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定期的に行うマンションの大規模修繕は、専門知識も必要なので段取りや施工業者の選定で悩んでいる管理組合も多いでしょう。
そこで、今回はマンションの大規模修繕をするうえで便利な大規模修繕コンサルタントについてまとめてみました。コンサルタントの役割や選定の仕方について詳細に解説しますので参考にしてください。
大規模修繕コンサルタントとは
大規模修繕コンサルタントとは大規模修繕工事の施工業者などと管理組合の橋渡しをしてくれる専門家のことです。
マンションなどの建築物は築年数が経過すると必ず劣化します。そのため、12~15年周期で大規模修繕が必要です。施工業者とのやりとりは専門的な知識をあまり持ち合わせていない一般の方には難しいでしょう。大規模修繕コンサルタントが入ることで、施工業者とのやり取りを支援してくれます。
コンサルタントの依頼には費用はかかりますが、工事業者の選定や細かい段取り、修繕箇所の確認や施工についての適切なアドバイスがもらえます。
大規模修繕コンサルタントの役割
ここで、大規模コンサルタントがどんなことをしてくれるのか、その仕事と役割について説明します。主なものは次の4点です。
- マンションの劣化診断
- 大規模修繕施工会社の選定
- 修繕計画の設計や工事監理
- 修繕計画作成とアフターケア
順に詳しく説明します。
劣化診断
大規模修繕コンサルタントは、施工前に対象マンションの劣化状況を調査して診断します。後々の修繕計画に影響するので「どの箇所を、いつまでに修繕する必要があるか」細かい箇所まで綿密なチェックが必要です。
大規模修繕コンサルタントは、この調査結果をもとに、修繕計画や工事内容を検討します。大規模修繕の目的は、劣化部分の修繕や劣化予防をして快適な居住空間を維持することです。そのため、管理組合の意見や居住者の要望をリサーチして計画に織り込むこともあります。
施工会社の選定
大規模修繕コンサルタントに依頼すると、修繕計画に見合った施工会社の選定について的確なアドバイスを受けられます。
選定方法は「責任施工方式」「プロポーザル方式」「設計監理方式」がありますが、専門知識がないと会社選定は困難です。大規模修繕コンサルタントは、会社の施工実績や能力を見ながら数社に見積もりを取り、総合的に判断して修繕計画に適合する施工会社を提案してくれます。
修繕計画の設計や工事監理
修繕計画の設計や設計通りに施工されているかを監理するのも大規模修繕コンサルタントの役割です。修繕計画の設計は、事前の劣化状況診断をもとに工事内容や仕様について検討します。工事が始まると、設計どおりに施工されているかどうかを確認するのが工事監理です。いずれも専門的な知識や経験がないと難しいので、大規模修繕コンサルタントに依頼しましょう。的確な判断で円滑に施工が進められます。
修繕計画作成とアフターケア
マンションの資産価値を維持し、快適な居住空間を確保するためには、長期的な大規模修繕計画が必須です。長期計画は、どのタイミングでどの程度の修繕を行うかを目的にマンション管理組合が中心になって立案します。長期的な修繕計画が正しく立案されているかを、専門的な知見を交えて確認するのも大規模修繕コンサルタントの役割です。
大規模修繕コンサルタントの種類
大規模修繕コンサルタントを取り扱っている会社は数多く存在しますが、形態は次の3種類に大別できます。
- 大規模修繕コンサルタント専門会社
- マンション管理会社
- 一級建築事務所
以下に、それぞれの特徴などを詳しく説明します。
大規模修繕コンサルタント専門会社
大規模修繕工事のみを専門に取り扱っている会社です。修繕工事を専門に手がけてきた実績があり、技術やノウハウも持ち合わせています。社内に、建物調査専門者や、マンション管理組合との連携に慣れた現場監理者が在籍しているなどが特徴です。工事品質を長期にわたって維持するなど、アフターケアに力を入れている会社もあります。
マンション管理会社
マンション管理会社が大規模修繕工事コンサルタントを手がけているケースもあります。マンション管理を日常から行っているため、マンションの特徴をよく理解しているといえるでしょう。管理組合との信頼関係も厚く、施工や劣化診断の段取りもスムーズです。社内に修繕工事施工部門やコンサルティング部門を組織化している会社もあります。
一級建築事務所
一級建築士が独立して、大規模修繕コンサルタントを請け負っている事務所もあります。マンションなどの構造設計に詳しく、建物の劣化状況や施工時期もタイミング良くアドバイスしてもらえるのが特徴です。当該マンションに新築設計から関わっている場合もあり、新築から修繕まで一貫した管理には信頼がおけます。なお、コンサルティングに建築士資格は必要ありません。
大規模修繕コンサルタントに依頼するメリット
大規模修繕コンサルタントに依頼する場合に、どんなメリットがあるのか気になります。この項目では次の2点を解説します。
- 管理組合や修繕委員会の負担が減る
- 公正な立場からのアドバイスが受けられる
マンションの管理組合として、大規模修繕工事は最も大きな実施項目です。以下に詳細に説明しますのでよく理解しておきましょう。
管理組合や修繕委員会の負担が減る
大規模修繕工事を管理組合で進めようとすると、外部施工業者への委託やスケジュール調整など複雑で様々な業務をこなさなければなりません。コンサルタントに依頼すれば、それらの業務を完璧にスムーズな段取りで進めることが可能です。
