QCDSEとは?構成する5つの要素や管理方法・優先順位なども解説

QCDSE

高品質な建造物を作る際に重要な要素として、QCDSEがあります。これは施工管理で活用される5要素をまとめたもので、バランスよく管理・対策しなくてはなりません。施工管理業務についている方のなかには、これらの管理に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、QCDSEの内容や具体的な手法・優先順位についての知識をまとめました。効率的な施工管理方法を知りたい方は、ぜひご覧ください。

QCDSEとは

QCDSEとは、以下5つの頭文字を取った言葉で、施工管理で活用されます。

  • Quality(品質)
  • Cost(原価)
  • Delivery(工期)
  • Safety(安全)
  • Environment(環境)

QCDSEの要素はどれも建設業界において重要な要素です。QCDSEは上記を厳守することで、以下2つの目標を達成するのが目的となります。

  • 工期・予算ともに予定内で済ませつつ良質な建設物を作る
  • 現場の安全と環境への配慮

ただ良質な建造物を作るだけでなく、作業する職員の命や周辺環境を守るためにも、QCDSEは欠かせない要素であるといえます。

QCDとの違い

QCDSEと同じような用語に「QCD」があります。これは、以下3つの要素を優先順位ごとに並べたビジネス用語です。

  • Quality(品質)
  • Cost(原価)
  • Delivery(納期)

Deliveryを「工期」とみる以外は、建設業界のQCDSEとほぼ変わりません。このことからビジネス上の考えは、どちらも同じであるといえます。

QCDSEを構成する5つの要素

QCDSEを実行するには、それぞれの要素をおさえておかなくてはなりません。QCDSEの各要素について解説します。

品質(Quality)

建物が使用目的に合わせた品質を維持できるかを求める項目です。施工の際に用いる建材・素材選びから施工方法まで、幅広く影響します。そのため、1つの工程だけでなく、複数のタイミングで実施しなくてはなりません。

品質の管理方法

建物の品質を維持するには、1工程でのチェックだけでは不十分です。様々なタイミングで品質を維持した管理を行わなくてはなりません。以下のものは、実際に施工管理時に行われている手法とその効果をまとめたものです。

手法 効果や目的
明確かつ正確な施工計画書 内容を正確に記載することでトラブルを予防する
進捗状況の定期確認 工期や予算内できちんと施工が進んでいるかをチェックする
迅速なトラブル対応 万が一の事態にもすぐ対応することで被害を最小限に抑える
受入検査の実施 資材の品質確認をして粗悪品の仕様を予防する
工程内検査の実施 綿密に工程を検査して施工の正確性を維持する
写真やチェックシートを用いての報告書作成 正確な評価と詳細な内容を付けた報告書を作成することで、異常があってもすぐに発見できる
完了検査の実施 最終検査まで入念に行うことで納品時に不具合が発覚する事態を予防する

原価(Cost)

予算内で高品質な施工を行うには、原価管理は欠かせない要素です。材料費や人件費を的確に管理することで、予算オーバーを予防します。

正確な見積もりを取り、効率よく作業できるような計画を立てるなどの仕事が該当します。

原価の管理方法

原価の管理方法は様々な手法で行われます。品質低下を防ぎつつ、適格なタイミングで費用の無駄を抑えることが、この要素のポイントです。

手法 効果や目的
標準原価の設定 市場調査や過去データを活用し、堅実な価格設定を行う
原価計算 人件費や材料費を明らかにし、詳細に価格をチェック・計算することで費用のムダを削減する
加工方法の複数検討 原価は建材の加工方法によっても変化するため、1つの方法にこだわらず、品質を保ちつつ原価も抑えられる方法を選択する必要がある
差異分析 予算段階で計画していたコストと実際のコストを比べ、ムダや費用の相違などを分析する
原価設定の改善 差異分析を用いてより効率的な作業内容などを模索・実行する
着工後の予算見直し 状況に合わせて臨機応変な対応を行うことで、作業中に発生・判明した予算のムダなどにも対処できるようになる

作業では状況に合わせて臨機応変な対応を求められることもあります。

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工期(Delivery)

工期の厳守が大切なのは、施工側である建設会社だけではありません。施工を依頼したクライアントにとっても重要な要素です。遅れが発生すればその分品質や予算面でもトラブルを引き起こしかねません。

クライアントが満足できる施工を行うためだけでなく、様々なトラブルの発生を防ぐうえでも、工期の厳守は重要な要素だといえます。

工期の管理方法

工期管理の手法は、常に作業員が進捗具合を確認できるような環境を作るのがポイントです。1人ひとりが的確に作業できる現場を構築しましょう。

手法 効果や目的
工期の設定 人手や機材の把握・過去データに基づき堅実に設定することで工期遅れを予防する
工程表の提示 工程を明確化することで見通しを持ちながら施工に取りかかれる
作業員間のコミュニケーション 工程表通りに作業ができているかを作業員同士で確認することで、思わぬ工程遅れを予防できる
進捗管理 工程表と進捗具合を比較し、計画通りに施工できているかを確認できる
工程表の見直しや改善 天候やトラブルで当初の予定通りにうまくいかない恐れがあるときも、臨機応変な対応や改善を行うことで工期遅れによる影響を最小限にできる

 

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安全(Safety)

現場は通常の環境とは異なり、事故やケガが発生しがちな場所です。作業員が思わぬトラブルに遭遇する事態を予防するには、安全にも配慮しなくてはなりません。
現場では常に事故などの事態を想定し、事前に安全対策を行いましょう。また、作業員に事故やケガを防ぐための教育を行うことも大切です。

