大規模修繕工事をオフィスビルへ行う周期や費用・流れを解説!

大規模修繕 ビル

大規模修繕工事は様々な建造物で行われます。オフィスビルも例外ではありません。ビルを使い続けるには必ず行わなくてはならない工事でもあり、工期や費用に頭を悩ませている方もいるのではないのでしょうか。

そこで、今回はオフィスビルにおける大規模修繕工事に関する内容をまとめました。工期の計画や費用準備などの知識がほしい方は、ぜひご覧ください。

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オフィスビルの大規模修繕工事に周期の定義はない

大規模修繕工事は主にマンションに行われることが多い工事ですが、オフィスビルや商業ビルも対象になります。しかし、マンションのように一定周期で施工されているわけではありません。

国土交通省は、マンションの安全性を維持するために大規模修繕工事のガイドラインを公表しています。ガイドラインでは修繕工事のスパンを工事内容ごとに定めており、多くのマンションはこのガイドラインの周期に従って10年前後のスパンで改修工事を行っているといわれています。
しかし、オフィスビルなどはこのガイドラインの対象ではありません。そのため、外壁の劣化状況やビルに使われている建材の耐用年数などからオーナーが判断・施工依頼をする必要があります。

中・長期修繕計画が重要

オフィスビルなどの大規模修繕工事は、まず修繕計画を立てる必要があります。
マンションなどの大規模修繕工事は、事前に長期修繕計画が作成され、それに従って定期的な修繕が行われます。しかし、オフィスビルなどにはこれらの計画はありません。
そのため、以下の流れに沿って修繕計画を作るところから取りかかります。

  1. 基本的な修繕周期にビルの仕様や設備項目を当てはめる
  2. 改修・修繕履歴などを参考にしながら、修繕計画を立てる
  3. 見積提示と予算調節を行う
  4. 改修・修繕項目を確認しながら調節する

この流れに沿うには、改修や修繕したときの履歴を取っておかなくてはなりません。建物の現状を理解していない状態で取りかかると、修繕漏れや余計な施工などの問題を引き起こします。このような事態が発生している状態では、ビルの価値を保てないでしょう。

ビルやその設備は、耐用年数が長い分その修繕計画は中長期に渡ります。適格な計画を立てるためにも、普段から改修や修繕履歴を残しておきましょう。

オフィスビルの大規模修繕工事の一般的な周期

オフィスビルの機能や設備はそれぞれ耐用年数が異なります。計画を立てるときには、これらの修繕周期を把握しておかなくてはなりません。
ビルの建材や規模・築年数により正確な年数は異なりますが、主な修繕工事の内容と費用をまとめると、以下のようになります。

施工内容・目的平均修繕周期
ビル自体のグレードアップ20~30年
エレベーターの取り換え30年
空調設備10~15年
外壁塗装やタイル
屋上防水
照明器具8~10年
給排水ポンプ7~10年

修繕周期を見ると分かりますが、どれも同じスパンで修理すればいいわけではありません。修理計画を立てる際は、年数が被るものや該当しないものを整理して考えるのがポイントです。

オフィスビルの大規模修繕工事の費用

当たり前ですが、オフィスビルの修繕にかかる費用は持ち主であるオーナーが負担します。修繕工事の計画を立てる際には、この修繕にかかる費用も計算しておかなくてはなりません。
こちらも修繕周期同様、かかる費用が異なります。修繕費用の目安をまとめたのが、以下の図です。

施工内容・目的費用(万円)
ビル自体のグレードアップ約1,000
エレベーターの取り換え1基につき約1,200
空調設備約300
外壁塗装やタイル約100~1,000
屋上防水約150~1,800
照明器具約10~100
給排水ポンプ約150~300

オフィスビルの大規模修繕工事は、全体で2,000〜3,000万円もの費用が必要だといわれています。施工に向けた計画が重要なのは、これらの費用を無理なくねん出するためでもあります。

オフィスビルの大規模修繕工事に必要な修繕積立金

オフィスビルの大規模修繕工事にかかる費用は、すぐに用意できるわけではありません。スムーズに修繕計画を進めるにも、日頃から修繕に当てる積立金を用意しておきましょう。

平均修繕周期を見ると分かりますが、大体どのビルも10〜12年で修繕が必要になります。積立金を計算する際は、このスパンで修繕ができるような金額を設定しましょう。

修繕積立金を確保しておくメリット

修繕積立金を用意しておけば、ビルや設備の故障に柔軟に対応できるようになります。この効果を最大限に活かすためにも、修繕積立金によるメリットを把握しておきましょう。

劣化の進行具合に応じて適切に対処できる

ビルの劣化を放置していると、ビル本来の耐用年数よりも早い段階で建て替えが必要になる恐れがあります。
このような事態が発生しても、修繕金をきちんと確保しておけばすぐに対応できます。前倒しになる可能性も含めて中長期でそれぞれ計算しておけば、思わぬ出費を抑える効果も期待できるでしょう。

修繕積立金があれば、劣化の進行に応じた対応も落ち着いて対処できるようになります。

資産価値を向上できる

大規模修繕工事は、建物の機能や外観を回復させるためだけに行われるものではありません。ビルをグレードアップさせることで、資産価値を維持・向上する効果も得られます。
ビルの一部を貸し出す場合、当然ですが機能の高いビルの方がテナントが見つかりやすくなります。大規模修繕工事はビルの価値を保つうえで重要な要素といえるでしょう。

