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建設業の積算業務が回らなくなっています。ベテランの退職、採用難、2024年4月に始まった残業上限規制。「なんとか社内で回してきた」が通用しなくなるタイミングが、すでに来ています。僕はNITACO代表として建設業特化のBPOを500社以上支援してきましたが、ここ1〜2年で積算まわりの相談が明らかに増えました。今回は「積算代行」という選択肢を、コスト論だけでなく経営構造の話として整理します。
積算業務が「社内で完結できなくなる」3つの理由
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人がいない
建設技能者は現在303万人。ピーク時の約65%まで減っています。しかも55歳以上が37%、29歳以下はわずか12%。年齢構成が完全に逆ピラミッドです。
積算は図面を読む力、工種ごとの施工手順の理解、市場単価の感覚。こうしたスキルの習得に5〜10年かかります。新人を採用できたとしても、すぐには戦力になりません。
僕が見てきた500社のうち、積算を1人で回している会社は体感で6割以上。その担当者の平均年齢は50代後半です。この現実を直視する必要があります。
時間がない
2024年4月に残業上限規制が建設業にも適用されました。年720時間・月100時間未満・複数月平均80時間以内。これまで「日中は現場、夜に積算」で回していた会社は、その運用自体が法令違反になりました。
時間の総量が強制的に減った以上、同じやり方では物理的に回りません。
積算そのものが難しくなっている
労務単価は13年連続で上昇し、2024年度の全国平均は24,852円。資材価格も土木で41%、建築で37%上がっています。単価の変動が激しいぶん、積算のたびに最新データを確認する手間が増えています。
さらに2025年12月に施行された建設業法改正で、工事費内訳書への記載義務が強化されました。具体的には、法定福利費・安全衛生経費・建退共掛金の明示が求められるようになっています。これまで「一式」で済ませていた項目を個別に積み上げる必要が出てきたため、積算の工数と難易度はさらに上がっています。
積算担当者の退職が会社の経営リスクに直結するケースもあります。
従業員15名の土木会社で、唯一の積算担当が体調を崩して長期離脱しました。代わりに積算できる人間がおらず、入札を3件連続で辞退。結果、その年の受注額が2割減りました。「1人体制」のリスクが、そのまま経営リスクに直結した事例です。
積算代行の活用について
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費用相場(工種×規模別)
積算代行の費用は、工種と規模で大きく変わります。
– 木造住宅の簡易積算:1.5万円〜
– S造・RC造のゼネコン案件:3〜5.5万円
– 公共工事(土木):工事費の約0.3%(1億円規模なら約30万円)
– 専門工事(設備・電気等):1件2〜3万円〜
これを正社員と比べてみます。積算担当を1人雇うと、給与・社会保険・PC・教育研修を含めて年間500〜700万円。固定費です。代行なら月数万〜数十万円の変動費で済みます。繁忙期だけ使うことも可能です。
何を外に出し、何を社内に残すか
基本の考え方はシンプルです。「作業」を外注し、「判断」は社内に残す。
数量の拾い出しや内訳書の作成といった作業部分は代行に任せ、値入れや利益率の設定、案件ごとの戦略判断は社内で行う。この切り分けができていれば、精度もコントロールも問題ありません。
AI積算の動向
AI活用も進んでいます。H2Corporationの「AI積算」は資材拾い出しの工数を90%削減するとしており、プレシリーズAで3.1億円を調達しています。KK Generationの「積算AI」は積算時間を70%削減(同社調べ)。
ただし現時点では、AIだけで完結する段階にはありません。「AIで下処理+人がチェック・調整」が現実的な運用です。
「積算を外に出すなんて」に対する僕の考え
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500社を見てきた中で、最も多く聞いた反論を順番に取り上げます。
「外注したら社内に人が育たない」
気持ちはわかります。でも、積算作業をゼロから教える余裕がないから困っているわけです。まず代行で業務を回しながら、社内では「判断力」のある人材をじっくり育てる。このほうが現実的です。
「積算は競争力の源泉だから外に出すべきじゃない」
競争力の源泉は「値入れの判断」であって、「数量の拾い出し作業」ではありません。作業と判断を分けて考えれば、外注しても競争力は失われません。むしろ、作業に追われて判断の質が下がるほうがリスクです。
「結局チェックが必要で工数は減らない」
ゼロから積算する工数と、上がってきたものをチェックする工数はまったく違います。体感で70%は削減できます。チェックに集中できるぶん、精度も上がります。
「情報漏洩が怖い」
社員が退職して同業他社に転職するほうが、情報の流出先をコントロールできません。NDAの締結、建設業に特化した業者の選定、再委託の有無の確認。この3点を押さえれば、管理は十分可能です。
積算代行を「経営判断」として使うための3つの基準
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代行を「なんとなく便利そう」で使うのではなく、経営判断として位置づけるための基準を整理します。
基準①:積算担当が50代後半以上、または1人体制
これは今すぐ体制構築に着手すべきシグナルです。その人が抜けた瞬間に業務が止まります。
基準②:繁忙期に積算が原因で入札を見送った経験がある
見送った案件の受注可能額を計算してみてください。その金額が、代行費用の何倍になるか。答えは明らかです。
基準③:採用・育成に年単位の時間がかかる状況
固定費で人を抱えるより、変動費として外注を組み込むほうが合理的です。
ハイブリッド体制の具体例
パターンA:判断は社長・工事部長、作業は代行(小規模向け)
積算専任を置けない10〜20名規模の会社に向いています。経営者が値入れと最終判断だけ行い、拾い出し・内訳書作成は代行に任せます。
パターンB:繁忙期だけ代行、閑散期は社内(中規模向け)
社内に積算担当はいるが、繁忙期にあふれる分を代行でカバーします。年間の固定費を増やさずにキャパシティを柔軟に調整できます。
パターンC:定型案件は代行、特殊工事は社内(専門工事向け)
パターン化できる案件を代行に出し、社内の積算担当は特殊工事や高難度案件に集中します。
2024年の人手不足倒産は342件で過去最多を更新しました。積算が回らない→入札できない→受注減→経営悪化。このシナリオは十分あり得ます。
ある事例では、年商3億の設備工事会社がパターンBを導入しました。繁忙期に月5〜6件の積算を代行に出すことで、入札辞退がゼロになりました。年間の代行費用は約100万円。辞退していた案件の受注額を考えれば、投資対効果は明らかでした。
まとめ
– 積算業務は「人・時間・難易度」の三重苦で、社内完結が限界に近づいている
– 代行の活用は「作業を外注し、判断を社内に残す」切り分けがポイント
– 1人体制・高齢化・入札辞退の経験があるなら、経営判断として今すぐ動くべき
積算まわりの体制を見直したい方は、まずはご相談ください。建設業に特化したBPOとして、御社の状況に合った体制づくりをお手伝いします。
→ ツクノビBPO