管理組合は、コンサルタントの報告を確認するだけなので、関わる時間も短縮され負担はかなり軽減します。本業の仕事をこなしながら管理組合の運営に携わる人にとって、時間が短縮できるのは大きなメリットといえるでしょう。
公正な立場からのアドバイス
大規模修繕工事を施工するには、施工業者、居住者、管理組合の3者の協議と合意が必要です。それぞれの意見や要望を管理組合でまとめるのは容易ではありません。
大規模修繕コンサルタントに依頼すれば、公正な立場で専門的なアドバイスがもらえるのでスムーズに意見がまとまります。
修繕計画や予算の立案、工事の監理も任せられるので、工事のトラブルなども事前に回避できるでしょう。公正な立場でのアドバイスは大きなメリットです。
大規模修繕コンサルタントの費用相場
専門のコンサルタントに依頼すれば、マンション修繕工事の際にメリットが大きいことはわかりましたが、気になるのは費用です。
コンサルタントの費用相場は、工事全体の費用に対して5%から10%程度といわれています。総額3000万円の工事では150万円から300万円です。ただし、工事の規模の大きさや内容によって変動することがあるので注意しましょう。
大規模修繕コンサルタントを選ぶ5つのポイント
前述したように、大規模修繕を請け負うコンサルタント会社は3種類あり、多くの会社が存在します。ここでは、コンサルタント会社を選定するポイントについて次の5点を取りあげました。
- 自身のマンションとよく似たケースのコンサルティング実績
- マンション管理組合の考え方や方針などスタンスが合っているか
- マンション管理組合の運営について知識は十分にあるか
- 大規模修繕工事を行うことを前提にした提案になっていないか
- 公平性や中立性は保たれているか
以下項目で、それぞれのポイントについて説明します。
類似ケースのコンサルティング実績はあるか
コンサルタントを選ぶ最初のポイントは実績です。ここでいう実績とは大規模修繕工事を手がけた案件の数ではありません。対象となるマンションと類似した修繕工事の経験があるかが重要です。
タワーマンションの実績はあるか、高耐久マンションはどうか、など、自身が住んでいるマンションと類似構造の実績があれば、安心して任せられると考えて良いでしょう。
管理組合とのスタンスと合っているか
管理組合と同じスタンスでアドバイスがもらえる点も重要なポイントです。管理組合が主導で専門的なアドバイスを受けるスタンスか、すべてコンサルタントに任せるのかによっても契約内容が大きく異なります。
契約時には、じっくり話し合って契約のミスマッチが無いようにしましょう。特に、コンサルタントにすべて任せる場合には施工会社との癒着や不適切な劣化診断などが無いよう注意が必要です。
管理組合運営の知識は十分あるか
コンサルタント会社を選定するときは、管理組合運営についての知識や経験も確認しましょう。工事の知識や実績が十分でも、組合運営を理解していないと支障をきたす恐れがあります。たとえば、修繕箇所が専有部分に及んだ場合、工事に修繕積立金の使用が可能か判断が必要です。すでに自費で専有部分の修繕をしている場合には、補償をどうするか判断する必要があります。これらの課題を踏まえて工事を円滑に進めるには、組合運営をよく理解していることが重要です。
大規模修繕工事を行う前提の提案になっていないか
コンサルタントを選定するときは「大規模工事実施」が前提の提案になっていないか注意しましょう。劣化診断の結果、部分的な修繕でも良い場合や工事を先延ばしできることもあります。しかし、コンサルタントによっては大規模工事の受注機会を逃したくないので、工事施工前提で提案してくる業者もいます。修繕工事を依頼する際は、工事の必然性などを第三者の目で判断してくれるコンサルタントを選びましょう。
公平・中立性は保たれているか
コンサルタントは公平で中立でなければなりません。特に、大規模修繕工事に関わる施工会社や調査会社とコンサルタントの癒着には注意が必要です。その場合、相互にリベートやバックマージンを授受するなどの不正行為が働き、費用が不当に高騰します。コンサルタント選定時に判明すれば当然除外です。判断しにくい場合は、契約時に「癒着や不正行為をしない」などの誓約を取り交わして、問題が発覚した場合には賠償責任が発生するなどを明確にしましょう。
大規模修繕コンサルタントを選ぶときの注意点
2016年ごろに大規模修繕工事に関わる施工業者から不当なバックマージンを収受するコンサルタントが蔓延し問題になりました。2017年には国土交通省から関連する通知が公開されています。大規模修繕工事は高額な資金が動くため、業者との談合や癒着など不適切な行為の温床にならないよう注意が必要です。会社を選定するときは、見積金額の妥当性やコンサルタントの実態などを慎重に精査して、不適切なコンサルタントを回避しましょう。
【まとめ】ポイントを押さえて信頼できる大規模修繕コンサルタントを選ぼう
長期計画に沿った大規模修繕工事は、マンションの快適な居住空間の確保や、資産価値維持のために必要です。修繕工事を管理組合だけで行うのは困難ですが、専門のコンサルタントに相談すれば建物の劣化診断や施工監理まで円滑に進めてくれます。その結果、管理組合の負担が軽減できるなどのメリットがあります。コンサルタントを選定する時は、注意点などのポイントを押さえて信頼できる業者を選びましょう。
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