解体工事の勘定科目は目的によって仕訳が異なる!節税ポイントも解説

解体工事 勘定科目

「空き家を解体して新たな用途に活用したい」
「更地として売却したい」

そう考えている方も多いのではないでしょうか?解体工事は、目的によって仕訳方法が異なります。選んだ勘定項目によっては節税効果が期待できる可能性もあるため、適切な仕訳を行うことが大切です。

この記事では、解体工事の勘定科目は目的によって仕訳が異なることについて解説します。解体工事を提案する際や相談を受ける際にも役立つ情報ですので、ぜひご参考ください。

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解体工事の勘定科目は主に2つのグループに分類される

勘定科目は法律で厳密に規定されているわけではありません。しかし、他社との情報共有や理解を容易にするためには、一般的に広く使用されている勘定科目を利用することが重要です。

主な勘定科目には、以下のような項目が挙げられます。

  • 資産
  • 負債
  • 純資産
  • 費用

これらの勘定科目を使用することで、他社との情報共有や経理の効率化が図れます。内訳は下表の通りです。

資産・現金

・預金

・手形

・建物

・土地 など

負債・買掛金

・未払金

・借入金 など

純資産・資本金

・元入金 など

費用・商品仕入高

・交通費

・修繕費

・消耗品費 など

収益・売上

・雑収入 など

解体工事の勘定科目は目的よって仕訳が異なる

解体工事の勘定科目は、目的によって仕訳が異なります。

  • 建物の撤去が目的の場合
  • 復旧が目的の場合
  • 建て替えが目的の場合
  • 土地利用が目的で購入した場合

それぞれの目的を明確にして、正しい仕訳を行いましょう。

建物の撤去が目的の場合

建物の撤去が目的の場合、古い建物の解体費用は「固定資産除却損」という勘定科目を使用して費用として計上されます。固定資産除却損は、建物や土地などの固定資産を処分する際に発生した費用を示します。

例えば、小屋を解体して更地にする場合、以下のように仕訳を行います。

借方貸方備考
固定資産除却損600,000円普通預金600,000円小屋解体工事費

復旧が目的の場合

建物の解体が「現状の復旧」を目的とする場合は「修繕費」で仕訳をします。ただし、災害などで部分的な解体や修繕が行われることが一般的です。

修繕の際には、修繕された箇所が既存の物件と同一の仕様や価値であることが求められます。修理のついでに古い仕様を更新するなどの改良が行われる場合、これは資産の新規取得と見なされ、費用ではなく資産として計上される必要があります。

例えば、社屋の一部を解体した場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方備考
修繕費400,000円普通預金400,000円社屋の一部解体

建て替えが目的の場合

建て替えが目的の場合、建物の解体は新しい資産(新しく建てる建物)を得るために必要な行為とみなされます。したがって、解体費用は新規資産の取得に掛かる費用と同様に扱われます。

例えば以下のような仕訳を行ったとします。

借方貸方備考
建設仮勘定4,000,000円普通預金4,000,000円倉庫の解体工事費

解体工事後に新築した際は、解体費用にかかった費用を新しく建てる建物の取得費用として合算し、「建物」として仕訳します。

借方貸方備考
建物(取得費用)30,000,000円普通預金28,000,000円倉庫の建替工事
建設仮勘定2,000,000円

土地利用が目的で購入した場合

土地を利用する目的で建物を取り壊した際には「土地」という勘定を使います。中古の賃貸物件を解体して新たに倉庫や事務所などを建設するケースが含まれます。ただし、土地を取得してから1年以上経ってから解体する場合は、土地の勘定科目に分類することができません。

具体的な例として、中古アパート付きの土地を購入してすぐに撤去し、更地になった土地に新しく事業用の駐車場を建設する場合が挙げられます。

借方貸方備考
土地20,000,000円預金20,000,000円駐車場を新しく建設する費用

解体工事に関連する勘定科目

解体工事に関連する勘定科目には、以下のようなものがあります。

  • 地中埋設物の撤去は「雑損失」
  • 産業廃棄物・不用品処分は「雑費」・「支払手数料」
  • アスベストの調査・除去は「一般管理費」・「修繕費」

順に解説します。

地中埋設物の撤去は「雑損失」

建物解体後の土地掘り起こし作業で、基礎やコンクリート片などの埋設物が見つかることがあります。これらの埋設物の撤去に関連する処分費用は、解体工事の追加費用として請求されます。埋設物の撤去費用は、解体工事費用とは別に、「雑損失」として経費計上が可能です。

ただし、雑損失は通常の営業外費用の10分の1以下であることが求められますが、埋設物の撤去費用は通常高額であり、100万円以上かかることもありますので、その点に留意する必要があります。

