BIMとAIの組み合わせで広がる可能性とは?活用事例を解説

設計業務の効率化を目指してBIMを導入したものの、期待した成果が出ていないと感じていませんか。

特にボリュームチェックでは、担当できる人材が限られており、1つの案件に数日から数週間もかかってしまいます。この状況を打開する鍵となるのがAI技術です。

近年、建設業界では人工知能を活用した自動チェックシステムや設計支援ツールが次々と登場し、従来は人の手で行っていた煩雑な作業を瞬時に処理できるようになりました。

実際に大成建設や竹中工務店といった大手企業では、AIによる劇的な生産性向上を達成しています。

本記事では、BIMとAIを融合させた革新的な取り組みについて、具体的な事例を交えながら解説していきます。

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BIMの基本知識

BIM(Building Information Modeling)は建物の3次元モデルに情報を統合する技術で、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ管理を実現します。

実際に建物を建設する前に完成イメージに近い3次元モデルを構築できるため、設計・施工の工数削減やミスの防止につながります。多くの関係者が関わる建物づくりにおいて、業務の効率化を実現できるでしょう。

また、近年ではBIMとAIを組み合わせて設計支援に活用するなど、様々な取り組みが進んでいます。

BIMとAIの組み合わせで広がる可能性とは

AIは過去のプロジェクトデータから最適解を学習し、設計者の意図を理解しながら作業を支援してくれます。建物完成後も、センサーデータとBIM情報を連携させれば、故障予測や省エネ運転の自動調整が可能になります。

実際にどのような場面でどんな効果が期待できるのか、2つの重要な観点から解説します。

建物の管理・運営を効率化できる

建物が完成した後の管理・運営段階でも、BIMとAIの組み合わせは大きな効果を発揮します。

BIMモデルには設備機器の配置や仕様、メンテナンス履歴などが記録されており、AIがこの情報を分析することで、故障の予兆を検知したり、最適な点検タイミングを提案したりできます。

センサーから収集されるリアルタイムデータとBIM情報を統合すれば、エネルギー消費の最適化や空調制御の自動調整も実現します。従来は人の経験に頼っていた判断をAIが支援することで、建物の長寿命化とランニングコストの削減が同時に達成されます。

生産性を向上できる

設計業務における生産性向上は、BIMとAIの組み合わせによる最も顕著な効果の1つです。ボリューム設計では、AIが法規制や設計基準を学習し、自動的にチェック作業を実行することで、素早く処理を完了できます。

生成AIを活用すれば、設計者の意図をテキストで入力するだけで、複数の設計案を自動で生成することも可能です。図面作成や数量計算といった定型作業からも解放され、設計者はより創造的な業務に集中する時間を確保できます。

人手不足が深刻化する建設業界において、生産性向上は重要な要素です。

BIMとAIの組み合わせによる活用事例

大手建設会社では既に先進的な取り組みが始まっており、設計作業の大幅な時間短縮や品質向上を達成しています。これらの事例を知れば、自社でどのような活用ができるか具体的なイメージが湧いてきます。

ここからは、5社の先進的な取り組みを詳しく紹介していきます。

株式会社熊谷組

熊谷組は燈株式会社と共同で、CADデータからBIMモデルを自動生成するシステム「CABTrans」を開発しました。同社では5億円以上の新築工事案件すべてで施工BIMを活用しており、年間数十件のBIMモデルを人力で作成していました。

新システムはAIでCADデータから構造情報を取得し、自動的にBIMモデルを生成します。従来の作成時間を20~30%削減できる見込みです。

今後は意匠図への対応拡充や、読み取り精度の向上を進める予定です。建設業界のDX推進とフロントローディング加速に貢献する技術として期待されます。

参照:CADデータからBIMモデルを生成するシステム「CABTrans」を開発|株式会社熊谷組 公式サイト

大成建設株式会社

大成建設は、AI活用の設計支援システム「AI設計部長」に新機能を追加開発しました。この新ツールは、建物の初期設計段階で行うボリュームチェックを劇的に効率化します。

敷地条件から建築可能範囲を自動算出し、多様な設計パターンを瞬時に生成します。顧客の希望条件に合致する最適案を短時間で抽出できます。さらにBIMデータ出力にも対応しており、詳細設計へのスムーズな移行が可能です。

従来は膨大な組み合わせから最適案を選ぶのに時間がかかり、見落としのリスクもありました。本ツールにより、敷地のポテンシャルを最大限活かした設計案を迅速に提案でき、建物設計の高度化と効率化を実現します。

