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今年7月から8月にかけて、国直轄の土木工事で、真夏の猛暑期間中に現場施工を休止する動きが全国に広がる見通しです。国土交通省が2025年12月23日に公表した「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」に基づき、真夏の現場施工回避を認める「夏季休工」の試行工事が、これまで先行していた関東地方整備局に加え、九州地方整備局などにも広がるためです。九州地整は2026年3月5日に変更点を公表し、4月公告案件から試行適用を始めています。
注意しておきたいのは、この制度がまだ「試行」段階にあるという点です。国交省は今年度の運用状況を踏まえ、追加費用の積算方法や発注時の明示方法について、引き続き検討するとしています。つまり、夏季休工は制度として完成したものではなく、運用を固めながら現場に適用される段階にあります。
休止期間中の現場管理費補正は、真夏日日数に応じて令和元年度から措置されています。さらに令和7年度からは、共通仮設費の現場環境改善費率分の50%を上限に、必要な費用を積み上げ計上できる運用も始まっています。ただし、実際にどこまで実額が確保されるかは、今年の試行結果に左右される面があります。
先行して取り組んできた関東地方整備局の宇都宮国道事務所では、舗装工事の特記仕様書に「猛暑期間(7〜8月)の現場施工回避について監督職員と協議できる」旨が明記されました。2025年7月時点で6件に適用され、受注者からは「社員の健康管理に寄与した」「お盆以外の時期にも休暇を取得できるようになった」といった声が寄せられています。九州整備局の初弾案件となった「令和7年度雲仙地区舗装修繕外工事」では、WBGT値28以上の猛暑日を参考に、施工者側が休工日を選ぶ方式が採られました。
問題は、現場側の備えが間に合うかどうかです。発注仕様書で工期延長の協議が認められても、売上計上が数週間から数か月ずれ込む影響は小さくありません。4月の時点で資金繰り計画を見直しても、十分な余裕を持てる企業は限られるでしょう。
特に下請企業は、元請からの依頼内容が変わる可能性が高い立場にあります。工程の前倒し、休工期間中の他現場への応援、秋以降の繁忙化など、想定外の動きを先読みしておく必要があります。
一方で、夏季休工が民間工事や地方自治体発注工事にまで広がるには、まだ時間がかかりそうです。国交省の令和6年度入契調査では、猛暑日を工期に考慮している団体が都道府県・政令市で8割を超える一方、市区町村では2割未満にとどまっています。国直轄工事から始まる今回の流れが、地方自治体や民間発注者へ波及するまでには一定のタイムラグがあるとみられます。現場としては、発注者ごとに備えを分けて考えることが求められそうです。
試行の夏は、もう目前です。備えの差が、そのまま経営体力の差となって表れる夏が始まろうとしています。
【出典1】国土交通省「『建設工事における猛暑対策サポートパッケージ』を策定しました」
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001275.html
国交省は、猛暑対策として「猛暑期間・時間の作業回避」「効率的な施工・作業環境の改善」「猛暑対策に必要な経費等の確保」「地方公共団体・民間発注者等への周知・要請、好事例の横展開」を掲げています。
【出典2】国土交通省「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」本文PDF
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001974370.pdf
PDFでは、令和8年夏に向けて取り組みを進めること、試行工事で追加費用の明示方法・積算方法を検討すること、特記仕様書で猛暑期間の現場施工回避の協議を明記する事例などが示されています。
【出典3】建設通信新聞Digital「夏季休工の試行工事実施/チャレンジ型は対象拡大/26年度総合評価/九州整備局」
https://www.kensetsunews.com/archives/1195858
九州地方整備局の2026年度総合評価方式の変更点として、夏季休工の試行工事実施などを報じています。
【出典4】日本経済新聞「国発注の土木工事に『夏休み』 国交省が仕様書明記、熱中症対策で推奨」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA221J90S5A920C2000000/

