不可欠です。具体的な人間の役割について見てみましょう。

AIシステムの提案を調整する

AIは、施工スケジュールの自動生成や資材搬入タイミングの最適化などを提案できますが、それは「理想的な条件下」を前提としたものです。

現実の建設現場では、天候の変化や騒音への配慮、周囲の交通状況、他業者との作業調整など、状況に応じて柔軟に対応しなければならない場面が多くあります。こうした細かな事情をすべてAIが正確に把握することは困難です。

AIはあくまで意思決定を補助するツールであり、最終的な判断と調整は現場を理解している人間にしかできません。

現場でのトラブルに対応する

資機材の遅延、天候による作業中断、人的ミスなど、現場では突発的なトラブルが日常的に発生します。こうした想定外の事態に対して、AIは過去のデータに基づく対応しかできません。

一方、現場の作業員や監督者は、その場での情報をもとに即座に判断し、対応策を講じられます。例えば、急な雷雨でクレーン作業が中止になった場合、他工程を前倒しする調整など、臨機応変な対応が求められます。

このように、AIでは代替できない柔軟性と現場感覚を持つ人間の役割は、今後も重要性を増していくといえるでしょう。

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【まとめ】建設業における工程管理にAIを活用し業務効率化を目指そう!

建設業界が直面している課題に対して、AIの導入は有効な打開策となります。実際に多くの大手建設会社が工程管理へのAI活用を進めており、生産性向上やコスト削減といった成果をあげています。

ただし、AIはあくまで「道具」であり、その性能を最大限に活かすには人間の判断力と経験が不可欠です。導入手順をしっかり踏み、現場と連携しながら活用することで、建設現場がより安全で効率的になるでしょう。

本記事を参考に、ぜひAIを活用した工程管理の導入を検討してみてください。