修繕積立金が不足する場合の対策方法

修繕積立金をしていても、不測の事態が発生した場合などには資金が足りない可能性もあります。このような場合、以下の対策が活用できます。万が一の事態に備えて、修繕積立金が不足している場合の対策も覚えておきましょう。

補助金を活用する

修繕工事の内容は一部省エネにつながることから、補助金の対象となるものもあります。費用が足りない場合は、補助金が活用できないか調べてみましょう。
補助金は国や地方自治体が実施しており、受けるには審査を通らなくてはなりません。審査基準は制度や年度ごとに異なるため、活用を検討する際はご注意ください。

融資を受ける

このほか、金融機関から融資を受ける方法もあります。ビルの機能や設備を回復又は向上させられれば、自社の生産性を高めるのにもつながります。融資を受ける際、審査を有利に進められるでしょう。
とはいえ、融資を受けた場合、利息を含めた返済の義務が発生します。活用する場合はビルの安全などに関わる部分の修繕に留めた方がいいでしょう。修繕積立金でも対応できない額を借りてしまうと、返済が経営を圧迫する恐れがあります。

オフィスビルの大規模修繕工事の大まかな流れ

オフィスビルの大規模修繕工事計画を適切に立てるには、計画の重要性や資金面の知識だけでなく大まかな流れも知っておかなくてはなりません。
工事の流れを簡単に説明するので、計画を立てるときは以下の流れを参考にしてください。

1.仮設工事

まず工事では仮設工事が行われます。作業を行うための足場や、塗料の飛沫・落下物などを予防するためのメッシュシートなどの設置が主な作業内容です。
施工後には撤去するものですが、工事の品質と安全を確保するためには欠かせない作業といえます。

2.下地補修工事

下地補修工事は、壁や天井などの下地部分に発生しているひび割れや凹凸などをきれいにする工事です。大規模修繕工事は、下地の状態により工期や仕上がりが大きく変化します。施工後の状態が目に触れるわけではありませんが、ビルの機能を維持するためには欠かせない工程です。

3.タイル補修工事

ビルの外壁に使われているタイルは経年劣化します。浮きやひび割れを放置すれば、雨漏りや剥離による事故などにつながりかねません。
大規模修繕工事では、これらの事態を防ぐために外壁全面のタイルを打診や目視によりチェックし、補修します。
ビルの耐久性や防水性・安全性を高める効果が期待できるほか、外観の原状回復にもつながる工程です。

4.シーリング工事

外壁のつなぎ目やサッシなどの周りは、そのままだと隙間から雨水などが入り込んでしまいます。そのためシーリング材ですき間を埋めるのですが、このシーリング材も劣化します。定期的にシーリング材をはぎ取り、新しいものに塗り替えなくてはなりません。
シーリング工事は建物の防水性を高めるだけでなく、気密性を高める効果も期待できます。ビルの断熱性を向上させたい場合にも有効な工事です。

5.外壁の塗装工事

外壁塗装はビルの外観を美しい状態に保つだけでなく、雨水や汚れから守る効果もあります。これもまた、大規模修繕工事において欠かせない工程です。
施工の際は、下地と塗料の付着力を確認します。問題なければその上から塗料を塗り重ね、塗装の剥がれがある場合は一度取り除いてから新しい塗料を塗り直します。

6.鉄部の舗装工事

経年劣化するのは塗料だけではありません。扉や外部階段・これらの手すりなどの金属部部分も錆びによる劣化が発生します。錆びた設備は見た目が低下するだけでなく、耐久力などの安全面にも問題が発生するため、定期的な修繕が必要です。
施工内容としては、サビがある場合はヤスリなどによる除去をし、美観を保つための舗装が行われます。

7.防水工事

ビルの主な建材であるコンクリートは、耐水性に優れています。しかし、経年劣化によりひび割れなどが生じると、内部に水が入り込み構造部にダメージを与えます。これを防ぐのが、防水工事です。
防水塗装は防水効果のあるシートや塗装を使い、防水層を作る施工です。施工内容により状態や効果はそれぞれ異なります。ビルやその周辺環境に合った施工を行うのがビルの機能を維持・向上させるためのポイントです。

8.その他付随する工事

このほか、必要に応じて現状維持または新しい機能を付ける施工も行われます。代表的な施工内容だと、以下のようなものがあげられます。

  • 自動ドア化
  • オートロックの設置
  • 玄関扉やサッシの交換
  • 給配管の更新・更生
  • バリアフリー化

このほか、自社の雰囲気や時代に合わせて内装を変更することもあるでしょう。原状回復だけでなく、快適性や安全性の面でも施工できる点を探し、対応しておけば、ビルの価値低下を予防するのに役立ちます。

【まとめ】オフィスビルの大規模修繕工事はオーナーの判断で行おう

オフィスビルの大規模修繕工事は、法律などで明確な期間が決められていないためオーナーの判断で行わなくてはなりません。
修繕には莫大な費用がかかる恐れもあるため、事前に中長期の計画を立て、積立金などで対応できるよう準備しておきましょう。

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