産業廃棄物・不用品処分は「雑費」・「支払手数料」

解体に伴う産業廃棄物や建物内の不用品を撤去する際には、「雑費または支払手数料」として経費計上が可能です。ただし、解体以外の場合にもゴミや不用品を捨てる必要がある場合は、雑費ではなく支払い手数料として計上する方が適切です。

アスベストの調査・除去は「一般管理費」・「修繕費」

建物には、アスベストの事前調査や除去作業に伴う費用が発生することがあります。アスベストの事前調査費用は「一般管理費」、除去工事費用は「修繕費」として仕訳をします。ただし、除去後に改装工事を行った場合には、「資本的支出」として認識されることがありますので、注意が必要です。そして、これに関連する支出は、法的な義務に基づくものであるため、通常、全額を修繕費として即時の損金に計上することが許可されています。

解体工事の勘定科目は選び方で節税に繋がる

解体工事では、勘定科目の選び方によっては節税に繋がる場合もあります。ただし、その年の利益が少ない場合には、費用勘定で計上しても節税効果が薄くなることもある点に留意が必要です。

  • 解体工事の費用を「費用」として計上する
  • 解体工事の費用を「資産」として計上する
  • 解体工事の勘定科目で節税するときの注意点

順に解説していきます。

解体工事の費用を「費用」として計上する

確定申告において、一括経費として処理できます。この支払いを行った期の利益が減少するため、確定申告する所得税も抑えられます。解体費用を支払った期に大きな利益が出ている場合、解体費用の支出を「費用」として計上することで、節税効果が期待できます。

解体工事の費用を「資産」として計上する

解体工事の費用を確定申告で資産として計上する場合、その費用は資産ごとに定められた耐用年数に基づいて減価償却という方法で分割して経費として計上されます。この方法では費用が長期間にわたって経費化されるため、確定申告する所得税にも長期間影響を及ぼします。今後も利益が見込まれる場合は、解体費用を一度「資産」として計上しておくことで節税につながります。

解体工事の勘定科目で節税するときの注意点

解体工事の勘定科目で節税するときの注意点は2つあります。

  • 損益通算・純損失の繰越控除も考慮する
  • 減価償却は土地に適用できない

目的にあった勘定項目を選定して節税できるように注意しましょう。

損益通算・純損失の繰越控除も考慮する

その年の利益がほとんど発生していない場合、解体費用を一括で経費計上することで「赤字決算」となる可能性も考えられます。青色申告を行っている場合には「損益通算」と「純損失の繰越控除」が利用可能です。損益通算では、不動産所得の赤字を他の所得と相殺できます。また、純損失の繰越控除では、その年の赤字を翌年以降の3年間にわたって繰り越せるため、おすすめです。

減価償却は土地に適用できない

前述の方法で経費計上することを「減価償却」と呼びます。減価償却は、固定資産の取得費用を一括で経費計上するのではなく、法定耐用年数に定められた年数に分割して経費計上する方法です。ただし、減価償却は土地には適用できないため、古家付き土地を購入して解体工事を行う場合などには注意が必要です。

店舗内装を解体工事するときの勘定科目の仕訳

店舗内装を解体工事するときの勘定科目の仕訳には2パターンあります。

  • 店舗内装の解体工事は「固定資産除却損」
  • 軽微な解体工事は「建物」または「建物付属設備」

順に解説します。

店舗内装の解体工事は「固定資産除却損」

店舗内装の解体にかかる費用は、固定資産除却損として損金計上できます。内装解体費用は店舗の営業経費などの恒常的な支出には含まれないため、一度の強い支払いとして特別損失として計上することが可能です。

軽微な解体工事は「建物」または「建物付属設備」

店舗内装の一部や軽微な解体工事を行う場合は「特別損失」ではなく、通常の内装工事と同様に考えると良いでしょう。

一般的に、内装工事費用は以下の4つに分類されます。

  • 建物
  • 建物付属設備
  • 備品
  • その他の経費

各科目の選択によって耐用年数や発生する税金が異なるため、適切な勘定項目を選択することが重要です。

建物として処理する場合

建物として処理する場合、耐用年数は建物の種類や構造によって異なりますが、一般的な法定耐用年数は20〜50年程度です。建物に分類されると、毎年固定資産税を支払う必要があります。この固定資産税は3年ごとに評価額が見直され、毎年4〜5月頃に納税通知書が届けられます。

建物付属設備として処理する場合

建物付属設備として処理する場合、耐用年数は建物に比べて短くなります。例えば、電気設備や給排水、ガス設備などの工事は一般的に15年とされています。短期的な節税を考える場合は、建物と建物付属設備をしっかりと分けて可能な限り建物付属設備に分類し、15年の耐用年数で減価償却することで節税効果が期待できるでしょう。

