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何が起きたか
2026年2月28日のイラン攻撃に伴うホルムズ海峡の実質的な封鎖により、日本の原油輸入約90%を支えるルートが寸断されました。これに伴い、建築資材の基礎原料であるナフサ(粗製ガソリン)の供給が激減し、建築現場は戦後最大級の「供給危機」に直面しています。単なる値上げではなく、資材そのものが手に入らない状態が現実となっています。
4月13日にはTOTO、その後LIXILも相次いでユニットバス受注の停止を発表しました。浴室リフォーム市場の約80%を占める二大メーカーの同時受注停止は、業界史上初の事態です。政府の緊急対応により4月下旬に受注は再開されましたが、5月からは建材価格の連鎖値上げが本格化しています。
ナフサ価格は4月比で1.9倍の125,103円/kLという歴史的高値を記録し、これが石油化学製品全般に波及しています。断熱材、ルーフィング、塗料、塩ビ管など、現代建築に欠かせない主要資材が軒並み値上げまたは供給制限の対象となっており、工事計画の大幅な変更を余儀なくされている現場が増加しています。
現場への影響
- 大工・木造リフォーム業者: 断熱材の40〜50%値上げにより、一棟当たりの原価が15~30万円増加。高性能断熱材(ネオマフォーム等)の受注制限が続いており、従来の仕様での工事着工が困難。基礎補強に必要な生コンクリート供給も危機的状況で、耐震リフォーム工事の着工不可という事態も発生しています。
- 塗装業者: 日本ペイント等による塗料・シンナーの75%値上げが継続中であり、外壁塗装(100㎡)の工事費全体で約38万円の増額を余儀なくされています。「お金を出しても塗料が買えない」という供給制限の状況下で、工事の着工延期や中断が全国で相次いでいます。
- 内装業者: 屋根防水工事で使用するアスファルト系ルーフィング材が40~50%値上げ(5月1日より実施済み)となり、屋根カバー工法(80㎡)で約40万円の価格差が2カ月で発生。塩ビ管・配管材料も12~20%値上げされており、給排水更新工事の費用が急騰しています。
- 全工種共通: 資材納期の回答遅延が常態化。確定見積を取得できない状況が続いており、施主との契約交渉が難航。金利上昇(日銀3月のマイナス金利解除に伴い0.5%程度上昇)による返済額増加も叠なり、施主の資金計画が白紙化するケースが増えています。
今後やること
- 早期発注と資材確保の確約 契約後すぐに、断熱材・配管材などの主要資材をメーカーに直接確保するよう工務店と協議してください。供給優先順位で建築リフォームは最下位に位置付けられているため、受注時点での確保が実務的には必須です。
- 現場での納期確認を「書面化」する 口約束ではなく、各資材の納期確約を契約書または別紙で明記させること。特にナフサ由来製品(断熱材・塗料・塩ビ管)については、5月以降の供給リスクを理由に、納期遅延時の対応(工事日程の変更・代替品への切り替え)を事前に取り決めておく必要があります。
- 代替品への仕様変更を急ぎ検討する 石油系断熱材(ウレタンフォーム等)の代わりに、木質繊維系セルロースファイバーやグラスウールへの変更を検討。溶剤系塗料から水性塗料への変更も視野に入れ、供給が安定している資材への切り替えを進めます。
- 公的補助金の最大活用 「みらいエコ住宅2026(Me住宅2026)」等の制度を活用し、最大100万円の補助金で上昇したコストを相殺すること。資材高騰による増額分を補助金でカバーする戦略が重要です。
- 工事スケジュールの柔軟性を確保する 確保できた資材に合わせて、工事の順番を入れ替える覚悟を持つこと。「屋根→外壁塗装→内装」という従来の順序ではなく、資材の納期に応じた施工順序の変更が現場の実務では不可欠になっています。
この先の注目点
- ホルムズ海峡の復旧タイムライン イラン情勢の展開如何では、海峡の航行再開が遅延する可能性があります。6月以降も現在の高値が継続するか、あるいはさらに悪化するかが、建築費用の再度の上昇を招くかどうかの分岐点となります。政府の備蓄放出は4月時点で累計65日分(約4カ月分)であり、その後の補給がどの程度見込めるかが焦点です。
- 政府の供給優先順位の変更可能性 現在、リフォーム・リノベーションは供給優先順位で最下位に置かれていますが、地域の中小工務店からの政治的陳情や経済団体の声により、この順位が改変される可能性があります。優先順位が上がれば、6月以降の資材供給は多少改善する見込みがあります。
- 鋼板・鉄骨材料のさらなる値上げ 6月以降のJFE鋼板による10%以上の値上げ予定など、第二波の価格改定が予測されています。耐震補強工事の費用がさらに増加する前に、補強計画の決定を迫られる時間的余裕は限定的です。