安全の管理方法

安全管理における手法は、事故やケガの発生を未然に防ぐにはどうすればいいかを考えたうえで実行しましょう。環境に注目するだけでなく、作業員の健康状態なども重要なチェックポイントです。

手法 効果や目的
機材や工具の点検 作業前に現場で使う道具をチェックし、異常があれば改善することで事故を防ぐ
作業員の定期的な健康チェック 作業前に体調不良などをチェックすることで、事故やヒューマンエラーの発生を予防する
危険なポイントの事前確認 現場で事故が発生しそうな場所を事前に点検し、作業員へ情報共有することで事故に対する注意力を喚起する
ヒヤリハット事例の共有 実際に現場や施工時に発生した危険事例を作業員とともに共有することで、作業中の注意喚起を促す
高所作業時安全帯装着や上下作業禁止の徹底 危険性の高い場所でも安全を保ちながら作業できる環境を構築する

環境(Environment)

建設活動は環境に大きな影響を与えます。施工管理者は建築活動が周囲に与える影響を詳しく把握・配慮したうえで現場を管理しなくてはなりません。

施工管理においては、以下3つの環境に配慮できるような手法を取ります。

  • 自然環境:現場周辺の空気・水・地盤・土壌など、およびそれらへの影響に対する対策
  • 周辺環境:現場周辺の騒音・振動・粉じん・什器などの排気ガスと、それらが周辺住民に被害を与えないようにする対策
  • 職場環境:作業員が働く現場、および働きやすい環境を整えるための対策

上記の異なる環境に対応するために、環境の要素では複数の手法を取ります。

環境の管理方法

環境管理は複数の環境に配慮しなくてはなりません。偏りがあるとそれがもとで思わぬトラブルにつながります。管理の際は、バランスよく配慮しなくてはなりません。

手法 効果や目的
管理基準の確保 環境配慮の基準は法令であらかじめ定められており、これを守ることで周辺環境に適切な配慮ができる
周辺住民への説明 施工前に工事で発生する振動や騒音・粉じんについて告知することで、施工時の作業に対する理解を求める
環境を損なう要素への対策 振動や騒音の少ない機材を使う・粉じんや建材の臭いなどが広がらないよう養生するなどの対策を行い、環境への影響を減らす努力を行う
環境配慮 太陽光や雨水などの自然なエネルギーの利用や、木材・廃材を再利用するなどの対策を取ることで、建設が与える環境への影響を抑えられる
現実的な作業量の設定と職場環境の整備 作業員が働きやすい仕事量と環境を整えることで、疲労や体調不良による事故・ケガ・ヒューマンエラーを防ぐ
定期検診・ストレスチェック 従業員の心身を定期的にチェックすることで病気やストレスによる事故・ケガ・ヒューマンエラーを防ぐ

環境の評価方法

環境管理は、上記の手法だけでなく実際に与えている影響についても考慮しなくてはなりません。そのため、環境管理の評価方法は複数あります。具体的な内容を簡単に解説するので、参考としてお役立てください。

環境影響評価

EIAは、プロジェクト初期に実施する評価です。評価の際は、公的機関や専門の環境コンサルタントが行います。評価内容は多岐に渡ります。環境に関する計画を立てる際は、EIAの結果に基づき、現場ごとに必要な環境保全活動を具体的に見据えながら立てなくてはなりません。

CO2排出量の計測

CO2は環境への影響が大きく、業種に関わらず配慮しなくてはならない要素です。特に建設業はエネルギー消費が多い分、大量のCO2を排出する恐れがあります。この影響をチェックするには、排出量の計測が有効です。

計画の際には燃料の種類や使用量・機器のエネルギー効果などから算出します。数値が高い場合は、削減するための新たな方法を検討し直すか、施工自体の方向を転換しなくてはなりません。

定期的な監査

測定や計測をしても、実際の施工中に発生する環境への影響は、絶えず変化します。思わぬ悪影響を発生させないためにも、定期的な環境監査を実施しなくてはなりません。

検査内容は水質検査や排気ガス測定だけでなく、現場周辺の住人から聞き取り調査することもあります。なお、検査の際は専門の監査員や、環境コンサルタントの手で行われます。

地域とのコミュニケーション

環境配慮をしていても、漏れや不足が発生する恐れがあります。現場周辺の住民や、関係する公的機関とコミュニケーションを取ることも、環境評価に置ける重要な要素です。

定期的な報告や説明会を開き、良好な環境を維持しつつフィードバックを評価に活かしましょう。

QCDSEの優先順位

QCDSEは必ずしも頭文字の順番通りに優先するわけではありません。また、優先順位は業種により異なります。施工管理の場合は以下の順で行われます。

  1. Safety(安全)
  2. Environment(環境)
  3. Quality(品質)
  4. Cost(原価)
  5. Delivery(工期)

建設現場では安全の確保を最優先にしなくてはなりません。次に、環境への配慮も必要です。あとの3つも高品質な建造物を施工するには欠かせない要素ではありますが、2つの要素には人命がかかっているため、優先するのは当然です。
とはいえ、5つの要素に偏りがあると、安全を確保しつつ高品質な建造物は作れません。バランスよく配慮・管理を行うようにしましょう。

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【まとめ】QCDSEには大切な役割がある!全ての要素をバランス良く組み合わせプロジェクトの成功に繋げよう

QCDSEは高品質な建造物を安全に施工するには欠かせない要素です。施工管理の際は、それぞれの内容や対策の手法・評価方法などをきちんと覚えて対応し、プロジェクトの成功へ繋げましょう。

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