個人が確定申告するときの解体費用の勘定科目

個人が確定申告するときの解体費用の勘定科目は主に2パターンあります。

  • 自宅を解体する場合
  • 賃貸物件を解体する場合

適切な勘定項目を選択して仕訳を行いましょう。

自宅を解体する場合

自宅として使用していた家の解体工事を行う場合、以下の3つのパターンが考えられます。

  • 解体後に土地を譲渡・売却する場合
  • 解体後に賃貸物件を新築する場合
  • 解体後に自宅を建て直す場合

順に解説します。

解体後に土地を譲渡・売却する場合

自宅を取り壊して賃貸アパートなどの事業用建築を建設する場合、取り壊し費用は経費として処理することはできません。たとえ取り壊しの目的が事業用建物への建て替えであっても、その費用は資産として扱われます。

解体後に賃貸物件を新築する場合

自宅を賃貸物件に建て替える場合には、不動産所得の経費として認められないことが一般的です。ただし、賃貸併用住宅を解体した場合には、解体費用の一部が経費として認められることがあります。

解体後に自宅を建て直す場合

自宅を取り壊して新たに住宅を建築する場合、通常は費用として認められません。建て替えなどで大きな支出があった場合でも、事業とは関係のない場合には経費として計上することはできません。

賃貸物件を解体する場合

賃貸物件を解体する場合、以下の3つのパターンが考えられます。

  • 解体後に土地を譲渡・売却する場合
  • 解体後に賃貸物件を新築する場合
  • 解体後に自宅を建て直す場合

順に解説します。

解体後に土地を譲渡・売却する場合

賃貸物件を解体して更地の土地を譲渡・売却する場合、自宅の解体と同様に、譲渡所得から控除する譲渡費用に解体費用を含めることができます。土地を譲渡するために事業用建物を取り崩した場合にも、その取り崩し費用は譲渡所得の計算上、譲渡費用として控除が可能です。つまり、この費用は譲渡費用として認められます。

解体後に賃貸物件を新築する場合

賃貸物件を新築に建て替える場合には、不動産所得の経費として全額計上が可能です。その場合、解体工事の際には解体費用を「前払金」として計上し、新築時には「建物」の取得費用に含めて仕訳を行います。

解体後に自宅を建て直す場合

賃貸物件を解体後、自宅に建て替える場合、原則として経費計上は認められません。ただし、老朽化や災害により倒壊の危険性がある建物の場合、経費として計上できる場合もあります。

解体工事の勘定科目に迷ったときの相談先

解体工事の勘定科目に迷ったときの相談先には、以下のようなところがあります。

  • 税務署
  • 税理士ドットコム
  • 商工会議所

順に解説します。

税務署

税務署では、税理士による帳簿のつけ方を無料で教えてもらえる「記帳指導」といった講座などが提供されている場合があります。仕訳方法がわからない場合は、近くの税務署に相談して、最適な節税計画を立てましょう。ただし、毎年定期的に開催されるわけではないため、気になる方は問い合わせてみるのがおすすめです。まずは、最寄りの税務署はインターネットで検索してみてください。

税理士ドットコム

税理士ドットコムとは、オンライン上の質問サービスです。税理士に勘定科目に関する意見を聞くことができます。無料で登録できて会費は不要です。他の人の質問項目も閲覧できるなど、様々なメリットがあります。赤字を損益通算や純損失の繰越控除を活用して節税したい場合は、税理士などの専門家に相談しながら確定申告を進めることがおすすめです。

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商工会議所

商工会議所では、経理指導も行っています。経理指導とは、帳簿の付け方や決算・申告の方法の指導、経理ソフトの導入サポートなどを含みます。これらのサポートを必要とする場合は、商工会議所を利用するのがおすすめです。また商工会議所では、経理処理関係の無料相談会を定期的に開催しているケースが多いです。一部の商工会議所では、会員を対象に税務相談や記帳指導、確定申告時の決算書の作成支援といった、幅広いサービスを提供している場合があります。

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【まとめ】解体工事の勘定科目は目的に合わせて適切に選ぼう

解体工事や撤去に関連する費用は、建物の撤去が目的の場合は固定資産除却損として計上されます。一方、建て替えのために購入した建物を新しく建て替える場合は、土地など別の勘定科目に計上されます。また、一部を修繕する場合には、「原状回復か」「資本的支出か」で計上方法が異なるため、適切な帳簿を作成する際にはそれぞれの違いを理解し注意が必要です。

解体工事の際には、建物を取り壊す目的に応じた適切な勘定科目への仕訳が求められます。税務調査で問題を避けるためにも、適切な勘定科目の選択が必要です。費用計上と資産計上では、節税の効果に大きな差が出ます。さらに、自宅を賃貸物件に建て替えたり、逆に賃貸物件を自宅に建て替える場合は、経費計上の可否がケースごとに異なります。解体に関する勘定科目や仕訳についての疑問が生じた場合には、地元の税務署などに相談するのがおすすめです。

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