参照:「AI設計部長®」の新たな設計ツールを開発|大成建設株式会社 公式サイト

株式会社 長谷工コーポレーション

長谷工コーポレーションは、カワトT.P.C.とKICONIA WORKSと共同で、BIMデータを活用したマンション給水給湯配管の自動設計システムを開発しました。

従来は人手で行っていた配管ルートの設定や3次元モデルの構築が自動化され、設計品質の向上と約70%の生産性向上を実現しています。

建設業界では2024年問題として時間外労働の上限規制への対応が求められており、このシステムは働き方改革の推進にも貢献します。2024年4月から東京地区で先行導入が始まり、将来的には全案件への展開を目指しています。

今後は排水管や排気ダクトも含めた統合システムへと発展させ、マンション事業全体のさらなる生産性向上を図っていく予定です。

参照:BIMデータを活用した「給水給湯配管の自動設計システム」を開発|株式会社 長谷工コーポレーション

安藤ハザマ

安藤ハザマは建築設計の効率化に革新をもたらす自動化システムを開発しています。従来、設計者が4~5日かけていた企画段階のボリューム設計作業を、わずか1日で完了できる画期的なシステムです。

敷地情報を入力するだけで、法令に基づく建築可能範囲の算出、過去データを活用したプラン生成、概算コストの算定まで自動化されます。検討時間を5分の1に短縮することで、設計者は創造的な業務により多くの時間を割けるようになります。

武蔵野大学など複数の企業・機関と共同開発を進めている本システムは、建築業界の生産性向上に大きく貢献することが期待されます。

参照:企画段階のボリューム設計を自動化するシステムを開発中-敷地入力から概算コスト算定までの検討時間を5分の1に短縮-|安藤ハザマ 公式サイト

株式会社竹中工務店

竹中工務店は、20年以上蓄積してきた構造設計データを活用した「構造設計AIシステム」を開発し、全面導入しました。このシステムは、AI建物リサーチ、AI断面推定、AI部材設計の3つの機能で構成されています。

約500件の建物、30万以上の構造部材データを学習したAIにより、設計業務における計算作業の時間を大幅に削減できます。類似建物の自動探索や部材断面の迅速な推定が可能となり、お客様への設計提案をスピーディーに行えるようになりました。

繰り返し計算の自動化により、設計者はより付加価値の高い提案に時間を使えるようになり、高品質な建物設計の実現を目指しています。このシステムはHEROZ株式会社と共同で開発され、今後も継続的に進化させていく予定です。

参照:構造設計をクリエイティブに 「構造設計AIシステム」を開発|株式会社竹中工務店 公式サイト

BIMとAIを組み合わせる際の注意点

BIMとAIの可能性に期待が高まる一方で、導入を急いで失敗するケースも少なくありません。また、導入後も継続的な投資や運用体制の整備が必要になります。

ここでは、導入を検討する際に必ず押さえておくべき3つの重要な点について解説します。

自社に合うAIを導入する

AI技術は多様化しており、それぞれに得意分野や制約があります。自社の業務内容や抱えている課題を明確にした上で、最も効果的なAIを選ぶことが重要です。大規模プロジェクトに特化したAIもあれば、中小規模の案件に適したAIもあります。

導入前には、実際の業務フローに当てはめてシミュレーションを行い、本当に効果が見込めるかを検証しましょう。ベンダーの提案をそのまま受け入れるのではなく、現場の意見を取り入れながら、自社に必要なカスタマイズができるものを導入しましょう。

コストがかかることを理解しておく

AIの導入には、初期投資だけでなく継続的な費用が発生します。システム利用料やメンテナンス費用に加え、AIが出した結果を専門家が検証する作業も欠かせません。この確認作業には時間と人員が必要で、従来の業務とは異なるスキルが求められることもあります。

また、データ管理やシステム更新にも定期的なコストがかかるため、費用対効果を慎重に見積もり、長期的な視点で投資回収の計画を立てることが大切です。

データベースの可視化を行う

AIを効果的に活用するには、社内に蓄積されたデータを整理し、活用しやすい形に整える必要があります。過去のプロジェクトデータや図面、施工記録などが散在していては、AIの学習素材として使えません。

まずはデータベースを構築し、情報を統一的な形式で管理する仕組みを作りましょう。可視化により、AIとのコミュニケーションが円滑になり、より精度の高い分析や提案が得られます。データ整備は地道な作業ですが、AI導入の成否を左右する重要な要素です。

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【まとめ】BIMとAIの組み合わせによる可能性は無限大!上手に活用しよう

建築プロジェクトにおけるBIMとAIの融合は、設計業務のあり方そのものを変えつつあります。

従来は経験豊富な担当者に頼っていた判断を、AIが迅速かつ正確に行えるようになりました。ボリュームチェックの自動化、配管設計の効率化、構造計算の高速化など、応用範囲は広がる一方です。

建物完成後の運営段階でも、センサーデータと連携した予知保全や最適制御が実現されています。

導入を検討する際は、自社が抱える課題を明確にし、それに適した技術を選ぶことが重要です。費用対効果を長期的な視点で評価し、データ管理体制も同時に整えていきましょう。